殲滅

「まずは私がやるわ!」

最初は魔法使いのお姉さん攻撃するそうだ

通常の森なら火炎魔法なんてご法度ではあるが、ここ奈落の森は違う。逆に火炎魔法の使用を推奨されているぐらいだ。そもそも魔法使いの半分は火炎魔法の適性を持っている言われていて、その人達が森で火炎魔法を使えた方が、森の侵食を遅くできるし、身を守ることにも繋がるのだそう。


「上級火炎魔法・噴火ッッ!!」


地面が五箇所ボコッと隆起する

次の瞬間。地面から炎が噴き出し、至るところからオーガの悲鳴が聞こえてくる


「っっ……私はしばらく動けないから後はあんたたちで何とかしときなさい。その間に私は魔力を練るからっ…」


「おう!任せとけ」

と、盗賊のような格好をした男性メンバーが鮮やかに躍り出る。


「私も。行く」

こちらの女性は素早い動きで、木や地面。時にはオーガを蹴り、相手を翻弄しながら的確に首元を切り裂いていく


アレックスさんは魔法使いのお姉さんの近くで戦っている

僕も役に立たないと!


「ふぅーー」


――――――異常者発動


ドクンッ

あぁ、意識が落ちていくのを感じる

………だめだ。耐えられない………


――――――――――――――――――――――――


sideアレックス


「ふぅーー」


どうやら、アベル君が職業を発動させるようだ

どういう能力なんだろうか…ゴブリン300匹を1人で倒した職業だ。武器を持っていないから、魔法系だろう。300匹を1人で倒すには魔法使いが必要だ。杖は見当たらかったが……あれは補助的な意味合いが大きい。だから今回メリッサは森で邪魔になるため、大きな杖ではなく、翠色の魔石がついた棍棒のような杖を持ってきている


「くっくっくっ、ついに俺の出番か。ふん、いいとこ20%か……まだまだだな。だが、これぐらいなら全く問題ないな」


んん??アベル君の口調がさっきまでと違う?

それに、目元から首筋にかけての肌が1部至極色に変色している。どうした……ん?!?!


彼は、Aランク冒険者 しかも近接職である僕の目がギリギリ捉えられるスピードで飛び出す。踏み込んだ地面が大きく陥没している。僕が全力で踏み込んでもこうはならない


魔法系じゃなかったのか!?


推定400匹いたオーガが、ものの数分のうちに100匹を切っている


「よし、魔力練り終わっ……は?」

どうやらメリッサが魔力を練り終わったらしい

集中していたため、アベル君の変化に気が付かなかったようだ


「………もうすぐ終わるね」

「………どういうこと?」

僕はありえないスピードでオーガ400匹を殲滅し終わった彼を指さす


「彼だよ。僕は何もしてない」

「いや、あなたでもありえない殲滅速度なのにあのFランク冒険者に出来るわけないでしょう?!」

「……話は後だ。メリッサ」

「っっ……どうやらそのようね」


森の奥から高みの見物を決めていたアークオーガがぞろぞろとでてくる。戦闘特化でもないAランクパーティではせいぜい30匹が限度


だが、今は彼がいる


「はっはっは!!まだ湧いてくるのか!…ん?なんだその目は。………俺のことを舐めているのか?

はぁ………………不愉快だ」


その瞬間凄まじい威圧が森の木々を通り抜ける


50匹のアークオーガの足が一斉に止まる

自分たちに向けられたものではないと分かっていても冷や汗が止まらない。他のメンバーも同様だ


アベル君……いや、彼が1歩踏み出す

アークオーガ達の額から汗が噴き出す


――――――ズリュ


アークオーガの首が落ちる。彼の方を見ると手刀を振り切った格好になっている。瞬きはしていない……はずだ。それなのに全く見えなかった。ははっ…彼の発言通りならこれで20%か………全く、とんでもなく末恐ろしいな


「ふぅ……20%じゃぁこんなもんか。……そこのお前。この坊主に伝えておけ。「あとはてめぇの力でやってみろ」とな」


僕は静かに頷く

すると、みるみるうちに彼の紋様が消えていく


「はぁっはぁっ……なんなの……あいつ」

「さぁ、僕にもよくわからない。けど、これだけは言える。これから世界の柱は彼だってことだ」

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