第10話 紅掛空色

 朝と夜に秋が混じった。


 暑かった日々が終わった。


 何故か今年の夏は好きだった。


 嫌いな蝶が綺麗だった。


 変わらないと思ってた。


 私は大人になったから、感情を一定に保てると思ってた。


 そしたら、秋にられてしまったらしい。


 勢いよく撃ち抜かれた心は風に運ばれた。


 胸を押さえても、何も聞こえない。


 目の端にあるカーテンの裾が、夏になかった乾いた揺れをみせる。


 あの風はどこに行ってしまったのだろうか。


 私の大切な心を持って。


 夏は、私を置いていってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る