うっかり幽霊に告白して忘れていた

嬾隗

僕の人生最大の間違い

 僕は、この世のものではないものの存在を感じ取ることができる。いわゆる第六感というものを持っている、ということだ。子供の時は、よく何もない場所を指して「何かいるけど見えなーい」なんて言っていたらしい。本人以外からすると不気味で仕方ないだろう。いろいろな医者をたらいまわしにされて、最終的に両親は諦めた。もうなんか普通の子と同じように育て始めた。それだけオカルトを信じたくなかったのだろう。


 僕は感じ取るだけで、見ることはできないし、聞くこともできない。気配だけで「あ、あそこにいるなー」ぐらいはわかる程度だ。だから、小さい頃の僕はうっかりしていた。


『あ、誰かいるの? 一緒に遊ぼうよ!』


 夏休みに田舎にある祖母の家の近くでたまたま感じた気配に対して話しかけ、遊びに誘った。肯定した気配がしたため、日が暮れるまで遊んだ。はたから見れば何もない場所に話しかけ、走り回っている奇行少年だっただろう。後日、祖母の家に苦情が寄せられたとか。


 そして、ここからが僕の人生の最大の間違いだ。


『ねえ、君女の子? 大きくなったら結婚しよ!』


 ナンパ師よろしく、なんとプロポーズしたのだ。この時の僕は第六感のせいで友達がおらず、友達付き合いなど塵ほどもわかっていなかったので、つい口走ってしまったのだろう。

 さらに、幽霊もしばし考えたのち、肯定の意を伝えてきてしまった。


 この出来事を、高校二年生になった今頃、やっと思い出したのだ。




 ◆




「ねえ、結婚しよう? しないなら死のう? それで、一緒になろう?」


 僕の目の前にいるのは高校生になってからできた彼女。だがしかし、中身は別物だ。先程思い出した、僕がプロポーズした幽霊が、彼女に憑りついている。

 彼女を祖母に紹介しよう、という話になり、一緒に来たところ、しばらくして彼女の様子がおかしくなり、こうなった。こちらに敵意を向ける気配はずっと感じていたが、気に留めていなかったのが間違いだった。


「……彼女はどうなった?」

「もう食べちゃったよ」


 どうやら彼女の魂は捕食されており、僕に逃げ場はない。逃げることもできない。


「ずっと、ずっと、結婚できる年齢になるまで待ってたけど、もう限界だった。あなたが拒絶するなら、あなたも食べて一つになろうね」


 僕は、そこで意識を失った。




   完

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