第5話 萱草色

 窓を開ければ、雨の音しかしない。


 深夜2時過ぎ。


 明日は仕事。


 無作為に傷つけられた感覚で、休みの今日は何も動けなかった。


 私はどうも恋が嫌いみたい。


 ただ笑うしかできない。


 別に涙も出ない。


 でも、一人になった時


 あれ、私だけ辛いって、わたしが一番嫌いな思考回路を辿ってしまう。


 あの子は晴れたような笑顔で恋を語るのに。


 私は見せたくない何かが出てくるのを抑えようとしてしまう。


 口角は上がっても、口は動かない。


 恋が絡むと人は多く言葉を語る。


 それを見ると体が動かなくなる。


 あー、いつになれば恋が鮮やかな色彩をほどこすのだろうか。


 溜め息の後、暗くなってしまうのが怖いから、息を吸うまで待って灯りを小さくした。


 臆病なのか、散らばる思い出。


 眠る前にかけた香水が、常夜灯に相まって

部屋はレトロに沈む。


 この灯りをお洒落と呼ぶのなら、人の感性はいつも寂しさを香って眠るのだな。


 オレンジ、エルダーフラワー、ローズブラッシュ


 初夏は雨上がりに。

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