スキルとなった第六感は使える?使えない?

北京犬(英)

第六感

 俺は霊感がある。

見えないモノ、所謂霊が見えるってやつだ。

死んだ人から霊魂が離れるのが見えたり、事故物件に地縛霊がいるのが見えたりする。

霊感は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚に継ぐ第6の感覚、いわゆる第六感に該当する感覚だ。

インスピレーションとか直感、虫の知らせといったものの正体は霊からの囁きだったりする。

そんな人に有益な囁きとは、ご先祖様の背後霊の知識や警告なのだ。

俺はその瞬間を目にすることが出来るから、そうだと気付けたのだ。


「あなたは、異世界に召還されることになりました。

異世界基本セットの他にもう1つ特別な能力を授けることが出来ます。

何にしたいですか?」


 そんな俺が異世界召喚されてしまうとは……。

しかし、召還時の能力付与について、女神様が希望を訊いてくれるとはラノベを読んでも知らなかった。

異世界基本セット以外で何の能力が良いかと言ったら、そりゃ元の世界でも持っていた第六感=霊感だろうと思うよな。

俺の最強の能力と言っても過言では無いからな。

使い慣れているから、霊を使役して流行りの呪術なんて使える感じだろう。


 そしてやって来ました異世界。

俺の目の前には幽霊や骸骨、小鬼ゴブリンなんかが闊歩していた。


「さすが俺の特殊能力。見える、見えるぞ!」


「危ない! 下がって!」


 俺の前に異世界あるあるの4人組冒険者パーティーが現れ、俺を庇うように展開した。

どうやら俺が襲われていると認識したようだ。


「見たところ市民よね?

この魔物たちは、私たちで倒しても構わないわよね?」


「お、おう」


 魔術師のローブのような格好の冒険者の女性が俺の獲物かどうか確認して来た。

横取りはマナー違反なので確認したのだろう。

そこで俺は重大な事に気付いた。

この世界の住民は誰でもそいつらが見えていると。


「この世界では誰でも見えてるじゃんか!」


 ちょっと待て、幽霊や骸骨なんかが纏っているオーラのようなものは何だ?

それがこの世界では誰でも見える原因だろう。


「何を言っているかわからないけど、後で文句はなしよ」


 そう言うと彼女たちは魔物に攻撃し出した。


ザン!


 お、剣を持った男が、骸骨を斬ったぞ。

なんという速さ。あの纏ったオーラがそうさせているのだろうか?

さっきは出てなかったから、戦闘になったので意識して使ったということだろう。


 するとどうだろうか。

骸骨から纏っていたオーラが抜けて霧散したのだ。

それ以来、骸骨はピクリとも動かなくなった。


「我願う、聖なる力にて不浄を浄化せよ!」


 魔術師の女性が聖魔法を使ったようだ。

詠唱により女性の身体から何かが流れ出し、それが白い塊になって幽霊に飛んで行き、当たった。

すると幽霊からオーラが徐々に抜けて行き、それに伴って幽霊は消えてしまった。


「あのオーラが魔法になったり、魔物を形作って動かしている?」


「よし、全部倒したな」


 何言ってるんだ?

そこに倒れている骸骨はまだオーラを纏っているぞ?

まさか、彼らには幽霊は見えていてもオーラは見えていない?


「さて、助けたからには報酬を「危ない!」」


 俺は思わず剣士の男を突き飛ばした。


「痛てーな! 何すんだよ!」


 俺に突き飛ばされて倒れた男がキレた。

だが、その瞬間、彼の頭上を骸骨の剣が通り抜けた。

俺が突き飛ばさなければやられていただろう。


「くっ、こいつ生きていたのか!」


 そう言うと男は骸骨を滅多斬りにした。

既にオーラは抜けてただの骨になっているのに、男は過剰に斬りつけていた。


 俺はその光景を見てハッキリと確信した。

彼らは幽霊自身は見えても、オーラは見えていない。

だから完全に倒せたかどうかが見えていないんだ。

つまり俺の第六感は彼らにも見えないモノが見えるのだ。

そして、魔法の構築にこの第六感は役に立つ。

俺の進路は決まったようなものだ。


「ああ、ちくしょう。

命を助けたから礼金寄越せって言おうとしたのに、俺が命を助けられちまった」


「まあ、素材が手に入ったからよしとしましょうよ」


「そうだぞ。それにこの人強そうだぞ」


 油断大敵。

だが、俺が強うそうとはどういうことだ?


「あ、ほんとだ。

身体強化入ってるね」


 ん? そういや俺の身体をオーラが纏っているな。

これが身体強化か。

たぶん剣士の男のオーラをコピー出来たんだな。

危ないと思って動くのに、知らず知らずうちに使っていたのだろう。

もしかして、俺って第六感で見ることで、その魔法やスキルが使えてしまう?

第六感は察する能力でもある。

まさか、こんな感じで使えるとは思わなかったぞ。


 俺に報酬を要求出来なくなった冒険差パーティーは、魔物素材を集めるとそのまま帰って行った。

俺は異世界基本セットを確認し、その後を付いて街へと向かうのだった。

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