第11話 桜色

 桜色に染まる空が実は年中あったなんて知らなかった。


 あの日も、あの日も。


 本当は綺麗な桜色の雲が浮かんでいた。


 冬に君を見つけれたのは、きっと雲が頼もしいくらい分厚い形をしていたからだろう。


 ポケットに手を隠して、写真に収めようともしなかったが、景色はいつも目に入っていた。


 知らない内に出会っていた。


 まだ春は先なのに、もう手に入れてしまったかのように、暖かさが分かる。


 あの雲たちは何にも逆らわない。


 そうなればいいのか、どうか。

 

 西に行きたい雲は東に運ばれていく景色をどう眺めているのか。


 心、意思、直感


 人には要るものと要らないもののバランスがどうも偏り、そのどれもが不信で、どれもが信頼できる。


 いっそ捨ててしまえといえど、物のように不要を判別できない。


 軽くなることが全てじゃないとしても、楽に生きたい。


 つまりは言葉にならないということだよ。


 ただ一月の桜に感動した時があったことを、いつかの自分が忘れないように。


 多分空には時折何かのヒントがある。


 だから皆の上に平等に違う景色が映る。


 夢は空に浮かぶ。



 

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