第12話 二重緑

 晴れているような夜の空でも雲は分厚く広がっていた。


 微かな水と黒を混ぜたような碧い空。


 月が綺麗に見える背景ではない真夜中に力なくとぼとぼあるく地面は、街灯でオレンジ色。


 春らしい風も吹き始めたこの絶妙な時期に足が止まった。


 涙なんて3滴流せば十分な強い心を持った。


 それか何も感動しないように閉ざした心にしてしまった。


 この曖昧な季節に弱いのはどうしてだろうと、どの季節の合間にも思う。


 雲の切れ間からまだ明るい月が見えた。


 グレーで描いた水彩の雲に、水を沢山含んだ筆を押し当て、切れ間を描いたらかのように月の淡い光が、雲の隙間から滲んだ。


 空に光の雫があるのに、それは決して落ちてこない。

 

 雲のせいで一瞬滲んだように見えたとしても、その雲が避ければはっきりとした形のままでいる。


 何かが欠けていような私に、届く光は変わらなかった。


 不変となってしまった私の心に偶に失望しても、変動する月の先の変わらない姿に、動くことも動かないことも肯定してしまう。


 きっとなんでもなんとかなる。


 大丈夫なんだと思う。


 明日は雨らしい、


 どれぐらい降らせるか期待するしかないな。

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