ゾンビ【一話完結】

るぅるぅです。

ゾンビ


夢占いをしてみると、ゾンビが出てくる夢は

「意思疎通出来ない人間に囲まれている」

深層心理なんだそうだ。



ここ最近ゾンビと生活したり授業を受ける夢を見ていたのは、そのせいだったらしい。


でもこの夢はいつまで続くんだろう。



今日も。

血痕と腐敗臭の残る家には誰もいなくて、

道を歩くと崩れた身体でよろよろと群がるゾンビから逃げつつ学校へ行き、

骨が見えてきてしまってる教壇にいる先生らしきものと、席についてピクリとも動かないクラスメイトに囲まれる。


生きてるのか、死んでるのかは分からない。

だったらゾンビだと思っておこう。


学校は食料が無いからか活動的なゾンビが皆無だ。

とても静かだ。



映画なら、漫画なら、アニメなら。

どこからともなくヒーローが来るとか、

自分で町を出て生きた仲間を探したりするんだろうか。


しかしこうして数日呑気に生きられてるし、ゾンビ達は思ったより動きが鈍くて攻撃性も低かった。


スーパーにある食材を食べて満足してるのが大きいのだろうけど、歩けなくなったゾンビは自然に絶命するという何ともゆったりした雰囲気だ。


この世界は、悪くない。


でも。

この先、ゾンビ達の食料が無くなったら自分の方にくるだろう。


旅に出るべきか。

車じゃないと怖い。

運転の仕方を知らない。

そしてこの町以外は普通の世界で捕まっても困る。


この世界は、どこまで無法地帯なのか分からない。



皆はどうやってゾンビになったんだろう。

噛まれたらいいのかな。

痛いのは嫌だ。

痛くない方法でなれないものか。


人である事にこだわらず。

ゾンビになれば、何か楽になれるのかな。




目が覚めた。


涙で濡れた顔を袖で拭き、部屋を出る。


人間の家族がいた。

外へ出ても追いかけられることは無く、学校の皆も、

生きている。




それからも、ゾンビの夢は毎日見る。


生きている家族やクラスメイトがその姿とぴったり重なるようになってきてる。


だからこのところ「話しても無駄」だったり腐敗臭が漂ってくるという無意識が働いてちょっぴり困る。


ゾンビの姿がほとんどかぶってきた頃にはお店や家で出てくるものは怖くて食べられないし、

無理に食べても腐敗臭がする。


食欲がすっかり落ちて、鏡の自分の姿は奇妙だった。



まだ、人間でありたい。



学校を卒業するまで、

この町を出るまで。


あと、半年もある。




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