【完結】幼馴染「あんたのゴミ箱ティッシュだらけなんだけど風邪でもひいたの?」

悠/陽波ゆうい

一瞬で目が覚めた

「まだ寝てんの! さっさと起きなさいよ!」

「さぶっ!?」

  

 寝ぼけた意識の中、響く大きな声。


 部屋の主である江藤律也えとうりつやは、目覚しよりも効く幼馴染の声とともに、布団を剥がされ芋虫のように丸くなった。

 

 4月に入り気温は徐々に暖かくなった。だが、こうやって寒い日もあり布団からなかなか出れない。


 今日さむっ……あー、学校めんどくさい……二度寝でもするかぁ……。


 再び眠りにつこうとする律也を見て、幼馴染の天城由里香あまきゆりかはさらに怒鳴る。


「何がさぶっ!?よ! こっちはあんたのために早くからご飯作って待ってるのに! アタシまで遅刻しちゃうじゃない!」

「……それじゃあこれからは先に学校行ってもいいよー。ご飯もいいし……」

「そ、それは……ああもうっ! それとこれは違うの! とにかく起きろ!」

「ぶっ!?」


 照れ隠しなのか起こすためになのか、由里香は律也の頬にビンタをかました。そのおかげで律也は意識が冴え、ベッドからゆっくり起きあがる。


「……ビンタはダメだろ」

「あんたがあんな事言うからでしょ」


 幼馴染なら「起きないとキスしちゃうぞ⭐︎」くらいできてほしい。


 でもうちの幼馴染は美少女である。


 髪は高めのツインテール。キリッとした瞳と整った顔立ち。なんと言っても注目するのはおっぱい。その巨乳は制服にギリギリ収まっているといった感じで、見事な乳テントを張っている。


「な、なにガン見してるのよ……」

「朝から眼福だなーと思って」


 やっぱりおっぱいっていいよな。


 律也は由里香の胸を見ながら隠す気もなく言う。


「〜〜! バカっ! 変態! 死ね!」

「ありがとうございます——ぶふっ!?」


 もう一度、頬にビンタをされた。

 律也はビンタの勢いに身を任せるままにベッドに寝転ぶ。


 いてて、ツンデレご馳走様です……。


「はぁ、全く……なんでこんなのを好きになったのか……」

 

 律也に聞こえないようにボソッと呟いた後、由里香は部屋を見渡す。


「あんた部屋くらい片付けなさいよ。ラノベだっけ? 読んでる途中でも栞とか挟んでちゃんと本棚にしまいなさいよね。ん? なんでこんなに……」


 由里香が何やら言っているが俺は再び睡魔がきていた。


 ビンタされて頬が熱い……。おかげで寒さにも慣れたし、このまま二度寝でも——


 律也が瞼を閉じようとしている時、由里香はふと、視界に入ったゴミ箱に向かう。遠目からも見えていたが、近くにいくとなおさら。


「ねぇ律也」

「ん〜?」


 由里香のやつ、諦めて先に行くのか——


「あんたのゴミ箱、ティッシュだらけなんだけど風邪でもひいたの?」


 一瞬で目が覚めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る