異常者

奈落の森とは年々大地を侵食している、魔物が多い森のことらしい


あと数年もすれば王都に直撃するので、火属性魔法が使える魔法士が焼き払っているが、全く間に合わないため、被害を減らすために魔物の間引きを行っているのだ


「さて、着いたけど……」


ゴブリンはまだ繁殖期前なので拠点がないらしい

なので、探索系の能力がない僕は歩き回って探すしかない


「…とりあえず真っ直ぐ行こうかな」


それからしばらく真っ直ぐ歩いていくと、なにやらとてつもない臭いを放っている洞窟を発見した


「うぐっ……なんの臭いだ…?」


ん〜、どこかで嗅いだことあるような……

あ、ゴブリンだ。ゴブリンと同じ臭いがする

てことは…この先にゴブリンが…?

でもまだ繁殖期じゃないから拠点は作らないって……


……………報告ミスかな


その時

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」


「っっ……今の…女の子の声?!行かないと」


正直、僕に何ができるのだろうか

ゴブリンを1体1で倒すのがやっとなのに…


でも、僕は前とは違う。今の僕には人を助ける力がある。やれるところまでやってみよう


繁殖期前のゴブリンは苗床として人間の女性を攫うことがあるらしい

恐らく声の主はさらわれた女の子だろう


拠点を作っているということは既に繁殖期なのかもしれない。最悪の事態になる前に何とか………


僕が走っていると前方に2体のゴブリンが見えた。短剣を構える


まだ気づかれてはいない。なのでまずは1体目の首元をっっ……………やった!


さすがに気づかれたので距離をとる

また、発光石を投げつける

能力値が上がっているはずなので頭に当たったゴブリンは血を流しているが、まだ両足で立っている


僕は一息のうちに距離を詰め、首元を切り裂く


返り血が蒸発していく

ステータスに変動は………ないか

そりゃそうだ。職業レベルなんて簡単に上がるものではない


あ…………異常者の能力確認…忘れてた……


よし、次は忘れずにやろう


――――――――――――――――――――


またしばらく歩くと大きな空洞があり、そこには数十匹のゴブリンがいた


まずいまずい…この量はまずい……


その時、一番奥にいたゴブリンキングがアベルの足音を掴み取った

ゴブリンキングが咆哮をあげる


「ぐがぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」


ゴブリン達が一斉にこちらを向く


っっっ………どうしよう……とりあえず短剣を使う僕が有利な洞窟の通路に戻ろう


僕は通路に戻り、短剣を構える


どどどどどどどどどどどどど

ゴブリン達の足音がする

心臓の音がバクバクとうるさい


どどどどどどどどどどどどど


職業の発動は心の中で職業名を唱えながら「発動する」ということを意識するだけだ


――――――異常者発動


ドクンッ

さっきまでとはまるで違う

緊張から来る鼓動では無い


――――――あぁ、楽しみだ


まずは2匹か

俺・は左手に短剣を持ち直し、右手に発光石を構える


左のゴブリンの目玉に短剣を刺し、ゴブリンの口に発光石をぶち込む

そのまま腹を蹴飛ばし、少しばかりの足止めをする


「さぁ、ここからは俺の時間だ」

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