第11話 隠し子、血塗られた報復に動き出す
あの衝撃のお茶会から二ヵ月が経とうとしている。
あの馬車の中でシルフィスに慰められながらも「力が欲しい」と望んだ。
そこで、国王陛下や宰相、辺境伯にお願いして、王国の密偵と情報収集や分析の得意な騎士を自分の部下にと願い出た。
その手始めとして、ロミティエ嬢、エリスティング嬢、リリアーシュ嬢と頻繁に手紙のやり取りをしている。
年下の令嬢を口説くような甘い手紙ではなく、もっと殺伐とした内容の手紙だ。
まあ、たまに能力を褒めたり、その身を心配したり、プレゼントを送ったりと仲良くなるために甘やかしてみたり、デートしたりお茶会したりと努力もしてますよ。
だからか最近、何故かシルフィスには、「女誑しの面目躍如ですね」とか、「私には何かないのですか?」とか、「偶には二人でお出かけしたいですね」とか言われる。
ハイ、今度お茶しにカフェに行きましょうね。
だから、そんなうらやましげにこっちを見ないでください。
でも、令嬢達やシルフィスたちとキャッキャッウフフする前に、あの悲劇に直接的間接的に関わりながら何食わぬ顔で宮廷内を闊歩している貴族どもを一人残らず嬲り殺たいというのが先だ。
そのための情報収集が中心になってしまうのは許してほしい。
彼女達には、何だかんだと言って俺の思惑を悟られないように注意はしているけどね。
でも、もう悟られているか?
どうも、3人の令嬢が本気で怯えはじめて、お茶会でも、俺のちょっとした動きにビクビク怯えてしまってるんですよね。
こういう場合どうしたらいいんだろ?
ああ、そういえばこの間、アリスティア嬢とその護衛騎士たちを殺した奴らが解ったので文字通り嬲り殺しにした。
最初にランカスター公にアリスティア嬢襲撃事件を通報した商人とその商人に雇われた傭兵団がアリスティア襲撃事件の犯人達だった。
実況見分した資料をロミティエ嬢経由で手に入れた俺は、商人が発見した時の襲撃現場の綺麗さに違和感を覚えたのだ。
襲撃から時間が経てば経つほど、遺体は腐敗し、血の匂いに誘われた獣に食い荒らされるものだ。
だが、それが見当たらない。 まるで襲撃され殺されたばかりの状態だった。
それにその商人達が襲撃現場に通りかかる可能性だ。
殺すことが目的なら目的を果たしたら早々に現場を離れるはずなのだ。
だが、こういう言い方は、自分でも胸糞悪くなるが、アリスティア嬢を嬲ってお楽しみの最中の筈だ。
滅多に味わえない上級貴族の女性の身体、全員が満足するまで味わい尽くしたいはず。
いつ誰が通るかわからない場所で楽しむわけがない。
色々策を弄し、アリスティア嬢の馬車と護衛達を自分たちにとって都合のいい場所に誘い込んだはずだ。
王都にある公爵邸への早馬による通報、公爵配下の騎士団が現場に到着するまでの時間を考えれば、騎士団が到着する直前までアリスティアや騎士たちは生きていたことになる。
そこから揺さぶりをかければ、慌てた商人は貴族の屋敷に駆け込んだ。
これでこの件の貴族の首謀者たちが特定できた。
ランカスター公に証拠付きで報告し、殲滅に乗り出した。
そう、これは捕縛ではない。
捕まえて裁判にかけるなど、殺されたアリスティアに比べれば生ぬる過ぎる。
彼らも苦しみながら死ねばいいんだ。
ランカスター公は、俺が参加することに最初は難色を示した。
これから王子になろうという人間が、血に塗れるのはいかがなものかという意見だったが、「今度はロミティエ嬢を第二のアリスティアにするつもりか?」と冷たく問いただしたら折れた。
そして、ランカスター公爵家の騎士や密偵達が目を背けるほどに徹底的に嬲り殺しにした。
事件にかかわった商人や貴族本人から、その家族、使用人、下男下女に至るまで徹底的に……。
毎夜のように襲撃を繰り返していると、だんだん麻痺してくるんだよね。
一体いつまで正気でいられるかな、俺は……。
これでアリスティア襲撃事件の一件は片が付いた。
領地にいた連中もおいおい殺すとして、王国の7分の1の貴族が消え、他の貴族たちは震えあがって宰相に泣きついたようだが、これは粛清なんだから泣きついたところで許されると思うなよ。
まあ、それはじっくりやるとして、次はリスティング嬢とティリアーヌ嬢を苦しめて姿を消した連中とその後ろにいるであろう連中を探し出さなきゃね。
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