第7話 隠し子、令嬢達に会う①
お茶会には、シルフィスにも俺のお付きとしてお茶会に同行してもらった。
今のうちにお互い顔見知りになっていた方が、後々よいだろうという判断からだった。
「エルフリーデン様とそのお付きの方が御着きになられました」
案内役の執事に案内されて着いたのは、王都にあるランカスター公爵邸の綺麗に整えられた庭園の東屋だ。
そこには、ランカスター公爵家令嬢が他の令嬢二人と共に待っていた。
「お茶会へお招きいただき、ありがとうございます。 アリスティア嬢」
アリスティア・ランカスター嬢が席を立ち、こちらを出迎える。
「こちらこそ、急のお誘いでご迷惑かとおもったのですが」
「いえ、お気になさらずに。 それよりもアルフリード王太子の件ではご心痛お察しいたします」
「いえ、もう大丈夫ですわ」
「そうだとよろしいのですが……」
「暗い話はここまでと致しましょう」
「そうですね。 せっかくの美貌を悲しみに曇らせては勿体無いですからね」
「まあ、お口が上手ですわね」
「いえいえ、本心ですよ。 ところで、そちらの可愛らしいご令嬢方はどなたでしょう?」
「こちらは、リスティング・ロスマイン侯爵令嬢とティリアーヌ・ストロガベル辺境伯令嬢ですわ。 いつまでもお屋敷に閉じこもっていては気がめいると思いまして、本日のお茶会にお誘いいたしましたの」
そういってアリスティアは二人を俺に紹介する。
リスティング嬢とティリアーヌ嬢が、こちらを怖がるように小さく会釈した。
二人とも大人しめの令嬢なんだろうか?
その割には怯えている感がつよいな。
「そうでしたか、急なお茶会へのお誘いとはいえ、手ぶらでは何ですので王都で人気の美味しいタルトと女性でも楽しめる軽めのスパークリング・ワインを持ってきたんですよ。 もし宜しければ後で一緒に頂きませんか」
そうして、お茶会という名の顔合わせが始まる。
う~ん、何というか穏やかでゆったりとした感じでお茶会が進んでいるのだが、俺がアリスティア嬢に話しかけたり、アリスティア嬢がリスティング嬢やティリアーヌ嬢に話しかけると極普通に話しているし、話も盛り上がるのだが、俺がリスティング嬢とティリアーヌ嬢に話しかけたりすると途端に場が暗くなるというか、怯えられてしまう。
これでは、リスティング嬢やティリアーヌ嬢の人物像がわからない。
一体どうしたらいいんでしょうか?
密かにシルフィスと視線を交わすと、小さく首を横に振った。
シルフィスにもこの状態は予想外だったようだ。
ここは事情を知るアリスティア嬢に聞くべきか?
いやいや、下手すると二人の心の傷をさらに広げてしまう可能性も……。
落ち着け俺……。
あれ? なんでリスティング嬢やティリアーヌ嬢が被害者だなんて思ってるんだっけ?
瑕疵物件扱いされてるという情報から?
ここは先入観無しにやってみるしかないな。
かなりのリスクを負うことになるけど、このまま話が進んでもお互いに気まずいだけだ。
それじゃあ、やってみますか。
ため息を一つつく。
これ見よがしのため息、お茶会の場が少し凍り付く。
それはそうだろう。
せっかく招待した客人に、このお茶会はなんてつまらないのかといわせてしまったようなものだ。
リスティング嬢やティリアーヌ嬢も俺のため息の意味を理解したようだった。
招かれた席での不作法とまでは言い切れないが、お茶会の主催者の顔に泥を塗ってしまったのだ。
慌ててアリスティア嬢の顔を怯えた眼で見る。
アリスティア嬢は、焦ったかのように場を取り繕おうとしたが、その前に疑問を二人の令嬢に投げかけた。
「リスティング嬢、ティリアーヌ嬢、どうしてそんなに怯えておられるのですか?」
かなり不作法だとは思うが、椅子の背に体を預け足を組み、腕を組んで顎を少し上げて令嬢二人を見遣る。
目には、令嬢たちに『その態度は少し失礼ではないか』と意志をわかるように宿らせる。
一種の威圧だ。
リスティング嬢、ティリアーヌ嬢は、それぞれがグリースト第二王子とウィルベルガ第三王子の婚約者だったのだ。
自分たちの行動が相手にとってどのような意味を持つかなど良く分かっているはずなのだ。
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