第6話 隠し子、確認する

 俺からの先制パンチは、国王陛下たちにそれなりのダメージを与えた。

 あっ、すいません。

 シルフィス姫様の一撃であって、私のではありませんでした。

 だから、横目で睨まないで怖いよ。

 俺が王子になるのを了承する前に、いくつか確認したいことがる。

 まず、私が国王陛下の隠し子であることを何方から聞いたのか

 二つ目、公国にどのように説明をして、我らを迎えに来たのか

 三つ目、母をどうするのか、

 四つ目、私が王子になるとしてタイムスケジュールはどうなっているのか

 五つ目、有力貴族の後ろ盾は得られるのか?

 大きいものでこの五つだな、よし。

 さあ、話し合いを始めようじゃないか。

 ~5時間後~

「ふぅ~、今日のところはここまでにいたしましょう。 エルフリーデン殿が優秀なお陰で我々も気が付いていなかった問題点も洗い出せましたしね」

「ふむ、そうだな。 私の方も貴族議会の方で根回しをしておく」

「わしは軍部の方だな。 国境付近の警戒を密にするよう命令を出しておく」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          宰相であるロスマイン侯爵の一言で今日の会議はお開きになった。

 ランカスター公爵が議会に、ストロガベル辺境伯が軍部にと今後のことを指示する旨を宰相に告げて、会議室を出て行った。

 国王夫妻? とっくに退出したよ。

 何でも夫婦でお話合いしないといけないことがあるらしい。(合掌)

「ふぅ~、終わった~」

「終わりましたね」

 俺とシルフィスもようやくこの長い会議から解放された。

「部屋に戻って、お茶にでもしようか、シルフィス姫様」

「今まで通り、シルフィスで良い。 あまり他人行儀にしてくれるな、エル」

 一応シルフィスは、身分を隠す意味で俺の侍女扱いのまま俺の傍にいることとなった。

 ただ、シルフィスに手を出すなと釘を刺された。

 俺って、そんなに信用無いのか?

 部屋に戻って、お茶と軽食&お菓子を用意して、シルフィスと二人で先ほど会議で知ったことを反芻しながら語り合った。

 国王陛下が隠し子の存在を知ったのは、正妃様からだった。

 情報の出どころは……、うちの母上だった。

 その話を聞いた瞬間、一体何してんの母上はと俺は額を抑えたよ。

 せっかく周りが正妃を裏切って国王陛下と関係を持ち子供を妊娠して、正妃様に合わせる顔がないとか気に病んでいたから、気を使って隠蔽工作をしたというのに肝心の隠蔽される側が盛大にばらしてるなんて、これはお説教ものだ。

 後で、母上の実家に手紙を送って叱ってもらおう。

 ああ、母上は実家に戻ってもらって、国王陛下の側妃となることが決まった。

 その為に貴族議会の方で根回しが必要になるのでランカスター公爵が議会に裏工作を掛けることとなった。

 正妃様、ぜひとも側妃になるうちの母上に嫌味の一つ二つ言ってくださいね。

 どうせ本人も楽しんだのでしょうから、いい気味です。(←偏見です)

 そして、俺の後ろ盾には予想通り宰相であるロスマイン侯爵。貴族議会筆頭のランカスター公爵、軍のトップであるストロガベル辺境伯がなるとのこと。

 後日、お三方のお嬢様方との顔合わせという名のお見合いを行った後、婚約することになるらしい。

 まあ、そこまでは良い。

 問題は、隣国アルスティン公国の公王にどう説明したのかということなのだが、

 本当のことを説明したそうだ……。

 うん、隣国にバレた、と言うよりバラしたね、これは。

 近衛を動かした以上、下手に隠すより信義を尽くす方が良いだろうとの判断からだそうだ。

 まあ公王陛下が、「これは、娘にも教えてやらねばなるまいな、わははは」と笑っていらしたらしいから、これは一波乱ありそうだ。

 最後に俺が王子になるのは……。

 「結局、俺が王子になる時期って、殆ど決まってないじゃん。 なんなの? あのお三方の悪い笑顔は」

 「つまりは、自分の娘を口説き落とさなければ、王子にはしませんよという意思表示なのでは?」

 シルフィスにしてもロスマイン侯爵、ランカスター公爵、ストロガベル辺境伯の悪い笑顔には戸惑ったようだ。

 しかし、3人の王位継承者が1年もしないうちに死亡、廃嫡となればこれは慌てるしかないか。

 色々な段取りを決める前に取り敢えず身柄だけは確保しておこうという焦りにも似た行動だったということだろうか?

 いやいや、あの笑顔は違う。

 何か企んでるよね。

 まあ、その他にも正妃様付きメイドが失踪の上、国王陛下の子供を人知れず生む。

 それを正妃様が後ろから支援していたとか言うシナリオも必要だろうな。

 しかし、問題はどうやって国王と俺と俺の母親との関係を明らかにするかだよなぁ。

 俺が国王陛下の子供であるというのは、俺の母親であるエルフィアの証言に基くわけで、客観的証拠が少ないのだ。

 腕を組んで頭を悩ませている俺にシルフィスが一言。

「お三方のご令嬢の件、いつまで逃げてるんですか?」

「え~、シルフィスも口説かないといけないのに、他の女性のことなど考えられません」

 「そんな言葉で逃げないでください」

 「はぁ~、全く次から次へと……」

 コンコンコン

 その時、扉をノックする音が聞こえてきた。

 シルフィスが対応に向かうと、何やら手紙と言付けを受けている。

 なんだ?

 シルフィスが扉を閉め、手紙を渡してきた。

 差出人は……、ランカスター公爵家令嬢アリスティア・ランカスター。

 手紙の封をあけると、招待状が入っていた。

 う~ん、これは顔合わせという奴かな?

 確か宰相閣下からは「後日」と言われていたが、まさか今日の明日にするのか?

 

 「エルフリーデン様、言付けを賜っていおります」

 「うん、だれから?」

 「陛下から、明日はランカスター公爵家にて私的なお茶会が開かれるのでそちらに必ず参加するようにとのことです」

 「こっちの手紙と同じことが書かれてるよ。 どうやらロスマイン侯爵家令嬢リスティング・ロスマイン、ストロガベル辺境伯家令嬢ティリアーヌ・ストロガベルも参加するらしいから、顔合わせだろうね」

 私的なお茶会で一体何が語られるのかな。

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