リンネ
朱宮あめ
第六感
真っ白なマフラーをぐるぐるに巻き、顔を半分以上隠して歩く砂浜。
マフラーと同じ純白のワンピースは、寂しげに揺れ、私に抱きつく。
色を失った山は、静かに眠っている。
やまない波音だけが耳の奥に木霊して、私に孤独を思い知らせる。
裸足の足にまとわりつく、白く泡立つ波と砂。
空は暗く、深い藍色。
色のない寂しい世界にひとりぼっちの私をからかうように、冷たい冷たい風が吹く。
冷え切った指先に触れるのは、悲しい静寂。
私はそれを強く握りしめ、キュッキュッと、砂を踏み鳴らしながら歩いた。
私は孤独。
私の行く先は、冷たく暗い街。
私のいた場所は、私の足跡に夜明けを知る。
私を辿るように光が生まれ、冷たかった街を暖める。
草木が咲き、色のない街を鮮やかに彩っていく。
風が私のマフラーを奪う。
灰色だった空に高く舞い上がったマフラーは、私の身から離れた瞬間に七色に輝き、空を飾る。
私が吐いた白い吐息は、山に触れ、海に触れ、街に触れ、温もりを知る。
けれど、私の髪に、頬に触れるのは、いつだって冷たい風や水。
私を暖めてくれる者はいない。
誰一人いない砂浜に、私は佇む。
私だけがいない街。
孤独な私は、春を呼ぶ。
透明な私を知る者は誰もいない。
突然、目の前を一陣の影が掠めた。
私は驚いて瞳を開く。
朝焼けの海に、私が作り出した色鮮やかな街並みが生まれていた。
ゆらゆらと頼りなく揺れながら、ひとりぼっちの私を誘う。
私の頬を、温かい涙がつたっていく。
打ち寄せる波はこころなしか暖かい。
まぼろしの街を目指して、空を駈ける。
――カタンと音を立てて、誰かの病室の写真立てが倒れた。
リンネ 朱宮あめ @Ran-U
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