第六感

郷野すみれ

第六感

 俺の女友達の奈々は、昔から勘が鋭い。


「ねえ、なんか疲れてない?」


 下校途中に後ろから肩を叩かれて、前に回って顔を覗き込まれる。


「昨日徹夜したから疲れたんだ」

「なるほどねー。またゲームやってたの?」

「ああ……」


 こいつに隠し事はきかない。なぜか知らないけれど、隠していたことも言い当てられてしまい、たじたじになってしまう。そのうちこの奈々に対する気持ちもバレてしまうのではないかと恐れている。


 だからと言って、勘が鋭いのもいいことばかりではなさそうだ。特に小学生の頃は、先生が「誰がやりましたか? 怒らないので言ってください」(と言いつつ怒る)とクラスに向かって説教している時にボソッと「〇〇くん」と言って当ててしまい、煙たがられたり、嘘を見抜いてきみ悪がられたりしていた。


 小学校からほとんど持ち上がりの中学校なので、噂は回っていて苦労しているらしい。本人は抑えるようにしていると話しているし、クラスが違うのでよくわからないが。下校の時に友達と一緒に帰らず、俺に絡んでいくつかのことを楽しそうに言い当てるのもそこら辺が原因なのだろう。その時に暴いた方の奈々が責められて泣いているのを、俺が慰めていたのが懐かしい。

 一度だけ、聞いたことがある。「どうしてそんなに勘が鋭いの?」と。奈々は寂しそうに笑って「第六感」と答えただけだった。


「君さあ、私のこと好きなんだよね」


 下校途中に一緒に歩いていたら不意にそんなことを言われた。足が止まる。やっぱりこいつに感情を隠しておくことは難しい。俺は開き直っていつの間にか随分と違う身長になっていた奈々を見下ろす。


「そうだけど……」


 正直に答えると、なぜか奈々が俯いて耳まで真っ赤にしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第六感 郷野すみれ @satono_sumire

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ