第4話:勇者ガブリエルたちは①
聖歴1216年1月1日:ガブリエル視点
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、全ては勇者ガブリエル様の思い通りですわ」
「キィイイイイ、なぜ貴女が偉そうに言うわけ、ルイーズ」
「それはわたくしが召喚勇者ルイーズの生まれ変わりだからですわ。
たかが魔術師協会の幹部の娘でしかない貴女には理解できないでしょうが」
「キィイイイイ、私は魔力と実績で若き天才美少女魔術師と称えられているわ。
ルイーズのように、何もせずに親の七光りで『召喚勇者ルイーズの生まれ変わり』と言う虚名を名乗ってはいないわよ」
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、矮小な魔術師の小娘風情に、召喚勇者ルイーズの生まれ変わりであるわたくしの偉大さは理解できません事よ、クロエ」
「キィイイイイ、だったらここで、どちらが勇者パーティーにふさわしいか勝負してやろうじゃないの」
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、貴女ごときがわたくしに勝負を挑むなんて、百万年早いですが、いいでしょう、いつでも相手になってあげますわ」
「いいかげんにしろ、バカ者どもが。
仲間割れするくらいなら、その辺にいるモンスターでも狩って経験値を稼げや」
「キィイイイイ、何バカな事を言っているのよ、ガブリエル。
今モンスターを狩っても、奴隷どもに経験値が分け与えられるのよ」
「はぁあ、あんなゴミのような奴隷どもなど、もうゴッドドラゴンに喰われてクソになっているはずだ」
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、勇者ガブリエル様の言う通りだわ。
そんな事も分からないなんて、やっぱり生まれも育ちも悪いわね、クロエ」
「もういいかげんに止めろや、耳障りだぞ、ルイーズ、クロエ。
それよりもさっさとボス部屋に入ってゴッドドラゴンを下僕にするぞ。
10分は待ったのだ、今言ったように、奴隷の300人くらいゴッドドラゴンなら喰い殺しているだろう。
アーチュウ、ボス部屋を開けろ、入るぞ」
「分かった、おで、ボス部屋開ける」
いよいよだ、いよいよこれで勇者として大々的に大陸デビューするのだ。
今はまだこの国だけでしか知られていないが、ゴッドドラゴンを従魔として従えて大陸中の王城に乗りつければ、勇者として不動の地位を築く事ができる。
「ウグゥグググググ」
「なにグズグズしてやがる、さっさと開けろや、アーチュウ」
「ウグゥグググググ」
「チッ、役立たずが、ルイーズ、クロエ、お前らもアーチュウを手伝え」
「キィイイイイ、なんで私が力仕事なんてしなきゃいけないのよ。
力仕事は奴隷の役目よ。
私は魔術以外なにもしない約束よ、ふん」
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、勇者ガブリエル様、無理を申されないで。
私のような高貴な生まれの者は、力仕事などいたしませんの。
どうしても力仕事をしろと言われるのでしたら、わたくし、勇者パーティーを辞めさせていただきますわ。
当然その時には、ルイーズ教団の支援はなくなりますけれど」
「キィイイイイ、私だって同じよ。
どうしても力仕事をやれと言うなら、勇者パーティーを辞めるわ。
当然その時は魔術師協会の支援はなくなるわよ」
こいつら、図に乗りやがって、今に見ていろよ。
ゴッドドラゴンさえ従魔にしてしまえば、もうルイーズ教団も魔術師協会も不要。
おおげさな称号だけでろくな魔術も使えないクロエも、召喚勇者の名前を騙る偽者も勇者パーティーから追放してやる。
「アーチュウ、この役立たずが。
バカ力以外なんの取り柄もないないお前を勇者パーティーに入れてやっているのに、そのバカ力すら役に立たないのか、クズが。
俺さまが手伝ってやるから死ぬ気でやれや」
★★★★★★
「「ゼイ、ゼイ、ゼイ、ゼイ、ゼイ」」
「なんで開かないんだ、俺さまに逆らいやがって。
扉ごときが俺さまに逆らうなんて、生意気だぞ」
なぜだ、なぜボス部屋の扉が開かない。
勇者である俺さまと、バカ力しか取り柄のないアーチュウが全力で開けようとしたのに、びくともしないなんておかし過ぎる。
もう1時間も挑戦し続けているのだ。
中にいる生贄の奴隷どもは、もう全員喰い殺されているはずなのだ。
「キィイイイイ、いったい何時までこんな所にいなければいけないのよ。
教団が偉そうに言っていた予言が間違っていたのじゃないの」
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、これだから生まれの卑しい魔術師は嫌ですの。
偉大な召喚勇者ルイーズさまが書き残された予言書を疑うのですから。
そのような不信者は教団から破門して差し上げますわ」
「キィイイイイ、いったい何様のつもりよ、ルイーズ。
いいわよ、好きに破門すればいいじゃない、さっさとしなさいよ。
だけどその時はすべての魔術師がルイーズ教団を否定して他の教団に移るからね。
今回予言が失敗したのも、あんたが召喚勇者ルイーズの名を騙った所為だと、魔術師協会の総力を使って広めてやるわ。
それでも貴女の父親は大神官でいられるかしら。
前大神官を貴女の父親が殺したように、貴女の父親も敵対派閥に殺されるわよ」
「ホォオオオオ、ホッホッホッホ、そのような事は不可能よ、クロエ。
だって貴女はここでモンスターに喰い殺されるのですもの」
「キィイイイイ、私とやろうというのね、いいわ、やってやるわよ。
いつでもかかっていらっしゃい、ルイーズ」
「やかましいわ、もう黙っていろ、てめぇら。
ルイーズ、予言が間違っていたのは誤魔化しようがないぞ。
300人も生贄にして、ボス部屋の扉1つ開かないのだ。
もう大々的にゴッドドラゴンを従魔にすると宣伝してしまっているのだ。
ここで仲間割れしている場合じゃない。
直ぐに地上に戻って策を講じないと、教団の信用にかかわるぞ」
「……分かったわよ、さっさと戻ってお父様に相談するわよ」
「クロエ、お前もだぞ。
お前の父親は魔術師協会の幹部でしかないのだぞ。
お前が思ったことが全てかなえられるわけではないのだ。
直ぐに父親に会って、他の幹部連中に根回ししなければ何もできないぞ」
「キィイイイイ、分かったわよ、お父様と話すわよ。
だけど、教団の予言が間違っていたのは確かよ。
ガブリエルだってその事は認めるわよね?
1番被害を受けたのは、他の誰でもないガブリエルだもの」
「ああ、それはその通りだ。
ルイーズ、今回の予言はお前が言った事になっている。
召喚勇者ルイーズが書き残した予言書がある事を隠して、召喚勇者ルイーズの生まれ変わりであるお前が予言した事に、お前と大神官がしたのだ」
「ふん、分かっているわよ、何か失敗した理由を考えてもらうわよ」
「ウグゥグググググ」
「バカ野郎、いつまで扉を開けようとしているのだ。
もういいからさっさと地上に戻る準備をしやがれ、アーチュウ」
「ブッヒ、ブッヒ、ブッヒ、ブッヒ、ブッヒ」
「チッ、ホブオークかよ。
ザコなんぞさっさと片付けて地上に戻るぞ。
アーチュウ、ぶち殺せや」
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