第23話 隠し子、シルフィスのために用意する

 仕事を熟し、シルフィスの意地悪を躱し、報告を待つ。

 実は、シルフィスには内緒で旧オブライエン王国領、現在の帝国領から、旧オブライエン王国の民を我が国のある領地に移住させている。

 ある領地とは、旧リッテンガルシュ公爵領だ。

 ルークセイン王国の恥とまで言われたリッテンガルシュ公爵家が亡くなってから王国直轄領となっていたが、シルフィス(本名、シルフィス・フォン・オブライエン)との婚約に際して新たにオブライエン公爵家を興すことになった。

 それならばと、帝国に虐げられている旧オブライエン王国国民も移住させてしまえと始まったのが半年前のこと。

 帝国に気付かれないように、シルフィス第一王女の存命と今はルークセイン王国にて過ごされていること、この度ルークセイン王国から爵位と領地を賜ることになったこと、領地の名がオブライエン公爵領だということ。

 シィルフィス姫様は、旧オブライエン王国に残っている民を大層心配しているなどと噂を流し、民の移住を図った。

 帝国に知られると妨害は必至。

 しかし、もともと戦争での損害で帝国も旧オブライエン王国領全域を支配下に置いているわけではない。

 むしろ、殆ど支配できていないといっても過言ではない。

 だから、夜逃げ同然で村ごとといった形で移住が行われてきた。

 その数、およそ五千人あまり。

 それがようやく終わりを迎えようとしている。

 移住が終わったら、シルフィスには一度オブライエン公爵領に行ってもらい正式に領主着任の挨拶をしてもらわないといけない。

 その上で信用し、信頼できる代官を立て、シルフィスは正式に俺の婚約者になれる。

 ただ、まあ、俺自身がオブライエン領の住人に認められるかどうかという問題もある。

 しかし、今のままだとシルフィスは俺付きの侍女兼護衛というような立場だから、婚約者という立場に立てない。

 良くて妾扱いになってしまう。

 シルフィス本人がそれでもいいと言っているが、行動が……。

 言動と行動の不一致が激しすぎる。

 仕事をしているときは、「妾でもいいんです。 女誑しの殿下に手籠めにされるんです」なんて言っているが、プライベートな時間になると「正式な婚約者になりたいです。 婚約者としてイチャイチャしたいです」と言ってくる。

 言っておくが、俺は女誑しでも、女性を手籠めにした覚えもないわ!

 ただ、気が付いたら周りに女性がいっぱいいるだけだ!

 もうこうなったらやるしかないじゃないですか!

 俺の婚約者としてふさわしい立場を作り上げて見せますとも!

 でも、俺自身が動くと駄目らしい。

 あちこちから「部下に仕事を任せるのも仕事のうちです」と言われた。

 自分で動く方が楽なんですがね……。

 報告待ちしてると、胃が痛くなってくるんですが……。

 よくもまあ、陛下や各公爵家当主なんか、部下に命じて待ってられるよなあ。

 俺には無理だよ……。

 そうか、シルフィスのオブライエン公爵家に婿入りすれば(逃げ込めば)いいんだ!

 うん、俺としては何て妙案だ。

 え!? ダ、ダメですか……。

 ロミティエから猛反対された。

 エリスティングには大泣きされた。

 リリアーシュは腕にしがみついて離れなくなった。

 そして、三人でシルフィス姉様に告げ口すると言って脅された。

 意外に強いな、この三人は。

 普段は御淑やかで、可愛いのにこういうときは凄く押しが強くなるんだよね。

 シルフィスにも、すごく懐いてるし。

 俺が仕事をしている執務室の扉がノックされた。

 いよいよオブライエン公爵家立ち上げの時が来たようだ。

 これでシルフッィスの意地悪から解放され……、ゴホン、シルフィスも正式に俺の婚約者として立場を手に入れることなる。

 「入れ」

 俺が命じると、扉が開き、オブライエン公爵家及び領地の立ち上げを命じたいた部下が入ってきたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る