第5話 【Resume】
フライト時間は1時間20分程度である。そうこうしているうちにあっという間に着陸のアナウンスが流れてくる。到着ロビーではは母と妹が出迎えてくれている姿が、見えた。久しぶりに会う母は、元気そうだ。父の看病中の母は疲れ切った印象を受けたが、今では看病も終了し、時間のゆとりが出てきたようだった。
やはり、お互い久しぶりに会うのだから、元気な姿で会うに越したことはない。あれもこれも会ったら話したいと思っていると、これもこれもと脳裏に浮かんでくる。これが親子との対面なのだろうか。
ということで、僕は荷物を預けていたため出てくるのを待っている。出口の向こうでは母と妹が出迎えてくれている。今回はワクワク楽しい気持ちでいっぱいだが、以前、父の葬儀で帰省したときは、悲しい感情で空港に降り立った。その時に感じた。人それぞれ思いがあるのだなって痛感したことをリフレインした。空港にいる人たちがすべて楽しい気持ちではないことを実感した。と、荷物が出てくる時間に思い感じていた。
母と妹と無事に合流できた。なんだか懐かしい空気が漂う。故郷の懐かしさというか、実家にいた頃の想いが蘇る。母と妹も元気そうで何よりである。
早速、妹の車に乗り込み、父の墓参りをする。代々受け継いできたお墓であるが、おそらく僕の代で墓終いとなるのであろう。先祖の方々に挨拶をし、無事に帰省できた報告をしたい。現代社会の中で暮らしていくのは、本当に大変なことと気苦労が多い。
車窓から見られる景色は、昔とは変わっていないが、なんだか懐かしさを感じる。都会の喧騒の中で毎日暮らしていると、田舎の時間の流れというものを忘れてしまう。その感覚が今リセットされている。都会の生活はそれなりに満足しているが、本来はこういった時間の流れが人間の身体にはマッチしているのだろう。
車窓を眺めながら、行きかう車を僕は眺めてい。母と妹を交えながら親子の会話を楽しんでいる。この気を使わない親子の関係とはいいものだと、会話をしながら感じた。普段は遠く離れていても、会った瞬間に昔の家族に戻る。この空気感がやはり一緒に暮らしていた親子なのだろう。
先祖と父の眠る墓地へ到着する。早々に墓参りをする。お線香、献花は準備してきている。無事にまた親子で再会できたとこを感謝し、これからも家族全員元気で過ごせられるようにと手を合わす。お墓参りをするとなんだか気持ちがすっきりする。先祖があるから、今の僕たちもいる。その命を授かったことへの感謝を忘れずにいたものだ。
お墓参りも終了し実家へと向かった。懐かしい景色が目に映ってくる。実家へ到着、荷物を降ろし「ほっと」一息といった感じだ。明日はいよいよ母と親子二人旅である。なんだか気持ちが高鳴る。父が元気なうちに親子三人で温泉にでも行けたらよかったのにと、後悔後に立たずとは、まさにこのことだろう。「親孝行したいときには、親はなし」と何のタイミングで耳にしたかわからないが、このフレーズはふと頭に浮かんできた。
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