第12話 【Healing in the large communal bath】
そうこうしているうちに大浴場へ到着した。母が大浴場へ入るのを見届けて、僕の殿方の大浴場へと向かう。
暖簾をくぐり、僕はリラックスできる空間へと導かれていった。クリスマス前の平日ということもあり、かなり空いている状態である。脱衣場の床は、イグサの御座が敷き詰められており、足裏から、癒されていく。それと同時に大浴場の解放感は、僕を都会の喧騒から解放してくれる。生まれたままの姿で浴室へ向かう。
湯船につかる前のかけ湯をし、いよいよ大浴場へ足を入れていく。大浴場は、室内にはかなり大きめの湯船、ジャグジー風呂、水風呂がある。僕のお目当ては、室外の露天風呂だ。露天風呂から空を眺めて、夕間暮れの時間が間もなむ訪れる気配を醸し出している。岩でディスプレイされた露天風呂とヒノキ風呂がある。このちょっとした自然を醸し出した空間が、僕の子供心をくすぐってくる。
まずは、岩づくりの露天風呂へと導かれる。
岩の段差をおり、足裏から伝わってくる温泉の暖かさ、僕は「これこれ」と一人、心に思いながらゆっくりと湯船に体を沈めていく。この解放感、何とも言えない。12月という季節に露天風呂へ入ると、外気温と温泉の温度の差を感じ取った。岩風呂には、僕一人しかおらず、極楽極楽と独り言を言ってしまった。
まだ日があるうちに、露天風呂に入れるとは何とも贅沢だなって感じている。鳥のさえずりも聞こえ、露天風呂の傍を流れている清流の水音を聞きながら、目を閉じている。
そうするとこの世ではないような空間にいる感覚になった。すごく心地よい感覚だ。父と母に大切に育てられた人生を走馬灯のように、頭に景色が浮かんでくる。
リラックスした解放感が僕の感覚にリンクするようであった。
しばらくの間、僕は夕空を眺め、自然の中にある温泉に体を沈めている。いままでの時間の流れを感じでいるとき、僕は父も一緒に来れたらよかったなってつくづく思った。「親孝行、したときには親は無し」といわれているが、まさにそのものである。もっと時間を作っていろいろなところへと一緒に行って、プライスレスな思い出をたくさん作っていたのなら、よかったであろうと思った。
岩風呂を出て、ヒノキ風呂へ移動しているとき、草やぶの中で獣が動いていた。おそらく狸かなにかだろうけれど。熊だったらびっくりですけどね。自然に囲まれて共存することが本来の人間にあった生き方なんだろうなって、一人想いにふけた。
そろそろ温泉にのぼせそうになってきた。お風呂から上がり、いったん部屋へと戻った。母も部屋に先に戻っていた。
母も温泉にゆっくりとつかり、疲れが取れたようだった。
時間を確認すると17:00を少し回っていた。夕食は17:30で予約を入れていた。
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