第十三話 明日が訪れたとして。
誰かが泣いていた。
声も出さず、涙も流さず、ただ静かに悲しみに暮れていた。
何がそれほど悲しいのだろう。
不思議に思い、僕はその人に訊ねてみることにした。
「……大丈夫ですか? 何がそれほど悲しいのですか?」
その人は振り返る。さらりとした髪が少し揺れた。
――私の愛する人が、生涯苦しみ続けることが悲しいのです。
その人はそれだけを言うと、再び悲しみに暮れてしまった。
涙も流さず、声も上げず。
静かに……ただ静かに。
◇
夢を視ていたような気がする。とても気の滅入る夢だ。
夢の中では、不幸に見舞われた人がひとり、登場した。
具体的な内容は全く覚えていなかった。けれど、その人は泣いているようだった。
涙を流していた。いや、そんなことはなかったか。どちらかはもうわからない。
ただただ、彼女は泣いていたのだ。
「……彼女とは誰だろう?」
僕は誰に言うでもなく、ひとり呟いた。当然、返事などなく、僕の呟きは虚空に消えていく。
僕はベッドから這い出すと、さっとカーテンを開ける。
窓の外、空模様は相変わらず曇天で、今日は雨が降っていないことだけが幸いだった。
準備を整えて、家を出る。学校への道程は、相変わらず代わり映えのしない風景だ。
その……はずだ。なのに、どこかもの悲しく感じるのは天気のせいだろうか。
それとも、僕の中にあるとある感情のせいだろうか。
メアリは僕に助けを求めてきた。その事実に、僕は少なからず同様していた。
今まで生きてきた期間を振り返っても、助けられたことは多々あれど他人を助けたことなんてなかったかもしれないからだ。
友人や知人、母さんも……だ。
きっと、僕が覚えている以上の人に助けられてきたのだろう。そんな僕がメアリを助けるなんてこと、可能なのだろうか。
自信はない。しかし、頼られた以上は何もしないわけにはいかないだろう。
それにしても、気の滅入る話だった。
なぜなら、他人の家の間口に土足で踏み入るようなものだからだ。
いや、もっとひどいことをしなければならないかもしれない。
それこそ、誰かの心をえぐるようなことを。小早川さんあたりに嫌われるかもしれないことを。
それでも、僕は何かをしなくてはならないのだろうか。
「ならないってことはないよ」
今朝、登校するや否や、僕は真っ先に図書室へと向かった。
図書室へと向かい、すぐに神谷先輩の前に陣取る。そして、僕の心の内を吐露してしまったのだった。
神谷先輩はただ微笑んで、そう言ってくれた。
ならないってことはないよ、と。
「わたしは事情をよく知らないのだけれど、それってつまり他人の家のことだと思うんだよね」
「まあ……それはそうですね」
確かに、僕と小早川さんや風間さん、鳳さんやメアリは赤の他人だ。
関わらなければならないということはないし、彼らが抱えているであろう問題に介入し、解決しなければならないという義務もない。
そもそも、ただの中学生男子にどうこうできる問題なのか、というところも怪しい。
「……だったら、何もしないというのが正解なんでしょうか?」
僕が訊ねると、先輩は目を逸らして、天井を見上げる。
「んー……どうだろうね。それもわたしにはわからない、かなあ」
「ですよね」
「でもね。たぶんだけれど、このままだと後悔するんじゃないかなって思う」
先輩は天井を見上げたまま、小さくそう呟いた。
小さく、だけれど、はっきりと。
「後悔、ですか。……それは先輩の例の能力で視た未来ですか?」
「違うよ。なんとなくっていうか……根拠なんてないかな」
また、先輩は微笑んだ。バツの悪そうに。
僕はその先輩の言葉に、何も返すことはできなかった。
先輩は未来を視通すことができるのだという。なら、確定した未来として、僕が後悔すると言ってくれればいいのに。
そうしてくれれば、きっと僕の心も決まっていただろう。
けれど、未来を視たわけではないと言われてしまえば、話は少し変わってくる。
確定した未来ではないのなら、選択するのは誰だろう。誰でもない、僕自身だ。
僕自身が、僕自身の選択として、全てを行わなければならない。
想像するだけで、背筋が凍りそうになるほど怖かった。
僕にはおそらく、何もできないのだろう。それでも、何かをしなけばならないとするなら。
一体……どうしたらいいのか。皆目見当も付かなかった。
「……なぜメアリは僕のところに来たんだと思いますか?」
「え? そうだね……たぶん君ならなんとかしてくれるって思ったからじゃないかな」
「なんとかしてくれるって……僕とメアリはほとんど初対面みたいなものですよ」
「それでも、頼れる、頼りになるって思ってくれたんだよ」
でもね、と神谷先輩は僕の目を覗き込んでくる。
じっと。先輩の瞳はとてもきれいで、吸い込まれてしまいそうだった。
「それで真壁君が何かを背負わなくちゃならないってことはないと思う」
「はは、何を言っているんですか。僕なんかにどうこうできる問題じゃないですよ、あれは」
風間さんの自宅兼店舗である『ささはら書店』に行った際、先輩はその場にいなかった。
あの場にいれば悟るはずだ。彼らの問題に首を突っ込むことなどできないと。
だというのに、やれというのだろうか、メアリは。
「それはんといいますか……ひどい話だと思うんですよ」
僕は先輩から目をそらして、そう言ってみる。この人に何を言ったところで、意味はないけれど。
「……わたしは真壁君がどんな選択をしても、応援するよ。だから、そんな顔しないで」
そんな顔、とはどんな顔だろうか。僕は、どんな顔をして先輩とこの話をしているのだろう。
鏡なんてないので、それはわからなかった。が、なんとなく想像は付く。
とてもひどい顔に違いない。それこそ、今にも泣き出しそうな顔とか。
「大丈夫だよ。君ならきっとできるから」
先輩はそっと、僕の頬に触れる。優しく、やわらかく。
流れてもいない涙を拭うかのように、先輩の指が僕の顔の上をすべる。
ありがたいと思った。僕がどんな選択をしても応援してくれると言ってくれて。
「ありがとう……ございます」
心は決まった。
なら、後は行動に移すのみだ。
◇
大切な人と離れ離れになるというのは、とても悲しいことだと思う。
例えば、僕は現在母さんと二人暮らしだ。世間からはマザーコンプレックスだなんだと言われるかもしれないけれど、母さんがいなくなったら僕は生きてはいけないだろう。
それほどまでに、僕は母さんのことを大切に思っている。同様に、母さんも僕のことを大切に思ってくれているのだと信じている。
そしてそれは、風間さんだって同じであるはずだ。
あの写真の女性。彼女こそ風間さんが大切にしていた人なのではないだろうか。
そして、ああして写真が飾ってあるということは、あの人はもう……。
僕は軽く頭を振り、その考えを追い出した。
例えそうだとして、僕に何ができるというのだろう。
「だからってねえ……」
僕は目の前の『ささはら書店』と書かれた看板を見上げ、独り言ちる。
確かに行動しようと思った。何かしようと。
しかし、計画性のかけらもなく、いきなりこんなところに来てしまった。
僕はどうかしているのだろうか。ふむ。
「まあ、どうかしてるよね……」
「おや? 君は確か、樹里ちゃんの友達の真壁君ですか?」
僕が店の前で悩んでいると、背後から声がかけられた。
振り返ると、そこには件の人物、風間住吉さんがいた。
「あ、この前はお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ樹里ちゃんと仲良くしてもらってますしね」
仲良くして、という部分に引っかかりを覚える。やはりというかなんというか、普段の学校での小早川さんの様子をあまり知らないようだ。
「大変ですよね。樹里ちゃんってちょっとやんちゃだから」
「ちょっとやんちゃ……ええと、そうですね」
噂ではケンカとかかなり強いってことことになっているけれど。高校生の人と一対多数でやりあって勝利を収めたって聞いたことあるけれど。
それはちょっとやんちゃ……でいいのだろうか。
まあいいか。
「それで、今日はどうしました? また樹里ちゃんが何かご迷惑を?」
「いえ、そうではないんです」
反射的に、風間さんの言を否定する僕。
とはいえ、何か特別な用事があったりするわけではない。ただ無計画に来てしまっただけなのでかなり困ったことになった。
「あー……そういえばここって本屋さんだったなって」
「わざわざ来てくれたんですか? 嬉しいなあ」
風間さんは本当に嬉しそうに、目尻に皺を寄せる。その姿に、抱かなくてもいいはずの罪悪感を抱いてしまった。
だって、別に本屋さんだから来たわけじゃないんだもの。
しかし、これほど嬉しそうにされるとやはり違うと言うのも気が引ける。
ので、僕はわざわざ駅を跨いでやってきたふうを装うことにした。
「ゆっくり見ていってくださいね」
風間さんは戸口を空けると、僕を招き入れる。
僕も、それに応じて店内へと足を踏み入れた。
この前は素通りしてしまったけれど、今回はひとりで来たし、余計な用事もない。
ぶらりと店内を見て回るのもありか。そうしている間に、何かヒントを得ることができるかもしれない。
僕は風間さんのすすめに従って、立ち並ぶ書架を見て回ることにした。
所狭しと数々の本が置かれている。ジャンル分けはされているようだけれど、作者名で分けているわけではないようだ。
作者の頭文字をあいうえお順にして並べているようだった。
あの棚から順番に回ることにする。
「立ち読みも歓迎していますよ」
「あ、ありがとうございます」
なんと返したらいいかわからず、思わず小さく頭を下げた。
さてと、一体どんな本が置かれているのだろう。
ざっと見て回ると、どうやら文学や大衆作品を含め、小説が多いようだった。それに加え、ぽつりぽつりと哲学や心理学、数学などの分野が並んでいる。
哲学……確か学問として一番最初に成立したとされる分野だったように記憶している。
この世の神羅万象へ疑問を持ち、その答えを探る学問。
ここから、数学を始めとして力学や自然科学など、様々な学問が生まれていったとかなんとか。
この間N○Kの番組でやっていたような気がする。
「どうしました? 何か気になるものでもありましたか?」
じっと本棚を見ていると、突然背後から声がした。
思わずビクッと体が震えてしまった。びっくりした……。
「あっ……いえ」
僕は思考を目の前の本棚に戻す。見ていたのは、哲学系の本が並ぶ棚だった。
「あの……これ」
「ん? ああ……これですか」
僕が指差した一冊を、風間さんは手に取ってくれた。
それは数学者のルネ・デカルトの本だった。
「彼はすごい人ですよ。今日、ボクらの生活があるのは彼のおかげと言っても言い過ぎではないと思っています」
「そう、なんですか」
風間さんは少し弾んだ声で、そう言う。
あまりピンとは来なかったけれど、まあそういうものなのだろう。
「はい。彼の残した言葉【我思う。故に我あり】は有名ですね」
「……聞いたことがある気がします」
「ええ、あまりにも有名ですから、きっと聞いたことがありますよ」
風間さんは本の表紙を優しく撫でる。
その姿は、どこか寂し気だった。
まるで、ここにはいない誰かに語っている、そういう印象を受けてしまう。
「風間さんは……風間さん自身はそう思ってるんですか?」
「? どういう意味です?」
「えっと……風間さんは本当に自分がそう思えているのかなって」
デカルトの言葉【我思う。故に我あり】。その意味するところ、真意を僕は全く知らない。
もしかしたら、こういう用法は間違っているのかもしれない。
それでも、ここがひとつの分岐点になるのでないかと思った。
「【我思う。故に我あり】って」
「……どう、なのでしょうね」
僕の質問に、しかし風間さんは明確な返答をしなかった。
ただ、悲しそうに頬笑いんだだけだ。
「風間さんにもわからないんですか?」
「……わからないことだらけですよ。ボクには」
「以外です。……僕は、大人ってなんでもわかってるんだと思っていました」
「ははは、そんな訳はないですよ」
風間さんは僕の発言を軽く笑い飛ばしてしまった。
だからだろうか。こうやって笑える人だからだろうか。
「そういえば、どうして『ささはら書店』なんですか?」
「ええと、どうしてとは?」
話を変えようと、僕は訊いてみた。
「表の看板にありました。でも、風間さんの名前は違います。どうしてなのかと思って」
「ああ……いえ、大した理由がある訳ではないのですが」
風間さんはそこで言葉を切り、頭を掻いた。
視線が虚空に注がれる。何か、言葉を選んでいるかのような、そんな感じだ。
少しの間を置いて、風間さんは口を開いた。恥ずかしそうに笑いながら。
「婚約者の名前なんです。佐々原真澄という人なのですが」
「佐々原真澄さん……だから『ささはら書店』なんですか?」
「そうなんです。ボクの、最愛の人」
佐々原真澄さん。それが、あの写真の人の名前なのだろうか。
僕は更に言葉を探して、思考を巡らせる。
さて、メアリの希望を叶えるためには、どうしたらいいだろう。
なんて考えていると、人の気配がした。それも、すぐ真横に。
「……どうせそんなことだろうと思ったがね」
風間さんが声のした方へ振り返る。続けて僕も。
僕たちは声の主を視界に収めた。
意外なような、けれども当然と言えば当然なような、そんな人物。
まあ鳳さんなのだけれど。
「住吉君。君は今だ彼女のことを想っていたのかい」
鳳さんの言い草を聞きながら、僕はちらりと風間さんを見た。
一瞬だけ、彼から笑顔が消えたような気がした。
本当に一瞬だけだけ。
「真壁君……君たちはボクに何をさせたいんですか?」
「何を言ってるんだね。彼はは関係ないよ」
鳳さんはやれやれといった様子で首を振る。
関係ない、ということは最早ないのだけれど、果たして鳳さんはメアリからどこまで聞いているのだろうか。
あるいは、あの子の行動を何も知らないということすらあり得る。
「住吉君、もう十年になる。……そろそろいいんじゃないかと思うんだよ、私はね」
「ああ……もうそれほどになるのか。時の流れとは早いものだ」
「そうだとも。だから、別に忘れろとは言わないが、そろそろだね――」
「十年か。なら、君との付き合いも十年以上になるね。ボクの返答もわかっているはずだ」
鳳さんは溜息を吐いた。困ったように頭を掻く。
「君は強情だね。昔はそうではなかったと思うのだけれど?」
「そうだね。ただまあ、彼女との約束なんだ。だからこそボクは……」
「ああ、知っているさ。私は彼女とは親友だった」
「もちろん。そしてボクともよい友人でいてくれている。こんなボクと」
「そんなことを言うものじゃないよ。悲しむだろう」
ふたりが何を話しているのか、何の話をしているのか、僕にはわからなかった。
わからなかったけれど、わからないなりにわかることもある。
たぶん――というか間違いなく、ふたりは佐々原真澄さんについて話をしている。
もう既にこの世にはいない人。彼女との約束とは、きっとこの『ささはら書店』と関連したことに違いなかった。
「まあ今までも散々言ってきたことだ。今更君が考えを改めるとは思っていないよ」
「申し訳ないね。心配してくれているのに」
「申し訳ないと思うのなら、もうちょっと取り付く島をくれてもいいだろうに」
この会話の間、風間さんは終始笑顔を崩さなかった。対して鳳さんは、困った様子で天井を仰ぐ。
『……わかっているとは思うけれど、今のままではダメだからね」
「もちろん、わかっているよ。ありがとう、心配してくれて」
鳳さんは眉間に皺を寄せたまま、睨むようにして風間さんを見ていた。
いや、そのまま睨んでいた、と言ってしまって差し支えないのかもしれない。
いずれにせよ、鳳さんが風間さんに対してあまりいい感情を持っていないことは確かなようだった。
そしてその原因は、風間さんと婚約者だという佐々原真澄さんという人物にある。
ここまでのふたりのやり取りを見て、聞いて、そこまでは確信が持てた。
しかし佐々原さんは故人だ。既に亡くなっている人とはどうあっても話をすることは不可能。
だったら、やはりこれはどうにもならないことなのではないだろうか。軽々に首を突っ込んでいい事柄ではないのではないだろうか。
メアリの希望がなんであれ、赤の他人にできることはそう多くない。
つまり、僕にできることなんてありはしないのだ。
ごめんメアリ。ダメかもしれない。
僕にはどうにもならない。
「わかっているのならいいのだけれど」
とは言うものの、鳳さんは以前として不満げだった。
おそらく、納得はしていないのだろう。
「ところで、ふたりで何を話していたんだい?」
これ以上の追求は無駄だと感じたのだろうか。鳳さんが話題を変えてくる。
「ああ、これを見ていたんだよ」
「デカルトか。……私、哲学って苦手なんだよね」
「大学の時はあまり授業に出てなかったね、そういえば」
「それは……出た方がよかったんじゃないですか?」
「いいんだよ、昔のことだから」
鳳さんはからからと笑って僕の言葉を受け流す。
それはそうだろうけれど、大学生なら授業は受けるべきだと思った。
そう思うのは、僕がまだ中学生だからだろうか。
「そういう住吉君は勉強得意だったものなあ」
「得意というか、まあそれなりに好きだったけれど」
勉強が好きだと言う風間さん。僕はあまり得意な方ではないので、そのあたりはあまり共感できない部分だ。
とはいえ、勉強はしておいた方がいい。メアリと意志疎通が困難だった経験を経て、僕は改めてそう思った。
「……風間さんとその佐々原さんはそこで出会ったということなんですか?」
「あー……いや、それはね、まあいろいろあるわけだよ、少年」
鳳さんは言い淀んでいた。
まあ故人のことなんて言いづらいのが正直なところだろう。
僕としても、無神経なことを訊いてしまったのだとすぐに思った。
「すみません、変なことを言ってしまって」
「いえ、いいんですよ。……よくある話です」
「住吉君、そういう言い方はよくないと思うけれど」
よくある話……そう言って笑う風間さん。
けれど、それはあくまで言葉の上だけのことだ。
その点は僕でもわかる。風間さんの本心は別の考えを持っているはず。
でなければ、この書店を経営しようとは思わないだろう。
「まあまあ。彼には全く関係のないことだから、あまり重苦しくとらえてほしくはないんだよ」
憤る鳳さんを、風間さんがなだめている。
明らかに、この前のあの時間からふたりの関係は悪化していた。
話を聞いていると、きっと鳳さんも風間さんと同じ大学の出身だったのだろう。
佐々原さんとも親友だったとも言っているし。
「関係がないと思うのなら、余計な話をしないことだ。彼も困るだろう?」
「ふむ……それはそうだね」
風間さんは視線を鳳さんから僕へと向けた。
なんだろう、と思っていると風間さんが突然頭を下げてきた。
「申し訳ありませんでした。軽率な発言だった」
「あの、いえ……僕は別に」
思わずどぎまぎしてしまう僕。
だってねえ。二回り以上も年の離れた大人からかしこまって謝罪をされたらこうもなる。
要するに困ってしまう僕なのだった。
「まあこの話はこれくらいにしておきましょう。真壁君も、明日も学校でしょう?」
「はい……まあそうですね」
今日は日曜。つまり明日は学校に行かなければいけない。
しかし、僕はこの問題をどうにかできるのだろうか。
どうにかなるものなのだろうか。
明日が訪れたとして。
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