第12話 隠し子、血塗られた報復に動く
亡くなったリスティング嬢とティリアーヌ嬢はルークセイン王国王立学園に在籍していた。
王国全土から王族や貴族の子供、裕福な商家その他特に優秀と認められた平民の子共が入学を許可される。
そのため王立学園は全寮制であり、全員が入寮するのが原則だ。
また、講師陣もそれぞれの分野で優れた功績を顕したものが教鞭を取ることでも知られていて、そういった面でも一目置かれる存在であった。
しかし、今回その学園で王族の男子学生2名を含む複数の男子学生が、下級貴族や平民の女子学生複数名と上級貴族の女子学生2名に対して継続的に監禁、婦女暴行を行い、その上中毒性のある薬を使用して薬物中毒になさしめた。
被害を受けた女子学生4名がその後治療の甲斐なく死亡、その他の女子学生も治療を継続的に受けているが中~重度の中毒症状に悩まされている。
王家、ランカスター公爵家、ロスマイン侯爵家、ストロガベル辺境伯家の合同調査によると、王立学園側では男性講師2名と女性事務員1名の関与が、また学生側においても各学年において複数名の男女の学生が関与していることが判明した。
特に王族の男子学生2名を唆していたとされる男爵令嬢がいたが、王族の男子学生2名と肉体関係があったというものの、王族の男子学生2名が重度の薬物中毒のためそれ以上の証言が取れなかった。
そして、ここでさらに王立学園の信用を失墜させる事態が起こる。
事情聴取を受けていた男性講師2名と女性事務員1名、学生側で同じく事情聴取を受けていた男女全員が一人残らず軟禁していたはずの学生寮から姿を消したのだ。
すぐさま捜索を開始したが、それ以降まだ発見には至っていない。
事実究明が滞るなか、唯一身柄を抑えている男爵令嬢の一件だけでも処分を降さなければならず、男爵家に対して領地没収の上、身分剥奪とするしかなかった。
以上が、王立学園で起きた事件のあらましだ。
疑問点が複数あるが、まず講師の採用は理事長に権限がある。
建前上の理事長は国王陛下であるが代理人も立てられる。
今回の理事長は、国王陛下ではなくその代理人だ。
まあ、国王陛下の代理人だから、敢えて突っ込まなかったんだろうな。
だが、俺には関係が無い。
理事長に講師2人を採用した理由と推薦状の有無を確認させもらった。
俺は思わず笑ってしまった。
これは大物中の大物だ。
ルークセイン王国には3つの公爵家が存在する。
一つはエルメデス正妃殿下の実家であるオーギュストーン公爵家、二つ目はルークセイン王国の貴族議会のトップを務めるランカスター公爵家、三つ目ははっきり言ってルークセイン王国の面汚しともいうべきリッテンガルシュ公爵家だ。
このリッテンガルシュ公爵家が何故ルークセイン王国の面汚しとまでいわれているのか。
それは、このリッテンガルシュ公爵が大の女好きで浪費家なのだ。
しかも人妻や若い結婚間近の女性が好みときている。
時には、気に入った他国の貴族や平民の妻や娘まで、身分を問わず誘拐同然で略奪する始末。
飽きれば、ボロクズのように身一つで放り出すような男だ。
その上、大食漢の大酒飲みとくれば金がいくらあっても足りない。
そんな男が推薦した講師を採用する!?
この理事長は気が触れたとしか思えん。
犯罪の裏には女と金とはよく言われているが、リッテンガルシュ公爵家の金の流れも調べてみるべきだな。
まあ、この理事長もクズ公爵様のお仲間みたいだしなと、冷えた眼で理事長を見据え、理事長室を後にする。
それからはあっという間だった。
いやぁ~、ビックリするほど証拠が出てくるわ出てくるわ。
金の流れから、やっぱり帝国が関わっていることも掴めた。
その出先機関とも思える商会も、元男爵令嬢と接触している商会も元を辿ると一つの商会に行きついた。
帝国の皇室や貴族たちとも繋がりの深いビルホウッディー商会。
王国内で帝国と繋がりがありそうで尻尾を掴ませなかった貴族どももこれで特定できた。
その過程で逃げて行方不明になっていた講師や学生共の潜伏先もわかった。
聞いて驚け、リッテンガルシュ公爵領のリッテンガルシュ公爵邸だ。
ほんと驚いたわ。
帝国側としては、全ての企みをリッテンガルシュ公爵に擦り付けて、自分たちは知らぬ存ぜぬを貫き通すつもりらしい。
ビルホウッディー商会がルークセイン王国内で活動する際は、メルサス商会とジャルハール商会という二つの商会を使っている。
国内に薬を運び込んでだのは、この二つの商会だろうから、先ずはこの二つの商会から潰しにかかるか……。。
もし薬が手に入ったのなら、今度は帝国の連中に売りつけてやるのもいいし、製造方法も手に入れられればもっと良い。
そうなれば、帝国の内側から腐らしてやれるのだから待ってろよ。
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