Season 1-5
学園と植物と僕。
“青の国”から魔法船という空を飛ぶ乗り物で、僕たちはここ“黄の国”へやって来た。お金はこれで使い切ってしまったから、またしばらくはここで依頼を受ける日々に戻りそうだ。
ここ“黄の国”は、十年ほどで急激に文明化が進んだ国らしくて、僕たちがいる北の“魔法地区”と南の“自然地区”で別れている。
すれ違う人はみんな同じような服を着て、同じような帽子を被って、手には分厚い本を持っている。あの本だけでいい筋トレになりそうだな。
「で。どーやって探すんだよ」
その辺のお店で買ったリンゴにかじりついて、脳筋魔法使いが勇者に聞いた。武闘家が「また無駄遣いですか!」とガミガミ言ってるけど、いつも通り気にもしてない。
「そういえば、名前も、どんな人かも聞いてないね。誰か知ってるといいんだけど……」
道行く人を呼び止めて聞こうにも、特徴がないんじゃどうしようも――
「あ、すみません。鈍臭くて、変わった人ってこの国にいますか?」
そんな聞き方でわかるわけが――
「あぁ、知ってるよ。たぶん、学園の植物管理館にいる人じゃないかな」
嘘でしょ伝わった。勇者は「ありがとうございます!」と頭を下げてから、誇らしげに笑ってみせた。
「よかったね。見つかりそうだ」
「んじゃ次はあれだな、そのナントカってとこの場所だな」
僧侶の隣で、物珍しそうに辺りを見ていた武闘家が、何かに気づいたようにある店の前へ走っていく。もちろん僕らも追いかける。
「観光案内ありますよ。これに載ってませんかね?」
小さな冊子を手にして、武闘家は得意気ににんまり笑う。いやいや、観光案内って……。
「へー、“世界初、絶滅したといわれた花を見つけた先生”ね」
魔法使いが冊子を取り上げて、何か思い出すように口にした。花にでも思い入れがあるのかな。脳筋のくせに。
冊子を取り上げられた武闘家は、もう一冊手に取ると、魔法使いが読んだであろう部分を目で追っていく。
「“滅んだ村に咲いていたとされる花”……」
「滅んだ村ー?」
「知らないんですか? 十年前、“奇跡の一族”という奇跡の魔法に
「僕も知ってるよ。確か、生き残りが一人だけいたんだよね」
そんなことがあったのか。
一夜にして村が無くなってしまうなんて……。一体どんな恐ろしい魔族だったんだろう。
「ヘリオスさん。ちょうど植物管理館にあるようですし、花を見てみませんか?」
武闘家が嬉しそうに手を上げる。
「はー? お前はまたそうやって寄り道を」
「僕は構わないよ? レイシィもいいかな?」
「……」
いや、頷くか首振るかしろよ! 無反応ってほんと困るんだよ。
「じゃ、決まりだね。いこっか」
「え? ゆうちゃ、はな、え!?」
ねぇ、僕はなんも言ってないけど!? ねぇ、僕の意見はー!?
僕と勇者の異聞奇譚 〜最弱の僕は魔王よりも先に勇者を倒したい〜 とかげになりたい僕 @HAYATOtm
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