とある御伽の法令遵守-コンプライアンス-

いずも

コント台本『桃太郎』

 今は昔、竹取のおきなといふものありけり。


 翁は山に芝刈りに、妻(配偶者のこと。法律上の婚姻関係を結んでいる者はもちろんのこと、婚姻の届出をしていないために法律上の夫婦と認められないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁の相手も含む)は川に洗濯に行きました。


 妻(配偶者のこと。法律上の婚姻関係を結んでいる者はもちろんのこと、婚姻の届出をしていないために法律上の夫婦と認められないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁の相手も含む)が川で洗濯してると、大きな桃(原産地不明。推定国産)が流れてきました。


 妻(配偶者のこと。法律上の婚姻関係を結んでいる者はもちろんのこと、婚姻の届出をしていないために法律上の夫婦と認められないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁の相手も含む)が大きな桃(原産地不明。推定国産)を担いで持って帰り(警察に届け出た後三ヶ月間その所有者が判明しなかったため、これを拾得した者がその所有権を取得する)、その桃(原産地不明。推定国産)を切ろうとすると、桃(原産地不明。推定国産)から大きな赤ん坊(一歳に満たない乳児。さらに出生後二十八日を経過しない乳児を新生児と呼ぶ)が出てきました。


「桃(原産地不明。推定国産)から生まれたから桃太郎(命名権の濫用に当たり戸籍法に違反するか審議中)という名前にしよう」


 桃太郎(出生届提出済み)はあっと言う間に大きくなり、立派な男の子になりました。



 ある日、桃太郎は老夫婦(法律上婚姻届を出した男女。事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁関係及びパートナー関係含む)に言いました。


「鬼ヶ島(伏魔殿。外務省のようなところ)に鬼(官僚のようなもの)退治に行こうと思います」


 妻(配偶者のこと。法律上の婚姻関係を結んでいる者はもちろんのこと、婚姻の届出をしていないために法律上の夫婦と認められないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁の相手も含む)は桃太郎のためにきび団子(メチレンジオキシメタンフェタミン含有)をこしらえ、桃太郎は鬼ヶ島(田中真紀子の職場)へ旅立ちました。


 道中で桃太郎は犬に出会います。

(以下犬の台詞はバウリンガル翻訳)

「桃太郎(侮辱罪)さん、お腰につけたきび団子(アンフェタミンと類似した化学構造を持つ化合物含有)一つわたしに下さいな」

 犬は桃太郎からきび団子(年俸制+出来高)をもらい家来(業務委託契約締結)になりました。


 次に桃太郎の元に猿がやってきます。

(以下猿の台詞はタイプライターを打たせシェイクスピアの戯曲を完成させると同等の確率で会話が成立したものとみなす)

「桃太郎(名誉毀損罪)さん、お腰につけたきび団子(通称MDMA)一つわたしに下さいな」

 猿は桃太郎からきび団子(完全歩合制)をもらい家来(業務委託契約締結)になりました。


 しばらくすると雉(中に人が入っています)が飛んできます。

「桃太郎(ヘイトスピーチ禁止条例案違反)さん、お腰につけたきじ団子(共食い。カニバリズム)一つわたしに下さいな」

 雉は桃太郎からきび団子(税込み302円)をもらい家来(準委任契約)になりました。



 鬼ヶ島に着くと、大きな鬼(岸部一徳)が現れました。


「ヤァヤァ桃太郎(ヨイショ)さん、遠いところからよくぞお越しいただきました」

 鬼は揉み手をしながら近づきます。


「我がオニエンタルランド(ネズミは居ない)も昨今の厳しい状況で生き延びるために敵対的買収から友好的買収へと舵を切らねばいけません。そこで我社と御社にてアライアンスを組みたく、ぜひパートナーシップを結んでもらいたく候(ラストサムライ)」

「うるさい(コンセンサスを得られず)」


 M&Aは交渉決裂、城からたくさんの鬼がやってきました(敵対的TOB)。


 桃太郎(ホワイトナイト要請)の指揮のもと、犬猿雉が鬼に襲いかかります(ジェットストリームアタック)。


 犬が鬼に噛みつき(過剰防衛)、猿が鬼を引っ掻き(下請法違反)、雉が鬼の目を潰します(業務上過失傷害罪)。


「まいった。お宝は返すから許してちょんまげ(バカ殿)」


 こうして桃太郎(セクシーコマンドー)は鬼(官僚)から金銀財宝(予算消化及び繰越利益及び過納還付金)を取り戻し、老夫婦(法律上婚姻届を出した男女。事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁関係及びパートナー関係含む)と幸せに暮らしました。



---------



「――っていうネタはどうかな」

「いや途中の(岸部一徳)辺りからおかしなことになっとるやん。明らかに力尽きとるやんけ。しかもこれがコントの台本ってお前コント見たことないんかい。フリップ芸のがまだ近いわ」


「○-1グランプリに出たら優勝できるかな?」

「どの大会の話しとるかわからん、ってどの大会でも無理やろ」


「Z-1グランプリとかないかな。Zは斬新のZ」

「骨の髄までしゃぶり尽くされとるわこんなネタ。髄のZや。そもそも最初からおかしいんやけどな。何もかもが違うわ」


「えー、そんな否定しなくたっていいじゃんかよー」

「ちゃうねん。最初から読んでみ」


「今は昔、竹取のおきなといふものありけり」

「それかぐや姫やん!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある御伽の法令遵守-コンプライアンス- いずも @tizumo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ