第4話 紫陽花青

 私、今 大人


 私、今 こども


 梅雨になれば君は知らずとも側で咲いていた。


 私は傘の下でいつも君に会った。


 君は色んな色を持ってるのに、表情はまるで一つしかないみたいだね。


 雨を一心に受け、空の恵みを存分に浴びているのかと思えば、青い葉の下は廃れている茶色いささくれた茎を必死に守っているようにみえる。


 君も生きるのが大変なの?


 花も葉も筋が浮き出るほど生き生きと見えるのに、その足元に隠した暗闇は、どこにもない花の哀しみを感じる。


 でもその空間はきっと君の色を変えてしまうくらい重要なものが埋まっているんだ。


 私、今 大人


 でも、まだ子供


 黄色の小さい傘を持ってるの。


 私しか入れられない傘をね。


 空から見れば、君みたいに勘違いされそう。


 紫陽花に見惚れた女の子ってね。


 あの屋根の下にいる大人はまるで君の葉に乗るカタツムリのよう。


 私を何も分からない子供だと思っているのか、栄養だと言って雨を降らす。


 それがこの先の目色を変えるともしらないで。


 葉の上でのんびり、同じ雫に喜んでいる。


 茎には触れも気づきもしない。


 雨音が増す。フレフレと天を仰ぐ。


 そのまま目を洗えばいいのに。


 お互い大事な物は守ろうね。


 簡単に摘まれないように。


 

 

 


 

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