第2話 大嫌いだ!
「シュトラス、本当に帰してくれるの?もうあの…ホテルには…」
タキは震える声と身体を抑えながら、シュトラスに尋ねた。
「安心しな。もう時間も遅いしな。もうあそこには連れて帰らない」
シュトラスの手が、肩に軽く触れた途端。ビクッとタキの全身が硬直した。
『なんだよ。ただ肩に手を置こうとしただけなのに、一瞬にして指に衝撃が来たぞ。そんなに俺が怖い?…でも、しょうがないよな。俺がやってる事は…独り善がりな…でも…それでも……俺は…俺は』
心の中で、苦悩と葛藤が入り混じっている事など、タキが知る由もなかった。
シュトラスは本音を見せたくないのか、無理に面白そうなふりをしてタキの様子を見つめている。恐さの余り顔を下に俯いたままだ。そんなタキを見てて可愛くってしょうがないシュトラスは、身体をタキの方へと倒れ込んできて、タキの唇へと自分の唇を重ねてきた。その瞬時に後部座席の背もたれを倒して、広い空間へと早替わりさせてしまった。シュトラスの体重で押し倒されてしまう形になったタキは、ここまで来て下を向いていた自分を悔やんでしまった。
この車の後部座席は車中泊もラクラクに出来るように、広く出来ているので、何処でもやりたい時に出来る事が良い所だと、内心シュトラスは思っている。
そして今も、シュトラスの下で暴れているタキがそこにいた。シュトラスはゆっくりとタキの服を脱がし始める。
「やだ……シュトラスやめて、家まで送ってくれるから、今日はもうこれ以上抱かないんでしょう何で……何で?……」
既に逃げて来る前にホテルで、2回抱かれているのだ。シュトラスがシャワー浴びて、身体の熱を冷まさせたら、もう一回やるぞと言ってきたので、流石に怖くなり、浴びている隙を狙って、部屋から逃げてきたのだが…。
「お前の身体とは相性が良いみたいでな、だから諦めろ。ちゃんと遠回りして家まで送てってやるから、安心して大人しくやられてな。もし拒否したら、初めて会ったあの会場とかで撮ったタキの四肢を投げ出して、気持ちよさそうにしているこの写メ。お前の親に見せてもいいんだよ俺は、どうする?」
スマホをヒラヒラとさせながら、目の前で嬉しそうにニヤついているシュトラスに、タキは信じられないと言わんばかりに、相手を睨みつけた。
「…酷いよ。何時も最後はそれ見せびらかせて、いつも脅して、そんなに僕を貶めたいの?」
泣き顔も怒った顔も、すました顔もみんな可愛らしいタキの、もっと違う表情が見たくって、色々意地の悪い事をつい口に出してしまうシュトラスである。でも一番見たい表情は満面の笑顔なのだが、それはまだまだ程遠い目標である。
「そうでも言わないとお前、大人しく抱かせてくれないじゃねぇか…たまにはちゃんとゆっくり抱かせろよ」
シュトラスの不満をタキに言い散らすが、タキだって言ってやりたいことに沢山ある。
『こっちだって、好きで抱かれていた訳ではないのだから、暴れて当然だ。こいつだけは許さない。僕をこんな身体にした張本人に、やすやす抱かれてたまるか』
「誰が大人しくしてやるものか!どこの世界に犯された奴と寝たいと思うよ、それも男に…お前のせいで好きだった女の子への興味が消えちゃた……何時も目で追っているのは、男の子なんだ……初めてそれに気づいた時は流石に笑ったよ。おかしいでしょう?何時もお前から暴れ逃げている僕が、男を追ってるなんて…さ」
そのままタキは、視線をそらすように、ソッポを向いてしまった。
シュトラスの顔がパァーと明るくなって、タキを見つめた。
今まで見たことのない綺麗な笑みが、視線の隅に入ってきた。一瞬ドキッと心臓が大きく鳴り響く。そのまま自分でも気づかないうちに、シュトラスに見入ってしまったようだ。
「それってもしかして、俺の事もやっと!」
「…あぁ、ち、違う!なんでそうなるんだよ。断じて違うから!!シュトラスからは暴れ逃げているって、言ってるでしょ!」
はいはいと言いながら、シュトラスは優しい仕草で、タキの両頬を大きな両手で大事そうに包み込む。
『初めてタキに会った時、どうしてもお前が欲しかった。お前を抱きたかったんだ。一種の一目惚れっていうやつだ。あの当時はナンパをしても、相手は普通の小学生どうする事もできず、思い余って泣きじゃくるお前を強引に犯してしまった。事が済んで、タキの脱力した肢体を見た時は、罪悪感を覚えた事を今でも覚えている。それから数週間タキの事が忘れられなくって、何日も何日も街中を歩き回って、オスロ中の学校を探し回って、そしてやっと見付けた。あの時の嬉しさといったら、自分を抑えきれずに、有無を言わせず帰宅直前のタキを車に押し込んで車内で抱いた。その度、引っ掻き傷が絶えなかたっけ』
シュトラスはあの時の事を思い出して、微笑んでいた。
視線を反らし、前方のシートに視線を向けているタキに、シュトラスは再度語りかけた。
「タキ…お前の気持ちはよく分かる。確かに強引だったのは済まないと思う。お前の生き方を変えてしまった。ごめん……でもこんな俺にも…慣れろよ、俺の気持ちも分かってく…」
「分かりたくない!あんたの……あんたのなんて……わかり……たくな……い……今更謝るな!」
タキの手が、シュトラスの襟元を掴んで締め付けていたが、シュトラスはタキの腕を解いて、顔の横に押し付けると、悲痛な叫びが車内に響き渡る。
「いやー!……や…ぁ……また、僕を犯すの?……それとも抱くの?」
「抱くのさ。お気に入りのお前の事を…タキを抱く」
シュトラスが真剣なのは目を見てれば分かる。痛い程の視線がタキを貫いた。
「ぼ僕は…お前なんか……だ、大嫌いだ……」
「もう…聞き飽きたよそのセリフは…これからじっくりと、俺の事好きにさせてみせるさ」
「馬鹿じゃないの、なんでお前なんかを好きにならなければいけないんだよ、どうでもいい退けよ今す……うん……ん…ん」
まだ続くはずの言葉は、シュトラスの口づけによって、揉み消されてしまった。
タキは力一杯抵抗を試みたが、完全に体の下に組引かれていて、身動き一つ出来なくなっている。その上、腕は先程からシュトラスに捕まれたままだ。その腕を頭の上でひとまとめにされ、開いた手でシャツをたくしあげた。
もうこうなってはいくら抵抗しても力は完全にシュトラスの方が圧倒的だ。腕を解放してくれるまで、何も出来ない。
『こいつめ不意を突きやがって…』
その後すべての事が終って、グッタリしていると、そのタイミングで運転を決め込んでいたスラットが、間に入ってきた。
「お楽しみのところ済まねーが、もうすぐ到着するけどよ、どうするんだ?その辺に車止めるか?俺もやりてぇ」
それを聞いたタキは、更に青ざめた顔になり、途端に身体を強張らせた。その体の変調をいち早く感じ取ったシュトラスは、タキの頬を優しく撫でてやる。
「何言ってるんだ?そんなの駄目に決まってるだろう。それに変に揺れていたら、その道を通る人が不審に思って車内を見られたらどうするんだ?俺は別にいいけどタキは地元だからな、後が大変だぜ」
「ちぇ、なんだよ。今日は珍しく俺も誘ってきたから、てっきりお前の許しが出たのかと、楽しみにホテルのラウンジで待機してたのによ。タキを初めて抱けると思ったのに。お前ずるいぞ。騙されたーーー」
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