第25話 隠し子、監視される②

 取り敢えず、俺を縛っていた縄をほどいてもらう。

 全くひどい目にあった。

 両手首に麻縄の後が付きましたよ。

 シルフィスめ、ちゃんと事前処理しないで、購入してきたままの麻縄で縛ったな。

 事前処理した麻縄と事前処理されてない麻縄とどちらが痛くて跡が付くか、実地で教えてやろうかしら。

 麻縄で縛られて一晩よ。

 しかも、三人娘が寝室に入ってこないように監視すると言いながら、4人で仲良く寝てるなんて……、眼福でした。

 縛られてなければもっと眼福だったのに……。

 さて、今、ベットには寝間着姿の美女美少女が四人座って顔を俯かせている。

 縄を解かれた俺は、さっさと着替えを済ませて四人を見下ろしていた。

 勿論、両手には麻縄を持って「わかってるよな? あられもない姿で縛り上げるぞ」的な眼光を光らせて。

 シルフィス、ロミティエ、エリスティング、リリアーシュの順に見ていくと背を丸めて俯いているために寝間着の襟から胸元が覗けてしまうため胸の発育状態が良く分かる。

 そうじゃなくて!

 「なあ、四人とも。 最近悪ふざけが過ぎるんじゃないかな。 一体どういうつもりなのか説明してもらおうか」

 少しイラただし気に質問をする

 4人はお互いに顔を見合わせて、何と答えていいか悩んでいるようだ。

 しばらく沈黙が寝室を支配するが、そのお沈黙に耐えられなくなったのか、たどたどしく話し始める。

 「実は、エルメデス正妃様からお話がありまして」

 「エル様を狙っている令嬢達が、その、よ、夜這いを」

 「で、ですから、私たちにエル様を……」

 「要はエルを監視しなさいって言われたのよ」

 うんうん、はい?

 「ねえ、普通、令嬢達から俺を守ってくれるなら、何故に俺を監視するの?」

 「そ、それは、エルが悪いのよ! あまりにも行動力があるから」

 「昼間は、私が侍女兼護衛として監視できるけど、夜は流石に、ね」

 「だから、ロミティエ達が寝室に?」

 「良くも悪くも、わ、私達のこと、女性とみていただけてないので……」

 「でも、俺、シルフィスから斬りかかれたんだけど?」

 「だって、あれは、三人が!」

 「そうだねぇ~。 流石に三人があられもない格好でベットの中にいたら、疑っちゃうか~」

 「で、でも、そうでもしないと、シルフィス姉様は絶対にエル様のベットに入ってきてくれませんし」

 「だからって、わ、わたしは貴方達がエルに手籠めにされたんだとばっかり、ほとんど何も身に付けていなかったじゃない!」

 「俺、シルフィスにロリコンって言われたぞ」

 「「「シルフィス姉様ひどいです」」」

 「幾ら年下だからって、そこまで幼くないです!」

 「大体エル様が、何時までたっても私達に手を出さないから、エルメデス正妃様がエル様には外にどなたか愛人がいるんじゃないかってご心配されて、あっ!」

 慌てて口元を抑えるエリスティング。

 それで大体の事情を推察することができたわ。

 エルメデス正妃殿下にしてみれば、4人も綺麗で可愛くて性格も良い婚約者に手を出さない俺を見て、外に愛人がいる可能性を心配したわけだ。

 昼間はシルフィスやロミティエ、エリスティング、リリアーシュがいるから王宮を抜け出すことはないが、夜はどうなのだろうと。

 ならば、4人の婚約者に俺の寝所へ、ベットの中で俺を見張れということなんだろう。

 まったく、結婚するまで手を出すな!と厳命しているくせに、手を出さなければ俺の浮気を疑うとは……信用されてない?

 まあ、二代連続で隠し子が居ましたなんて、ちょっと外聞が悪いしね。 でも、今回はそれで助かったわけだし、難しいね。

 それとも婚約者ともうちょっと恋人?婚約者?としてイチャイチャしろということなのかね?

 「ところでさ、四人ともいつの間にか王太子離宮に住んでるけど、それはどうしてなの?」

 「そ、それは、エルメデス正妃様の時やお姉様たちの時のようなことが起こらないようにということと、私達の身の安全を図るために婚約が内定してからすぐに離宮で生活するようにと言われました」

 「なるほどねぇ。 だからか、ここ数カ月で女性の近衛騎士が増えたのはそういった意味もあったわけね」

 俺としては、王太子離宮に女性の近衛騎士が増えた理由が解ったから良いんだけど、男としてはねぇ。

 王太子離宮の女性比率が高くなりすぎて困る。

 だって、やっぱり女性の近衛騎士として選ばれるだけあって、美人だし、その仕草は優雅だし、スタイル良いし、動きやすくそれでいて女性としての魅力を引き立てる隊服は目のやり場に困るんだよね。

 まあ、本当のところをいうと、女性の近衛騎士は、女性王族の警護という仕事以外に、王宮が敵もしくは賊に攻められたり、侵入されたとき、また外遊中に襲われた場合、王族の身代わりになるという役目もある。

 だから、平和な時ならばまだしも、国家間のパワーバランスが安定しない時は、決して生存率の高い仕事ではない。

 また、結婚して引退する女性近衛騎士もいるから、在籍期間も男性近衛騎士と比べて遥かに短い。

 まあ、そこが悩みの種ではあるんだけど……。

 話がずれたな。

 「で、何時まで君たちの夜の監視は続くんだい?」

 「「「「ずっとですよ?」」」」

 「えっ、うそでしょ?」

 つまり、ずっと4人が俺のベットで一緒に寝るということか……。

 頭痛いな。

 二週間後にはアルスティン公国公王ドードリアン公王とシルスーン公女が我が王国にやってくるんだけど、一波乱ありそうだなぁ。

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