第125話 なんでばらすんだよ
その夜の事。今日も無事に仕事を終え、家に帰って来ると、テリーが丁度シャワーを浴びて出てきたところだった。居間を覗けばタキは頭からタオルを被って、何やらスマホを見ている。
「ママお帰り」
「テリーただいま。私の可愛い天使」
髪を拭きながら、自分に近づいてきたテリーの頬にキスをすると、一緒に居間へと入って行く。室内ではトーマスが出迎えてくれて、お疲れ様のハグとキスをしてくれた。
「お帰りママちゃん。夕飯の準備できてるよ」
「ありがとう。毎日感謝してるわ。パパ」
子供達が居る目の前で何時までもイチャイチャと抱き合っていたが、そんな時先程の事を思い出して、自分達に全く興味がない様に、無視続けてスマホに夢中のタキに声を掛けた。
「そうだわタキ。来週の土曜日シュトラス君の家に朝から行くけどどうする。一緒に行く?」
今まで下ばっかり見ていて、自分が帰って来たのにも、気づいていなさそうなタキが、途端に嬉しそうな表情をさせてキラキラした瞳で初めて上を向いてきた。
「うん!絶対行く!連絡来たんだ。前回クリスと約束事があって行けなかったから、今回は行く…よ。……あっ…お帰り…ママ」
やっぱりだった。
「…あんたね…そんなにママを認識しないくらい何のサイトに没頭してたの」
拳をフルフルさせていると、パパに落ち着く様にと、宥められてしまった。
「去年行ったロックフェスまた今年もやるんだよ。その申し込み今日から始まって、抽選に申し込んでた。今年はテリーも怪我さえしなければ、行けるからね4枚応募したんだ」
「4枚…」
トーマスが、期待していそうなドキドキな顔をさせている。
「僕も後でやってみるね。誰かしら当たると言いな」
テリーも去年のリベンジか、ワクワクしていた。
「楽しみだね。シュトラス達も締め切りまでには、申し込むって言ってた」
「やっぱりそうだよな。家族の分じゃないよな。俺も行ってみたかった。シュトラスが買ってくれたBlu-ray面白かったもんな」
「パパは個人で頼んでね。一人4枚までだから」
「…うん。分かった。そうしたらママちゃん一緒に行こうな」
「…まったくしょうがないわね…」
早速夫婦二人で、そのHPを開くと、登録項目に沿って書き込んでいる間タキが何やら不満そうに言ってきた。
「…でもな。シュトラスの家には行きたいけど、向こうのママとお姉さんにまた抱き付かれるのかと思うと気が滅入るよ。それが無ければ、楽しいのに」
「ふふそうね。でもあちらのご家族さんも楽しそうじゃない。初仕事の時、タキが来なくって、奥様とお姉様が凄く残念がってたわよ」
「そうなの?」
内心かなり複雑で、顔が渋い顔をしている。折角の可愛い顔が台無しだ。
「だよね。周りから取り囲まれちゃって、こんな時背が低いのも、考えもんだな。シュー兄ぃの慌てっぷりと言ったら、笑っちゃったよ」
「そうねあれは壮絶ね。二人…超カッコいいお兄様まで混ざって更に目の保養が…」
その途端タキに、冷ややかに見られている事に気が付き、慌てて口を押える。
「いやいや~あんな同時に抱きつかれる事なんて、あまり見る事ないし~…ああ。そうそうそうなのよ。奥様から電話が来たのもタイミングが凄いのよ。丁度、客足が遠退いた頃に連絡が来たからビックリしたわよ。透視能力でもあるのか?見張られているのか?思わず周りをキョロキョロ見渡してしまったわ」
『気まずくなって、強引に話を逸らしてきたな。まぁ良いけどね。以前より楽しそうだし』
そう思いながら、タキもママの話に乗る事にした。
「へぇ~それは凄いね。…意外とミカルさん辺りの能力だったり、あの執事さん結構勘が鋭そうだし 」
「そうかも知れないわね。前回私一人で行った時も、初めてだから早めに行こうと思って出たら、道路が思いの外空いてて予定より更に早く着いちゃって、どうしよかしらって思っていた時に、ミカルさんが丁度門の前に着いたばっかりで、開けてくれたのよ。どうして分かったんですかって聞いたら、何となくって言われたの。本当に長年執事とかやっていると、勘も鋭くなるのかしらね?」
リキータの驚き体験に、そういえば以前シュトラスから聞いた話を思い出した。
「そういえば、以前シュトラスが言ってたな。自分がガキの頃散々物を破壊させたり、悪さばっかりしていたから、ミカルが対策を練っていて、いつも先手を打って、壊されそうな物の近くに待機してて自分が手を出した瞬間に何処からか行き成り出てきて、ヒョイッと自分が届かない位置まで花瓶とか像とか持ち上げられて妨害されてたって、何で分かったのかなって、笑ってた」
「その前に、何で壊そうと思うんだ?」
不思議そうに、テリーが疑問を抱えていた。
「何でも、親に反抗したかった時期で、毎日イライラしてて親が自慢していた持ち物を全部壊したい衝動に駆られてたって」
「シュー兄ぃ。昔からリスキーな事を…ぶっ飛んでるというか。もしかしてシュー兄ぃが、そんな事ばかりしてるから、自然にミカルさんの能力が開眼したんじゃないの?」
テリーの当てはまりすぎる推察に家族全員爆笑してしまった。
「そうかもね。ミカルさんも苦労してたんだな…明日来たら、テリーがそう言ってたて、言わなくちゃ」
「止めてよ。何言われるか」
テリーは焦ってタオルをブンブンと振る。
「冗談だよ。テリーも来週一緒に行く?」
「…ううん。僕はパパと留守番してるよ。朝早いんじゃクリスもまだ居るぅ…ああっ~どうする金曜日のアニメ上映会土曜日の夜にしようか。たまにお互い都合が悪い時は、そうしてたし」
「そうだね。クリスには申し訳ないけど。明日忘れずに伝えなきゃ」
「クーちゃん可哀そうに、シュトラス君に負けたわね」
そこでボソッとリキータが呟いたのを聞き逃す事は無く、タキは目を細めて何か言いたそうだ。そこはテリーが家内の平和の為フォローを欠かさない。
「それに!僕が居たらお邪魔虫でしょ。シュー兄ぃと二人きりになれないよ。それに…まだ会いずらい」
最後こちらもボソッと呟いたのだが、タキに突っ込まれてしまった。
「…ああ~思わずリッネに告っちゃったってやつ」
「馬鹿!内緒にしてって言ったのに、なんでばらすんだよ」
気を使ってフォローした事で、余計な事をばらされてしまった。思わずフォローしたのを後悔さえしてしまう。
「あっ…御免…つい」
しまったと思った時には既に遅く、ママとパパは瞳をキラキラさせていた。
「リッネアちゃん凄く可愛いわよね。あの子ならママも大賛成よ。あんたもお目が高いわ」
「そんなに可愛いのか。シュトラスの妹だものな。あの顔だったら女の子も可愛いかも……ヨシッ。どんどんアタックして行け、それであの忌々しいアベルの小僧を思いっきりふってやれ」
その一言で、深く溜息が出てしまった。
「…そのアベルのせいで、リッネに断られたんだよ。アベルを敵には回したくないそうな」
それを聞いた途端両親はがっくりと肩の力が抜けた様に、床に倒れ込んでしまった。
「リッネアちゃん可愛いのに…」
「アベルの野郎~」
その後しばらく呪文のように、ブツブツとその言葉を唱えていた。
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