召集令状

朝焼 雅

守りたいから

 今日も自衛隊ヘリが飛ぶ。そして、平和が終わった。平和とは次の戦いの準備期間であるとか誰かが言っていたが、本当にそうだった。仕事から帰り、家族と過ごす、そんな当たり前でいつも通りだった生活が終わった。

 2年前、世界的に戦争が始まり、日本も参戦した。派遣された自衛隊は半年前から帰ってきていない。そんな時に国から18歳以上の男女問わず召集令が出された。

 僕は結婚して子供もいるサラリーマン家庭だった。その日は帰宅したらテーブルの上に赤紙その横で頭を抱える妻、半年間、嫌な予感がしてたんだ。特に今日は日常に違和感があり、もしかしたら何か悪い事起きるんじゃないかと思いながらも仕事へ行った。

 妻には泣きながら止められたが、家族を守るために僕だけ召集に応じた。会社の上司、同僚、後輩も参加するようだった。召集場所の訓練所に行くと若い人からお年寄りまで約2万人が来ていた。

 2ヶ月戦闘訓練を受け戦地へ派遣される説明をされ、武器を持ち、的目掛け打つ。まさか、自分がこんな慣れないものを持って人を殺すために訓練を受けているなんて前世で悪いことでもしたんじゃないかとか良いことをしてこなかったからか、悪いことを考えるようになっていた。

 2ヶ月の訓練を終え、帰宅したら娘と妻が泣きながら迎えてくれた。久しぶりに3人でご飯を食べ、風呂に入り、娘を寝かしつけ、妻と愛し合う。死ぬ前に幸せを感じられてよかった。

 休暇が終わり、訓練所へ戻る前に妻に遺書を渡す。妻からは「無事に帰ってきて」 とキスをされ別れた。

 訓練所へ戻るとピリピリと空気が冷たく、嫌な予感がした。戦地へ向かう日時を告げられた。

 いつもより周りの目つきが違い緊張感が漂い、息苦しい。




 僕は今日、戦地へ向かう。自衛隊ヘリに乗り日本を離れる。僕たちの命を最期に戦争が終われば良いと思い敵地を睨む。

 最期に、僕は勘が鋭い方だと思う。生き残れるとは思わないが、勘を頼りに1日でも長く生き残れるように行ってくる。

 

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召集令状 朝焼 雅 @asayake-masa

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