愛の灯火

katsumi

第1話

-----------告白-----------


 僕の名は雄二。中学生の頃からずっと付き合ってる恋人がいる。彼女の名前は志穂。いつも俺の事を気に掛ける少々おせっかいな彼女だ。僕が何をするにしてもなにかと口を挟む。

 そして現在25歳そろそろ結婚も考えようと思っている。でもだからと言ってすぐにOKって感じでもないのだけれども、そろそろ身を固めるべき年齢でもある。

 そして今は志穂と温泉旅行へ行き、そこで告白しようと思う。


「なぁ、志穂」


「何?調子でも悪いの?」


 いつものように僕の事を気に掛ける感じでそう言った。


「いや、そうじゃないんだけどさ、その・・・付き合ってずいぶん経つでしょ?」


「まぁ、中学生の時からずっと付き合ってるからね。何?なんかあんの?」


「いや・・・その・・・まぁ・・・」


 と、僕は言葉をつまらせる。


「何よはっきりしないわね。言うなら早く言ってね!」


 と、志穂に言われると僕は思い切って勢いよく言った。


「好きだ!結婚してください!」


 と、僕が言うとしばらく間があき志穂が静かに口を開く。


「やっとか・・・ずいぶん待ったんだけど?!」


 と、志穂が言った。


「ごめん、あれからずいぶん待たせたね」


 そう僕が言うと、それからは志穂との結婚の返事は無事に承諾を得た形となった。それからは温泉旅行を楽しんだ。旅行から帰ったあと、緊張しながらも志穂のご両親にも会い、それからは正式に結婚まで順調に進んだ。結婚式も無事済んでお互いの話し合いの中で新居も無事に決まることになった。それから新居での生活へと始まる。


 ◆◆◆


「ほら!早く起きなよ遅刻するわよ!」


 志穂がそう言い、目覚まし時計を耳元に近づけてきた。


「わかりました起きます!」


 僕は少し朝が苦手だ。そしていつものように朝食を食べて仕事へ行く支度をして玄関前まで志穂が迎えに来る。志穂は僕のほうへ顔を向けて静かに目を閉じる。


「行ってきます」


 僕はそういい、志穂と唇を合わせる。そしてそのあとだった。志穂の身にとんでもないことが起ころうとはまだこの時は知らなかった。


-----------志穂の運命-----------


 いつものように業務をこなし、昼食を取ろうとした時だった。


「おい!」


 その声は課長だった。すごく慌てた口調であった。


「え?課長どうなされたのですか?」


「今病院から電話あってな、お前の奥さん交通事故に合ったみたいなんだ。お前はもう今日いいから早く病院へ行け!病院は・・・」


 と、課長の慌てた口調から尋常ではなさそうな感じがした。


 ◆◆◆


 そして病院へ着いた。するとまだ手術中との事、僕はあわてて近くの看護師さんに言った。


「あの!!志穂は?!志穂は?!」


「もしかしてご家族の方ですか?どうぞこちらへ」


 そう部屋へ誘導されると医師が説明に向かう。


「奥様は大変危険な状態であります。頭をひどくやられており、しばらくの間は昏睡状態になると思われます」


 と、医師が説明する。そして僕はその昏睡状態がいつ覚めるかも聞いたが時期は分からないらしい。本人の生命力にかけるしかないとそう言っていた。一体僕はどうすればよいかどうしたら良いのか。もし、志穂が死んだらと思うと夜も眠れなかった。そして課長から連絡あり僕は事のいきさつを説明し、まだ有給も残っているし会社には出社せず、志穂のそばにいるよう課長に勧められ会社を休んだ。


「志穂・・・」


 溢れる涙が止まらずただただ手を握るだけしかできなかった。毎日病院へ行っては志穂を見守るだけの生活が続いた。それからも目が覚める気配がなかった。


「ねぇ、目を覚ましてくれよ。いつまで寝てるんだよまたいつものように怒ってくれよ・・・頼むよ」


 そう僕が言うと志穂のお義父さんとお義母さんが病室へ入室してきた。


「雄二君」


 お義父さんが僕の事を呼ぶ。


「お義父さん・・・」


 僕がそう言うとお義父さんは僕にこう告げてきた。


-----------結末-----------


「もう娘の事はいいから雄二君は自分の道を歩んでいきなさい。これは雄二君のためでもある。仕事もこれ以上は休めないだろうし、新居の事もある。そして何より雄二君はまだ若いこれからの事を考えての事だ。もう娘の事は忘れて自分の道を歩んでいきなさい。娘もここまで雄二君に想われて、さぞかし幸せだったと思う。本当にありがとう雄二君」


 そうお義父さんから告げられた。でも僕は頷けなかった。


「でも、お義父さん」


「雄二君、気持ちは嬉しい。でもこれは娘のため、そして何よりも雄二君のためを想って言ってるのだよ」


 そう言うと続けてお義母さんからも僕に告げてきた。


「雄二さん、娘の事は本当にありがとうございました。いつも雄二さんの事を笑顔でお話してましたよ。だから娘のせいで雄二さんの大事な人生を無駄にはして欲しくないのよ」


「お義母さん・・・」


「雄二君もちろんこの話はいますぐ決められることではない。1週間以内にできれば決断してほしい。決断できたら家に来てほしい、いつでもいるから」


 そうお義父さんに言われ、僕は病室を出た。僕は悩んだ、答えの出ない質問で僕は困惑した。そうしているうちに一週間という月日が流れた。仕事にも出社しないといけないことから僕は働き、その間志穂の事を考える。そして約束の1週間が経った。僕は再び病室へ訪れるだがそこには志穂がいないのだ。

 

「志穂!?」


 するとそこへお義父さんが現れた。


「雄二君、申し訳ないこれは娘からの強い希望でね」


「え?志穂からの希望?どういうことですか?!」


 実はこの1週間でなんと志穂が目覚めたそうだ。そして僕にこれ以上の心配をかけさせたくないという思いから連絡はやめてほしいとのこと。その代わりお義父さんが志穂の様子をビデオカメラに収める事にしたのだった。

 それはとても弱弱しい口調の志穂の最期のメッセージとなっていた。


「ゆうくんがこれを見る頃にはもう私はこの世にいないと思う。勝手なことを言ってごめんね。でもね私どうしても伝えたいことがあるの。私ゆうくんと一緒になってとても楽しかったよ。今までありがとう。ゆうくんのこれからの事なんだけど、私をずっと愛してくれるのは嬉しい。でも私はね、ここで死ぬの。だから、これからの人生で好きな人ができたら私はゆうくんに幸せになってほしいし、そのひとの事を幸せにしてほしい。それがゆうくんのためだから。私ずっと見守ってるよ。絶対幸せになってね。そして幸せにしてくれてありがとう・・・」


 そう言い遺しビデオカメラが終わった。と、同時に力尽きたかのように、それから志穂が動く事はもうなかったそうだ。僕は泣いた、泣き崩れた。それから数年が経ち、俺は志穂のお墓の前でお参りしている。あの時、確かに志穂が僕に対して一瞬にして大きく放っていた。

愛の灯火ともしびを・・・。


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