第4話 私は「カードを買い取ってください」と言い、馬鹿息子とは交渉不能だと思い知り、彼女と出会った後にノーリッシュ邸に戻り『クライヴと面会する』ことを選んだ未来に思いを馳せる
「クライヴ様に誠意を見せて頂ければ、お付き合いしますよ。カードを持って」
「誠意というのは……どうすればいい?」
問い掛けるクライヴに、私は何を言おうか考える。
今、頭にあるのは『「カードを買い取ってください」と言うこと』と『「頭を下げてください」と言うこと』だ。
考えた末に私は『「カードを買い取ってください」と言うこと』にした。
私はクライヴを見つめて口を開く。
「カードを買い取ってください」
「わかった!! 父上に買っていただけるようにお願いする」
「馬鹿!! そんなことしたらカードを取りあげられるでしょう!! しかも私は解雇される!!」
「く……っ」
馬鹿息子と交渉した私が愚かだった。
「あなたのお金で買い取れないというのなら、話は終わりです。帰ります」
私はクライヴの返事を聞かず、彼の部屋を後にした……。
馬鹿息子とは交渉不能だと思い知った私だが、でも、もしも。
もしも、私があの時、異なる選択をしたら、未来はどう変わっていただろうか……?
私が彼女と出会った後にノーリッシュ邸に戻り『クライヴと面会する』ことを選んでいたら、今頃はどうなっていただろう……?
そう、きっと、未来はこんな風に変わっていたはずだ……。
私は『クライヴと面会した』
ダメ息子のクライヴと面会した。
「僕のカナリヤに会ったそうだね」
「はい」
「だったら、あの子の素晴らしさがわかっただろう? 僕は、あの子がいなければ生きていけない」
お前、今、息をして喋って、生きているだろうが。
私は馬鹿息子を罵倒したい気持ちを必死で抑える。
「あの子の歌を聞いている時だけ、幸福な未来を夢見ていられる。君との未来を……」
「はあ?」
思わず、呆れて声を出してしまった。
「僕は君が好きなんだ!! 美人でもなく太っている娘の夫なんて嫌なんだ!!」
「人間の価値は容姿ではありません」
家柄とお金です。
そう続けそうになって踏み止まる。
「僕は君の顔とスタイルが好きなんだ!! 声も、すごく好みなんだ!! 初めて出会った時からそう思っていた……!!」
「はあ。それはどうもありがとうございます」
全く嬉しくないが、お礼を言わないわけにもいかない。
「男装姿でも、そそられるんだ……っ」
変態か。
無能な上に変態なのか。
私は深いため息を吐いた。
なんとか、この変態、いや、クライヴを令嬢と結婚させなければならない。
***
※『「頭を下げてください」と言うこと』を選んだ場合は(五話へ)
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