(一)-4

「いえ、それは結構です」

 年配の刑事がそう言って手の平を見せた。しかし同時に「しかし」と続けてきた。

「少々お話を伺いたいのですがよろしいですか」

「え、今ですか?」

 時間が時間だし、明日も仕事があったので、今はゆっくりしたかった。

「いえ、明日、署にご足労頂くというのでどうでしょうか」

「ええ、それなら構いませんが」

 こうして私は、元彼についての事情聴取のために警察署へ足を運ぶことになった。

 玄関ドアを閉めて部屋に戻った。リビングのソファでくつろいでいる正司さんが部屋に戻ってきた私の足音を聞き、テレビの経済ニュースを見ながら「何かあったの」と聞いてきた。


(続く)

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