第11話 メンバー変更できないか…? ④
あの後キドラはすぐにスリープモードに入った。正直シークのことが気にならなかったわけではないが、腹の読み会いはキドラにはできないし、前時代のデータでみた人間そっくりのシークの思考などわかるはずがなかった。ゆえにキドラはさっさと諦めて眠ってしまったのだ。
翌朝、キドラは5時ちょうどに起床した。起床時刻として設定した時間と少しもずれていないのを確認し、体に異常がないかを他にもチェックしていく。問題ないようだ。
それから、キドラは7時まで軽くトレーニングを行うことにした。まずはサイボーグの体と脳の信号をスムーズに繋げる訓練だ。これはもはや体に覚えさせるしかない。念じた瞬間に、体の位置を変えれるようにしていく。
まずは、1回転するのをイメージした瞬間に、体を回転させる。まだ、誤差が0·01×6秒あったようだ。すかさず、イメージと動作を何度も繰り返す。1000回で誤差は0.01秒×2まで縮まった。単純計算で後333回くらいすれば、と考えてキドラは一人首を降った。実際そんなに単純なものではない。
次は回し蹴りも同じように繰り返していく。誤差は比較的小さいが、些細な変化も成長には欠かせないのだ。
次は100m瞬間移動。最速で3000km/hだ。だが、人ならざる種族の蔓延るこの世界では、こんなレベルはうじゃうじゃいるだるろう、とキドラが自己を叱責した。
ーもっと早く!!!もっとだ!
ビュンーッーー
キドラがスピードを上げていく。その傍ら、それを見つめる4つの影があった。
「え、あれなんなのー? なんかすげースピードで左右を往復するやつ」
「知らないわよ! 未確認物体か未確認新魔族じゃない?」
「全く……朝早くから危険な不審物が高速で移動していると聞いて来てみれば………。……なんだあれ、気持ち悪いな」
「眠いっす」
ビュンーッ!
ビュンッ!
ーまだだ。まだ遅い!!!
「え! スピードアップした! こっっわ!!」
「気持ち悪いわね!」
「……吐きそう」
「眠いっす」
ビビュン!
ーまだ……まだだ。
「ちょ、とまれ~……」
「物体に叫んでどうすんのよ!!」
「本当にな。物体に言葉が通じるか」
「眠いっす」
ビュー…
「今日はこれ以上は伸び代なさそうだ。そろそろ止めるか」
ピタッ。
「あ、止まった………え!」
「はあ!?」
「私はまだ夢を見ているのか?」
「……もう一回寝てみていいっすか……」
キドラが先ほどから自分に向けられていた視線をキャッチし、その方向を振り返れば、アイリス以外のメンバーがすでに揃っているようだった。
まだ6時半だが、気合いが入っているのだろうか、とキドラは内心関心していた。もちろん、キドラの見当違いを指摘してくれるテクノロジーはない。
「なんだ。始めるか?」
キドラがメンバーにそう問うも、彼らは何も返さない。怪訝に思ったキドラが顔を覗き込むと、揃いも揃って彼らは顔をひきつらせていた。キドラの視覚情報はメンバーが奇怪さや不気味さを感じていることを伝えたが、当然キドラには理由がわからなかった。
「いやいやいやいや!? ええー? なにあれ!!」
「?」
「さっきやばいスピードで往復してたよね!?」
「やばいか……確かにな。まだ全然遅い」
「「「…………………」」」
キドラがそう言うと、シークたちはさらに顔をひきつらせた。キドラにとっては何が何だかさっぱりだ。やはり、顔だけをみて相手の気持ちを読み解いていたという歴史上の人々には頭が上がらない。
「おい。言いたいことは言葉にしてくれ。俺は昔の人々のように勘はよくないからな」
「……いや、なんもない」
サラが変な顔をしながら呟いた。ミナとレオはまるで奇妙なものを見るかのようにチラチラと視線をキドラによこしていた。シークにいたっては、支給されたスマートフォンで何やら検察しているようだ。曖昧な態度のメンバーに、キドラが再び苛立ちを感じていた。
「だから、言ってくれないとわからんと言っているだろう!」
キドラの叫び声は、朝の静けさに溶けていった。
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