マロンの一番こわいもの

紗織《さおり》

マロンの一番こわいもの

 我が家の愛犬マロンは、勘が良い。

 彼は、持ち前の第六感を駆使して、様々な危機から回避行動を取っている。


 台所でお母さんである私が料理をしていると、お野菜を貰おうと近くを歩き回っている。

 

 「あっ、ごめん、マロン!」

 キャベツを千切りしている途中に、包丁が上がるタイミングに一緒に飛ばされた切れ端が、マロンの頭の上に落下。

マロンは、ビックリしながら、ピョンと後ずさりをして回避。


そして、落ちて来たキャベツを嬉しそうに食べている。

「上手に避けたね。

あらあら、しかも食べて片付けてくれてありがとうね。


キャベツ、マロンの分もちゃんと作ってあるよ。」


(ヤッター)

尻尾を全力で振りながら喜ぶマロンは、エサ皿に入れてもらった千切りキャベツを、美味しそうに食べる。


そして、彼は怖いものにもとても敏感。

リビングでゆったりとした時間を過ごしていた私とマロン。


私が昼の情報番組を見ていたら、さっきまでソファーで寝そべっていたはずのマロンが、私の膝の上に乗ってくると、ガタガタと震え出している。


「えっ、どうしたの?

 もしかして、台所に落ちていた玉ねぎでも食べちゃったりとかしたの?


 なんでそんなに震えているの、マロン?

 大丈夫?」


 いつまでもガタガタと震えながら、落ち着きがないマロンを見てすっかり慌てる私。



 数分後…。


 「ピカッ!ゴロゴロゴロ!」


 雷だった。

 マロンは雷が大嫌い。私が気が付く前から、ずっと怖くて震えていたのだった。


 「マロン、大丈夫、怖くないよ。お家には落ちないからね。」

 どんなに言い聞かせてみても、撫でていても、彼は雷が鳴り止むまでずっと震えているのであった。



 「今日の昼間ね、大変だったんだよ。


 雷が鳴っている間、マロンはずっと私の膝の上で震えていたんだよ。」

 帰宅した娘にマロンの昼の様子を話す私。


 「そっかぁ、マロン、お母さんが守ってくれて良かったね。」

 頭を撫でられ、喜んでいるマロン。



 そして着替えが終わって、自分の部屋に向かおうとする娘。


 「こらっ!!!


 またリビングに荷物を置きっぱなしにしないの!

 ちゃんと部屋まで持って行きなさい!」

 

 荷物のリビング連続放置事件に、突然私の怒声が鳴り響いた。



 ダダダダダダッ!


 その声にいち早く反応して、階段を駆け上るや、娘の寝室(2階の一番奥の部屋)まで全速力で走ると、そのまま布団の中に潜り込むマロン。


 娘は、荷物を部屋に運んだ。

 そして、布団をめくってマロンを見ると、まだ彼は、ガタガタと震えていた。


 「ママの雷がこの世で一番怖いんだよね。


 ごめんね、マロン。

 お片付けちゃんとするからね。」

 娘は、マロンの為なら頑張るのであった。

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マロンの一番こわいもの 紗織《さおり》 @SaoriH

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