第24話 隠し子、監視される

 無事、オブライエン公爵領が成立した。

 国王陛下からもシルフィスに対して公爵位が給われ、ささやかながらパーティーも開かれた。

 パーティーでのシルフィスは俺が送ったドレスに華美にならないがその美貌を引き立たせる宝石を身に付けていた。

 見慣れている俺でさえ、見惚れてしまったほどだ。

 新しいオブライエン公爵領の統治機構はまだまだ整っていないため、シルフィスがこの国に逃れてきた時、一緒にいた部下たちのうち希望する者たちをオブライエン公爵領の役職につけることにした。

 旧オブライエン王国からの移民や噂を聞きつけてオブライエン公爵領にやってきたオブライエン王国の旧家臣の生き残りたちが公爵領を盛り立ててくれるはずだ。

 でも、何故かシルフィスは侍女姿で俺の執務室にいる。

 何故だ!

 オブライエン公爵領の女主になったのに、何故に侍女姿?

 ドレスはどうしたの?

 疑問が尽きないのだが、シルフィスはニコニコ顔だ。

 これで、シルフィスも正式に俺の婚約者になったわけだ。

 やっとシルフィスの攻撃が止んだ。

 人のことを女誑しだの、手籠めにされただのと散々いわれた。

 てか、何故王都にあるオブライエン公爵邸に戻らずに皇太子離宮に住んでるの?

 そりゃあ、ロミティエやエリスティング、リリアーシュも何故かいつの間にかに離宮に住んでますけど……。

 あの子たちは、まだちょっと子供っぽいところがあるから、寝所になんて連れ込みませんよ?

 シルフィスさん、もしかして疑ってます?

 寝所には連れ込んでません。

 あ、シルフィスの眼が更に疑いの色を濃くした……。

 嘘は言ってないのに、信じてくれない。

 それも仕方ないのか?

 シルフィスとの婚約が内々に決まった時からロミティエやエリスティング、リリアーシュの行動に変化が起きた。

それは、三日前のこと。

シルフィスが朝起こしに来てくれた時のことだった。

 扉をノックする音とシルフィスの声で目が覚めると、隣にロミティエが寝ていて吃驚したのだ。

 その次の日はエリスティングが隣で寝ていて、さらに次の日はリリアーシュが隣で寝ていて、そして今朝もシルフィスが起こしに来てくれたんだけど、俺のベットの中にロミティエ、エリスティング、リリアーシュがあられもない格好で眠っていたのだ。

 それから、シルフィスが俺を疑いの目で見るようになった……。

 ロミティエやエリスティング、リリアーシュを寝所になんて連れ込んでませんてば。

 信じてくださいよ。

 どちらかといえば、朝、目を覚ますと何故か隣にロミティエやエリスティング、リリアーシュが寝てたんですってば、時々、本当に時々三人が俺と同じベットで寝てる時もありますけど、決してベットの中に連れ込んでませんから!

 だ、だから、目が笑ってない笑顔で近づかないで!

 腰の剣の柄に手を掛けないで!

 剣を上段に構えないで!

 「エルのロリコン!」

 その言葉と同時にシルフィスが俺に向かって剣を振り下ろした。

 ぎゃぁ~~~~~~~。

 昼間は酷い目にあったわ。

 そして今は夜。

 就寝前になって、シルフィスが俺の寝所にやってきた。

 しかも寝間着姿で、枕付き……。

 つ、つまり、シルフィスも俺のベットに潜り込みたいと?

 いやいや、冗談になりませんから。

 婚前交渉になっちゃったら大変なことになるからね。

 俺が我慢できませんってば、男の下半身事情を理解してくださいよ。

 そして、自分の魅力に気が付け! シルフィス。

 え? 俺がロミティエ、エリスティング、リリアーシュの三人を寝所に連れ込まないように監視するから、一緒に寝るって……。

 ま、まあベットが大きいから問題ないかもしれませんけど……。

 いや! 問題あるだろう!

 落ち着こうね、ね、シルフィスさん。

 ところで、その手に持っている麻縄は一体なんですか?

 えっと、手を出せなくするために縄で縛ってしまえばいいじゃないのって、えっ?

 ちょ、やめて、なんて縛り方してるの? え? 正妃様に教えてもらったって、だからってこんな特殊な縛り方しないで、ぎゃあああああああああ。

 次の日の朝、縛られた俺が寝ているベットには、シルフィス、ロミティエ、エリスティング、リリアーシュの四人の姿がありましたとさ……。

 全然監視してないじゃん。

 まさか、最初から全員がグルだったのか?

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