第9話 九話

 

 夕食をともにすることになった、等々力守くんは、人ではありません。

 詳しく説明してくれましたが、私の理解を超えたところは、途中から聞いているふりの相槌で、誤魔化しました。

 別の星にお住まいの等々力くんは、地球にはバカンスで滞在中。時々、小遣い稼ぎでハンターみたいなことをしているそうです。掃除屋さんにお友達がいて、今回もそのお友達の依頼を受けて、店長に化けた地球外生命体をやっつけにバイトとして潜入。

 さっさと終わらせるつもりだったが、働くのに興味が湧いたり、地球人とコミュニケーション取るのも楽しくなっちゃって、気づいたら、ほとんど食われてしまっていた、と。


 何やってんだよ。

 ペロッと舌を出して許されるのは、女性社員の峰崎さんだけだからな。

 そんな峰崎さんも、もうコピーなのよねぇ。

 地球の皆さんには迷惑がかからないように、生活している地球外生命体は多数点在していて、実は……の続きはまた聞き流し、私が知っていていいのか?問題に対しては、

「せっかく仲良くなったのに、忘れられたら寂しい~」、「うさぎは寂しいと死んじゃうだから~」と小悪魔的な愛嬌で誑かし、関係者全員を黙らせたらしい。

 そもそも寂しくても死なないし、君はうさぎでもないだろうに。

 小悪魔的な癒し系は宇宙共通なのか。

 いや、そんなんでOKなはずないだろう、宇宙の皆さんよ。

 まあ、私一人くらい、どうとでもなると思われたのかもしれない。

(仲良しになった覚えはないよ~)

 新人研修で懐かれていたとは、ねぇ。

「智草先輩、聞いてます?」

「はいはい、聞いてますよー」

 聞くだけなら、いくらでも。

 私の脳は面倒事は処理せず、消去しますから。

 はい、ほとんど覚えてません、覚える気もありません。

「もう、先輩に何かあったら、僕の責任問題になるんですからね~、ちゃんとわかりましたか?」

 また、あざとく、ぷくっと頬を膨らませた。

「だったら記憶を、ふぐっ」

 両手で私の頬を挟んで、グッと顔を近づけてくる。

 瞳の奥を覗くように、真正面から見据えられ、

 そして、唇が近づいて、

「このことは、二人だけの秘密ね、誰にも言っちゃ駄目だよ」

 どこで覚えたのか、甘く甘く囁かれた。


(おっふぅ)

 熱っ、なんか熱っ。

 これが、小悪魔的な愛嬌の魅了か。

 半端ないな。



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