Believe
環
Believe
「おはよう」
おまわりさんは何番だったかな…。
そう冷静に考える間に、彼はもっと近付いていた。
「そんなに驚かなくて良くない?」
「驚きますけど…」
だって、見ず知らずのヒトが隣で寝ていたら驚きますよ。驚き過ぎて、冷静になるくらいには。
「酷いなぁ…」
「誰かと間違ってませんか…?」
きっと間違ってると思うのよ。
「俺、記憶力には自信あるのよ。
「………」
何で、名前知ってるの。怖い。
「憶えてない?」
「はい…」
憶えてないも何も知りませんから、ね。
「じゃあ、俺が見えるってことは普通じゃないよね」
「え…?」
まさか…。
見えないモノが見えている。
最近、見えなくなったと思っていたのに。
「忘れないでよ。涼香ちゃん…」
そう言って、私の手を掴んだ瞬間、走馬灯のように色々流れた記憶。
『ずっと一緒には居られないけど、もし涼香ちゃんがすごく困ったり、落ち込んだりした時は必ず戻って来るから、ね』
『すいちゃん、いかないで…』
そう言えば、あの頃からすいちゃんはそのまま変わらない。見た目が変わらない…。
『ごめんね。でも、誰かに酷いことされた時には戻って来るから、それまで』
バイバイね。って言って、手をギュッと優しく握ってくれた。あの感覚。
「………っ!!」
「そう、それよ」
そう言って微笑んでいるすいちゃんは、あの頃と変わらない。
「これからはずっとそばにいるからね」
「いや、遠慮します…」
ただの失恋で、出て来ちゃダメでしょ…。
「号泣してたじゃん」
「してません。気のせいです」
頭ナデナデしながら、笑顔のままで。
「涼香を泣かせたヤツには軽く痛い目見てもらってるから、安心してね」
「不安でしかないですっ!!」
あの頃見えていた白い翼はなく、本当にヒトのようなすいちゃんに不安を覚えた。
Believe 環 @tamaki_1130_2020
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