第126話     そんなんじゃないよ

 その後二人は自室に戻ると、明日の授業に必要な教科書等を鞄の中に入れながら、今年のイベントの事でテリーはウキウキさせていた。

「今年のロックフェス楽しみだな。去年は入院してて行けなかったし、今年も推しのグループ出るし、人生初生で見えるかと思うと、楽しみでしょうがない……当たればの事だけど」

「そうだね。今回は4人もいるし、誰かしら当選すると良いね。今回は階段から落ちるなよ」

「流石に二年連続で、大怪我はしないでしょう。そんな事になったら、人生を詰むよ」

「ww笑っちゃう。…でも早いな。あれから一年になるんだ」

 タキは、あの時の事を思い出しているのか、困ったような複雑そうな顔をさせて、思いにふけていた。それにはテリーも気が付いてか、ニコッと笑う。

「今回も去年と同じ…シューぃと初めて会ったイベントで、同じ会場だね」

「そうだね。あの当時は初めての事で、物凄い恐怖とショックと、もう人生の終わりの様な感じで暫く立ち直れなかったのに、物凄く大嫌いだったのに、今じゃずっと一緒にいたいと思える程大好きな人になってしまった」

「そうそう。初めてタキから打ち明けられた時は、本当驚いたし、まさかって思ったし、でも人生どう変わるか分からないよな」

「そうだね。自分が一番驚いてるかも」

 二人は視線を合わせると、いきなり笑い出した。

「あっそうだ。今日廊下でクリスに会ったんだよ。お兄ちゃんを崇拝しているマコールが居る所じゃ話せないって、呆れた様に話してきたよ」

 テリーが思い出し笑いをさせながら、話してきた。

「ええっ何々」

 タキも楽しそうに、身を乗り出して聞いてきた。

「今年はクリスとアスぃも、イベント応募するって言ってたよ」

「へぇーそうなんだ。アス兄ぃ去年残念がってたもんな。クリスを誘って断られた時。後ろにいたアス兄ぃが、物凄く悲しそうな顔してたよ」

「そうなんだ。笑っちゃう。それの事に関係があるんだけどね。去年教会主催のクリスマスで演奏したのが、大反響が凄すぎて今年も頼まれたんだけど、アス兄ぃがロックフェス二年連続行けないのヤダーとか言って、突っぱねられたんだって」

「えええーー。あのアス兄ぃが?意外な一面。何時もかっこいいお兄さんだと思ってた」

「だよね。あの練習の鬼のクリスも色々あってそれで折れて、そのイベントが有る夜だけ休んであげる事にしたって、立場逆の様な気もするけど、最後に当たればねって笑ってた。もうそれ聞いたら、廊下で大爆笑しちゃったよ」

「だからか帰りの車の中で、吹き出しそうになってたでしょう」

「バレてた?wwだってアス兄ぃだよ」

「だね。でも6人で行けると良いな。楽しそう」

「6人って事は、パパ達は入ってないの?」

「…じゃおまけで?」

「なにそれ」

 暫く笑いこけながら話し込んでいたのだが、明日の準備をしている手が、ずっと止まっていたままだと気が付いて、続きを再開させる。

「どこまでやったけ?…明日の教科は~と科学……数学 …英語…」

「国語……地理…体育…」

「タキは三時間目体育なんだ。良いな~」

「うん。明日はサッカーだって先生が先週言ってたから、楽しみなんだ」

「サッカーかそれも良いな。僕のクラスは今日バレーボールやったよ」

「なんだ。体育やってるんじゃない。羨ましがる事?」

 明日の授業の内容を見ながら、教科書とノートをセットにして鞄の中に入れながら話していると、テリーの手が再びピタッと止まって、英語の授業で使うタブレットを持ったままそれを振りながら強調してきた。

「何言ってるのさ。体育ほど楽しい時間は無いだろう。机に向かって授業しなくっても良いんだよ。遊びみたいなもんじゃない。なんなら1時限目から6時限目まで、ずっと体育でも良いと思っているよ」

 自信満々に言ってきた弟に、やれやれといった感じで呆れていた。それだけでは飽き足らず、テリーが更に意味深な事を云ってきた。

「タキは週三日は運動してるから良いけどさ。僕は今のままじゃ動き足らんよ」

 一瞬何の事を云っているのか分からず、困っていると絶賛反抗期なのか。さっきばらした腹いせなのか、更に余計な事を云ってきた。

「シュー兄ぃと、激しい運動してるでしょ。結局お互い我慢できずに、客室で…」

 そこで初めて内容を理解したタキは、顔面を真っ赤にして、わああああーーと、叫んでしまった。

「馬鹿!デリカシーがないな」

 思わず頬を膨らませて、むっす~としている。あの日シュトラスの部屋で激しさを求めた結果。シュトラスが自分を大事に優しく抱く事を自分が拒んだ事で、タガが外れたのか、今ではお互い激しく刺激を求め合う様になっていた。下の階にテリーが居るから、それに伴い声を殺すのも大変な事になってしまったが、以前より断然気持ちが良いのも考え物だ。

「そんなに、動き足らないんだったら、ルダの散歩の後にでも、近所の人達と一緒に思う存分ジョギングしてくれば!」

「えええーー。どっちかというと、長距離は苦手それより短距離向けだよ」

「はいはい。そうでしたねーー」

 明日の準備をしていた手がまた止まっていたので、度々動き始めたが、更にテリーが、遠慮がちに聞いてきた。

「ねぇ…タキ…」

「何」

 機嫌悪そうに言ってくるタキに、臆する事も無く今度は、その不機嫌さも吹き飛ばす程の、ビックリする発言を言ってきた。

「実際問題どうなの?大人の実物パパのしか見た事ないけど、あんなの…」

 今度は何を言いたいんだと、テリーの言いたい事が分からず、不審な顔をして次の言葉を待っていると。

「指だけであんな痛かったのに、その何十倍もありそうな…痛くない?」

 その流れから考えて、思い当たるのは、その…あれだろう。

「…行き成りどうしたの?」

「…いや…何かね。タキが週に何回もシュー兄ぃと抱き合って、下に降りて来る時、幸せそうな、嬉しそうにしているのを見てて、毎回激痛を我慢してるのかなって、ちょっと、気になっただけ」

『……あっああー…思春期か?』

「確かに初めての時は、脳天まで貫く様な激痛だった。僕の場合は指の後に、いきなり本番だったから、拒絶も出来なかった」

「ゲッえげつない…」

「でも今では痛みはそんなに無いよ。慣れたのかな?」

「その慣れた先には、どんな感じなのよ」

 直も追求してくるテリーに更にタキが焦ってしまう。

「だから何?いきなりどうしたの?」

 その焦り具合のタキを見て、テリーも自分でも何でそんな事聞いているのか、分からなくなっていた。

「何でだろう?急に気になって、最近アベルが自分の前に座って、ニコニコしてるし、前より会話も増えて、触れてくる回数も増えて来てる事も、関係してるのかな?」

「…まさか…」

 タキの言いたい事は分かるから、速攻で否定もした。

「違うそんなんじゃないよ。でも…廊下に飾れた小さい頃の写真。抱っこされているの見てると、初めてアベルに会ったあの病院の事を思い出すんだ。前に言ったと思うけど、懐かしくて、昔大好きだった誰かと、同じ感触。同じ匂いがしたなって、それがアベルだったなんて…何だろうやっぱりおかしいね僕。何言ってるんだろ。毎日あんな写真見てるからかな。だから飾らないでって言ったのに、もぉ~」

「…テリー…」

 パシパシと両方の頬を叩くと、雑念を払っているかのようだ。しかしその後に続く言葉は流石に声には出せず、心の中で呟く。

『きっとあれだね。二人に影響されてるのかも。タキは聞こえてないだろうと思ってるけど、二階から響くベットの軋む音。微かに聞こえる喘ぎ声その度にテレビの音上げたりして、自己制御をなんとか保て…る…。僕には関係ない。僕は普通だ……股間なんて触って…うっ~…ヤバイヤバイ』

 思い出したら、また何余計な事を言いだすか分からない。更に顔を叩いた。

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