俺の第六感が告げている
ふさふさしっぽ
本文
俺は白猫。名前はマシュマロだ。俺の飼い主が「白いから」という理由で安易に名付けやがった。
「あかりちゃん、まだ帰ってこないねー」
そう言いながら、玄関でうろうろしているのが、同じく飼い猫のココア。黒猫だから、ココア。適当な名前だ。ちなみに「あかり」というのが飼い主の名前だ。いい年して、アニメが好きで、彼氏の一人もいない、寂しい女だ。
「今日は友達と外で夕飯食べるから遅くなるって言ってたじゃねーか。たしか、アニメとのコラボディナー? だったか。ココア、お前、昼寝してて聞いてなかったろ」
俺は玄関でぐるぐる回っているココアに、欠伸しながら言った。ったく、犬じゃねーんだから、飼い主の帰りを今か今かと待つのはやめろよ。猫ってのは「あ、今帰って来たの? 気づかなかった、まあお帰り」くらいのスタンスでいいんだよ。
「だってあかりちゃんの膝の上、気持ちいいんだもんー」
ココアはあかりのことを思いだして、デレデレしだした。まったく、こいつはいつでもあかりにべったりだ。
俺は違う。あかりとは一定の距離を置き、不必要に慣れ合わない関係だ。俺は俺、あかりはあかり。それぞれのライフスタイルが……
「お腹すいちゃった。フードたーべよっと」
心の中で俺が俺の生き方を語っているのに、ココアは玄関脇に置いてあるカリカリフードを食べ始めた。いつもは決まった時間に決まった量用意されるカリカリフードだが、今日はあかりの帰宅が遅くなるため、あかりは出かける前に多めのカリカリフードを用意して行ったのだ。
ココアは呑気にカリカリを食べ始めようとする。俺はそのとき、何かを感じた。
「待て、ココア」
「なに? マシュマロ」ココアが振り向く。
「食うな。まだ、我慢だ」
「えー。なんで? お腹へってんのに……って、まさか、マシュマロ」
ココアが真顔になって俺に問いかける。黒くて黄色い目をしたココアが真顔になると、それなりにミステリアスな猫になるから不思議だ。
「ああ。今日は……来る」
「マシュマロの第六感だね」
「そういうことだ。腹は空かせとけ」
俺がそれだけ言うと、ココアは静かにカリカリフードから離れた。
そのとき。
ガチャガチャ。
鍵を開ける音がした。
「ただいまー。ココア、マシュ―、いい子にしてたあ? この前みたいに悪戯してないでしょうねえー」
「にゃーにゃーにゃー(おかえり、あかりちゃん! ずっと待ってたよ)」
「にゃにゃにゃにゃー(酔っぱらってやがるな、あかり)」
「じゃじゃーん、ココア、マシュ―、おみやげ買ってきたよ! 高級猫缶! 猫用デザートもあるよー」
「にゃにゃーん!!(やった、お腹すかしといてよかったー!!)」
「にゃんにゃにゃ(俺の第六感が当たったな。今日はおみやげがあると直感したんだ)」
二匹でがつがつ食べたのは言うまでもない。
俺はそのあと酔っぱらったあかりにココアと一緒につかまり、モフられスリスリの刑を受けた。俺はあかりとは一定の距離をとり、不必要に慣れ合わない関係だ……けど、今は満腹で眠いからモフられてやろう。あー、酒くせー。
俺の第六感が告げている ふさふさしっぽ @69903
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます