第36話 隠し子、野獣呼ばわりされる
怒涛の六日間だった……。
シルフィスを初めとして、シルスーン、ロミティエ、エリスティング、リリアーシュと続き、今ベットで共に朝を迎えるメルリッツアが最後になる。
掛布から見える寝顔と白い肩がとても綺麗で何時まで眺めていても飽きない。
一応、俺と出会った順での初夜でした。
出会ってからの時間が一番短かったメルリッツアだったが、とっとと婚約者と肉体関係を持て!とジェニファー達に言われた日から、昼間は極力メルリッツアとの親睦を深めることに注力した。
その甲斐もあってか、昨夜はぎこちないながらも上手く初夜を迎えることができました。
ただ、ほんのちょっと? いや、ちょっと? いやいや、かなり? いやいやいや、凄く? 物凄く? 遣り過ぎたかもしれない……。
いくら可愛くて綺麗な裸体と恥じらうその表情に、うわぁ~となったからと言って、初めて異性と肌を重ねる彼女達に、これでもまだ可愛がり足りないとばかりにやってしまいました。
はい、他の五人は次の日の夕方まで目を覚ますことなく、ぐっすりお眠りになっていたので、メルリッツアも今日の夕方ぐらいまでお眠りになることだろう。
メルリッツアを起こさないようにそっとベットを抜け出し、カーテンは開けずにそっと寝室を後にする。
本当なら、目覚めるまで添寝して、ピロートークに花を咲かせてイチャイチャしたいんだけど、ジェニファー達にゴミを見るような目でシッシッとされては出て行かざるを得ない。
まあ、目を覚ましたら教えてくれるし、会いにも行けるから助かっている。
ジェニファー達も心得たもので、何だかんだ理由を付けて婚約者達を着替えさせないので、一人顔を真っ赤にして恥じらって、掛布を胸の高さまで持ち上げて前を隠しているが、後ろは綺麗に見えてしまっている姿に益々愛おしさが増すというものだ。
さて、身なりを整え、朝食を取るため食堂に行くとすでにシルフィス達が席について、食事を始めるところだった。
しかし、先程まで和やかに会話していたのに、俺が食堂に姿を現した瞬間、会話が途切れ、みんな顔を赤くして俯かせてしまう。
六日前に夜を共にしたシルフィスでさえ、そういった反応なものだから、一昨日に夜を共にしたリリアーシュなんて、ボフンッと音が聞こえてきそうなほどに顔を真っ赤に染めてしまっていて、下手をすると倒れてしまうんじゃないかと心配になる。
「みんな、おはよう」
と声を掛けるが、みんなからは「お、おはようございます」とか細い声でかえされるのみ。
う~ん、一緒に朝食取らない方が良くないか?と悩んでいたら、ジェニファーが食堂に入ってくるなり爆弾を落としてきた。
「もう、何を恥ずかしがってるんですか! これから先もっと恥ずかしい事するんですから、何時までも新婚ホヤホヤの村娘みたいに恥ずかしがってないでもっと堂々としててください」
「「「「「え!?」」」」」
ジェニファーさんや、なんという爆弾を落すんですか!?
「メルリッツア姫にはあとでお話を通しておきますが、エル君という野獣を夜一人でお相手にすることが、どんなに危険なことか、姫様方もご理解いただけたと思います。」
ジェニファーの言葉に、うんうんと頷くシルフィス達。
そんなに激しくしたつもりは、俺にはないんだけどなぁと思っていると、ジェニファーが此方を睨んでいる。
「エル君のは激しくはないけど、愛し方は女性にとっては嬉しい反面きついの! お願いだから自覚を持ってね」
「俺って、そんな重いかな?」
「物理的な重さや、愛情の重さじゃないからね! わざと言ってない?」
「いや、だって綺麗だし可愛いし、もっともっと自分の手で感じさせたいと思うのはいけないことかな?」
ジェニファーの発言に対して俺が言い返していると、部屋にいた女性陣全員の顔が赤から真っ赤に、顔だけでなく全身まで染まっていく。
もちろん、ジェニファーも例外じゃなく真っ赤に染まっている。
「 あ、愛してくれるのは嬉しいんだけど、程度を弁えてくださいと言ってるんです。 大体、エル君が私やエリス、エミリ、マリア、ミーシャに手を出していた事を知ったとき、最初はみんな怒りを覚えましたよ、なんで私一人じゃないのかって。 でも、その、恥を忍んで夜の事を相談した時は5人で青ざめましたよ。 このままだとエル君に殺されちゃうんじゃないかって」
「ええ!? そこまで思ってたの? ああ、だからか、途中から必ず二人以上で夜を共にしようとしだしたのは……。 俺としては一人一人大切に愛したかったし、可愛がりたかったんだけどね」
「私達だって本当はそうしたかったんです! でも、そうなると体が持ちませんでしたから……。 ごほん、これでお分かりのように、今後は姫様達の体のことを考えて、姫様達全員で伽を務めていただきますのでご了承くださいね」
「ジェニー、それで本心は?」
俺が意地悪な質問を返すと、ジェニファーはにっこり笑みを浮かべながら答えた。
「早く姫様達がご懐妊あそばされれば、夜は私達やお姉様達でエル君を独占できますので!」
これなんだから、しっかりしてるよ。
因みに、この発言を聞いたシルフィス達は頬を膨らませて不平たらたらだった。
「やっと手を出したか……」
「はい、ジェニファー・コーラル子爵令嬢達がエルフリーデン殿下を焚き付け、婚約者達も納得させたようです」
「これで一つクリアですか……」
「あとはディーデッツ将軍旗下の軍勢が上手く帝国を脱出してきてくれれば、帝国領への進出の準備が整う」
「三カ国合計で約12万の軍勢ですか、いささか数に不安が残りますが」
「リーブシュタット連合軍とルクツバーレフ諸侯軍の兵力は、正規軍と私兵を合わせて、約50万ですからな」
「だからこそ、先に帝都を抑える必要がある。 皇帝陛下を助けることができれば帝都防衛に当たっている5万の軍がいる。 皇帝陛下がお命じになれば指揮下に加えることも可能だ」
「狼藉者どもを殲滅するとともに帝国全土を掌握し、ヨークメルシャー皇帝陛下とリーブシュタット公爵家とルクツバーレフ侯爵家に嫁がれたメルリッツア第三皇女の姉君達を救出することができれば、最良じゃろ。 最悪でもヨークメルシャー皇帝陛下を助け出せれば良い」
「リーブシュタット連合軍とルクツバーレフ諸侯軍の件でご報告したいことが一つ。 五日前の情報になりますが、リーブシュタット連合軍とルクツバーレフ諸侯軍がメレンテス平野で大規模な衝突を起こしたとの報告が上がっております」
「大規模とは?」
「両軍ほぼ全軍に当たる兵力での衝突だそうです。 最新情報では、決着はまだ着いていないとのこと」
「ぶつかり合いの原因は、兵糧かの?」
「流石に50万人を食べさせるだけでも負担は大きいですからね」
「50万人の兵に一日最低3食として、一日150万食、十日で1500万食……。 今の帝国の食糧生産高と軍の備蓄では到底足りまい」
「だから周辺国の商人どもが、高く食料を売りつけておる」
「金蔵も底をつき始めるか……」
「それから、どうやら両軍ともに一部の兵に薬が使われているようです。 あと、これは未確認なのですが、『胡蝶』が戦場に投入されているようです」
「後先の事を考えておらんな。 正しく死兵であり、死戦じゃな」
ラングマール帝国・ルークセイン王国国境線地帯。
前回、ラングマール帝国軍とルークセイン王国軍が軍事衝突した地域であるのだが、帝国で内乱が発生してからはルークセイン王国軍はラングマール帝国からの亡命者や避難民の受け入れ作業、国境線防衛等のため駐留兵力を大幅に増強していた。
その数およそ6万。
ルークセイン王国の正規軍の三分の一に相当する兵力であるが、避難民たちへの炊き出しや医療、治安維持、糧食、衣料品などの輸送などの業務に追われ人的余裕は失われていた。
兵力の増強は少しずつではあるが行われている、しかし人手不足を解消するまでには至っていない。
その司令部に帝国方面に偵察に出ていた一隊から驚くべき情報がもたらされた。
少なくとも8万を超える避難民を抱えた帝国軍3万が国境線を超えようとしていると……。
今でさえ人手不足で四苦八苦しているのに、そこにさらに8万を超える避難民と三万の帝国軍。
もし帝国軍に攻撃の意志があるならば、抑えきれるものではない。
だが、司令部は動員できるだけの兵力を持って守死する構えを取るとともに王城に救援要請の早馬を出すのであった。
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