風邪と花粉よりも悪いもの?

『あんたのゴミ箱、ティッシュだらけなんだけど風邪でもひいたの?』


 その言葉が耳に入ってきた時……いや。ゴミ箱という単語が聞こえた瞬間、律也の目が過去一番に冴えた。

 同時に身体の内側から体温が低下している。身体中から冷や汗が止まらない。

 意識は朦朧としている。

 これからの未来が頭を過ぎる。

 数々な症状が律也を襲う。


 落ち着け俺……落ち着け……。


「律也? おーい律也〜〜」

「はっ! なんだ夢か……」

「現実だけど……。まだ寝ぼけてるの?」


 そうかもしれない。だって俺の部屋に大量のティッシュなんてあるは

ず…………。

 ………ああ、由里香が丸めた大量のティッシュを疑問そうにチラチラ見ている。


「それで、ゴミ箱ティッシュだらけなんだけど……」

「ああ……息子が風邪気味で……」

「息子……?」


 ……気が動転して正直に言ってしまった!! 俺の馬鹿っ!


 律也は恐る恐る由里香の顔を伺う。


「何言ってるの? 律也に子供なんていないでしょ。高校2年なんだし」

「そ、そーだよなぁ……うん」


 幼馴染がめっちゃ純粋で良かったぁぁぁぁ!!!


 心の中で律也がガッツポーズしている間に由里香は鼻をスンスンと動かす。


「スンスン……ん? なんか変な臭い……。って、律也やけに身体震えてるけどやっぱり風邪?」

「い、いいいや? 全然平気だけどどどど??」


 やめて嗅がないで!! 俺のライフがゼロになるわ!!


 てか、なんてこんな大量のティッシュ……。昨日の俺何してたっけ……。


『ズビビビビビ!! あー、花粉辛っ』


 これじゃないな。  


『ズズズ……泣けるなこのギャルゲ』


 これでもない……。


『さて————』


 脳裏に何故、大量のティッシュを生産した光景が流れる。そして……さらに由里香の顔を見れなくなる。


「律也?」

「ま、まぁとにかく……風邪と花粉症とそれ以上に悪いものにティッシュを使ったかな」

「?」


 由里香が頭にハテナを浮かべているうちに律也はゴミ箱を取る。


「風邪と花粉よりも悪いものってのがよく分からないけど……辛かったら今度からはアタシが手伝ってあげるからね?」

「っ!」


 こんな時に優しく寄り添わないで。息子泣きますぞ?


 話がいい感じに切り上がって、安心した時だった。


 乱暴に律也の部屋のドアが開いた。


「お兄ちゃーんまだ〜? 遅いからお兄ちゃんの分まで食べたけど早く下に降りてきてくれない?」


 現れたのは律也の妹の立花だ。


「びっくりした……ノックぐらいしろよ! って、はぁぁぁぁ!? 俺の分まで食うなよ!」

「だってお兄ちゃん遅いんだし、それに由里香ちゃんも……ん?」


 立花は律也が持っているゴミ箱を見ると、ニヤリと笑みを浮かべ、


「お兄ちゃん、昨晩は1人でお楽しみだったの?」

「?」

「…………」


 え、は、ちょ……………妹ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??


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