◆ 7・天使の能力が未知数すぎた! ◆
町の入口には身分証を提示する場所がある。
身分証に当たる物は通常三種類あり、そのうちの一つをルーファは提示した。
ネックレスだ。特殊な魔法磁気を孕んだプレートは、人材派遣的な意味合いを持つ冒険者組合に登録すると貰える物である。
アーラには身分証がない為、モンスター事故に巻き込まれた被害者を保護という名目を使った。
これも組合で上位であるBランクからの特典である。
犯罪のケースもままあれど、幸いなことはルーファにとってこの町は顔馴染みが多いことで、請ける仕事も五度目となっていた。
入口で審査する方も「また厄介事を拾ってきたのか」などと言いながら快く通してくれた。
お
「アーラ、さっき言ってた『てーらす』な、いつごろ出るかわかるか?」
町に入るまでの間、ルーファは聞き取り調査を敢行している。
彼女の説明によれば、ティラスはカタールシェであり、キレイにする存在だという。その存在の見た目や行動を聞けばすぐに思い当たった。
推測するならばモンスターだ。
それは『巨大』『白く』『赤く』『キレイに』『平らかに』『平坦に』『ゼロにする』とのことだ。
「たぶん、すぐかな? 時間は分からないけど、すぐと思う」
天使の予言だ。それは間違いなく襲い来るのだろう。町には基本モンスターや悪魔除けの結界が張られている。
それらを飛び越えてやってくるとすれば、相当な力を持っていることになる。
「ルフス……セイジョ、早く捜そ?」
「ん、あぁ。あー、セイジョってのは、どんな物だ?」
「セイジョは、生きてるけど生きてないモノで、死ぬけど死なないモノだよ」
謎かけのような言葉の
「めちゃくちゃ変わったモノってことだな!」
「うん。分かってくれたの、すごい。……兄さんにも会って欲しい! いつも兄さんは私たちのコトはヒトには分からないって言うから」
彼女は悲し気に目を伏せた。
会おうじゃねぇか! 挨拶は大事だしな?! そうだよな、天使に挨拶ってどうやるんだ?
そして彼女は指さす。
町から遠く
「あの山の向こう、セイジョのシ・マディ」
「アーラは、セイジョが欲しいんだな?」
おそらく彼女の示す場所にセイジョはあるのだ。しかし彼女は首を振る。
「ユーシャにいるの。ルフスに」
「え、俺様?」
「セイジョはルフスを強くする。デラ・スリーティオーティ・ナ」
天使語は分からないが、ルーファにも譲れないことはある。
「いぁ……俺様、鍛錬の師匠とかならまだしも、なんかの力貰って底上げってのはちょっと……。うん、ちょっと無理かな……」
愛する未来の嫁だ。なんでも願いは叶えてやりたいが、そこを了承するわけにはいかない。
彼女は驚いたように目をパチリパチリとして、頷いた。
「そうだね、ユーシャはそういうヒトだったかも」
不思議な言葉を
「じゃあ、私がセイジョ見つかるまでセイジョする。えーっと、オマモリ!」
とてもいい響きだが、ルーファは惑わされなかった。
冷静に問いかける。
「セイジョ発見したら、アーラはおまもり卒業なのか?」
「うん、帰る!」
彼女の
つまり、セイジョ発見はアーラとサヨナラって意味だな、これ、取れる手二つだな。まずセイジョのあると思われる範囲を
さて、どっちがいいか。
彼女は眉を下げ、困ったような顔をしてルフスの手を引く。
「ん? どうした、アーラ」
「ルフス、あのね」
よほど言いにくいことなのか、何度も視線を
やがて彼女は意を決したように――。
「心、見えるの」
と、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます