◆ 15・同志なので共闘できるって、多分 ◆


「アーラ、セイジョと手を組む事にしたぜ!」


 天使を本来いるべき天界に戻す為、一つ目の関門たる目的の喪失に着手する。


「おお!!!! 良かった! ならば私との戦闘はなしで、解放されたという事だよね?!」


 誰よりも嬉し気に声をあげるサー・ランドール。どれだけ戦いたくなかったのか、ルーファは視線をドミティアに向ける。事前交渉の甲斐あって、彼女は無言だ。

 やがて、仕方なしとばかりにわずかに頷く。


「良かったよ! 私の家は女系家族でねっ、姉妹が多く多くて、おまけにどれもこれも性格が可笑しくて暴力的で……逃げるように神学校に入った口でねっ。すっかり女性恐怖症だったから、女の子と戦うこと自体がトラウマだったりで、いや本当助かります!」


 知りたくもないプチ情報に、ますますルーファは重いため息をつきそうになる。


「十三体の魔王討伐っつー同じ目的で手を組んだんだよ。なんならサーも一緒にやるか?」


 形ばかりの声かけをすれば、相手は降参するように両手をあげる。


「勘弁して。女の子のいるパーティは御免ごめんだよ。文句は我が家の姉にどうぞ」


 アーラは小首を傾げた。何度も見た彼女の戸惑いの様子に、ホッとする。やはり天使には人間の細かい感情は分からないのだ。


「カエル? マオウ?」


 片言のように紡ぐ言葉はルーファの心の声の物も混ざっている。



 アーラは人間の言葉、あんまり分からないんだよな。大丈夫だぜっ、人界の心配はせず帰ってくれてOKなんだ! 俺様、必ず会いに行くし!! 今はちょっと離れるけど、どんな手を使っても……。



 彼女の視線はランドールに向き、それからドミティアを捉える。その青い瞳は何かを見据えるようだ。


「アーラ、その、ありがとな。お陰で仲間ができたぜ」


 ドミティアの発言を思い起こし、二人の間に割って入る。ルーファにはドミティアの心の声は分からないが、言動から天使に対するイメージが良くないと気づいていた。


「私、フォ・リビィズメノ・ス?」

「ん? アーラ、どういう意味だ?」


 彼女は悲しそうに顔を伏せる。



 え? なんだ、どういう意味だったんだ? つか、セイジョ女、何考えた?!



 他人の心まではいじれない。仮にドミティアが天使を罵倒ばとうしていようとも止める手段は彼女自身にもないだろう。


「ルフス、ア・フィニッスィアするまで、おまもりする」

「いやいや、おまもりがなくても……」


 言葉は途中で途切れる。

 彼女の後ろに黒い霧がある。彼女の名を呼ぶより早く、ランドールの声が響く。


「〈 フォス光よバゥラ球と成せ・ディアフォルティーオ! 〉」


 彼の手に生まれた光が周囲を燦々さんさんと照らす。

 浄化の光が効力を発揮する対象は闇のみだ。だがその霧はドロリと形を変え、地面に広がる黒い水となる。

 駆け込み、アーラに手を伸ばすが一歩早く――黒い水がアーラの足に巻き付いた。


「アーラ……っ!」


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