思い出作り

「学生時代のに海外旅行に行こう」。

サキとそういう話になったのは、大学二年の夏だった。


まるでご褒美のように与えられた二ヶ月間の夏休み。

このモラトリアムはもう戻って来ない。

二人ともバイトに明け暮れてばかりいたから、多少の軍資金はある。


さて、行き先はどうしよう?


ハワイがいい。


そう提案した私に、サキは案の定反対した。

だから私は反論した。

「ベタすぎてこれから先も案外、行かないかもよ」。

青い海に青い空。

完璧に透き通った海でこの身を揺蕩たゆたえてみたい。そう思った。


サキは年上のバンドマンと別れてしまった後だったし、私はいつも片思いばかりでその歳になっても、まともな相手と付き合ったことがなかった。

高校で初体験という服をあっさり脱ぎ捨てる周囲を尻目に、もういい加減、その重たい服を捨ててしまいたかった。

かと言って、その辺の適当な男で……という勇気は自分にはない。

そんな悶々とした想いが、奥深く眠っていた。

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