青の境界線

空と海との境界線が同じ色の場所に立ったのは、はじめてだった。


観光地のビーチはそこそこ混んでいた。

カナヅチのサキは、波打際でチャプチャプやるとすぐに砂浜に戻って文庫本を開き、私は沖と砂浜との往復を繰り替えしていた時だった。


「その映画、観たよ」


まるでそうするのが当たり前であるかのように、彼は私たちのテリトリーにごく自然に入ってきた。アイボリーのサーフボードを脇に抱えながら。


それというのは、サキが読んでいる文庫本のことだ。『時計じかけのオレンジ』。キューブリックの映画のやつだ。

彼は映画の内容がクレイジーだとか、ひとしきり感想を述べた後、どこから来たんだとか聞きながら、ちゃっかり隣に腰を下ろした。


最初は警戒した私たち。でも、つたないながらも会話を交わすうちに、旅先で知り合いができるのも悪くないかもと思い始めていた。

何より彼は、とてもカッコよかった。


サーフィンを教えてあげると彼に言われたが、サキは泳げないので私が教えて貰うことになった。

彼は私の手首を掴むと、目の前の透明な海に駆け出して行った。

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