第19話満たない話
さらに2日後の事だった
俺は昨日も来那に電話をした
特に何もなさそうで安心していた
でも今日はどうかわかんないな
いつどこで何が起きるかわからない
ただ心配しすぎも良くないだろう
今日は俺も来那もバイトが休みだ
だからラインだけ送ってあとは返信を待つことにする
大学にいるの時も大学が終わってからも
返信を待っていた
ちょくちょく送っていたけど気付かないのかな?
また不安が募る
ちょっと来那の大学に行こう
迷惑とわかっているけどここ数日で色んなことがありすぎた
だからこそ息が止まりそうなくらい心配してしまうんだ
来那の大学に行く
一言来那にラインをいれたからそのうち来るだろうと思って校門で待っていた
しかし
「あれ?律さん?」
「え?」
校門から出て来るのはまもりと柑奈だった
2人だけ?
「こんにちはー」
まもりが陽気に挨拶してくる
「お、おう、
来那は?一緒じゃないのか?」
嫌な予感で鼓動が早くなる
「来那は今日来てないですよ?」
……やっぱり
「ラインとかは送った?」
「一応送りましたけど返信がないです」
2人にも返信がないのか
「おっけーありがと」
俺は2人を置いて急いで駅に向かう
駅に着いてこの後の行動がしやすいようにとりあえず来那に電話しよう
来那の身の安全を確認しないと
プルルルル
プルルルル
出てくれ……
プルルルル
頼む
プツッ
受話器から外の音が聞こえる
繋がった……!?
「もしもし!?来那!?」
俺は食いつくように来那の名前を呼んだ
『もしもし?』
ズキンっ!!
俺は心臓を撃ち抜かれたような衝撃を食らう
来那の声じゃない……
「だ、誰だ!?ふざけんなよ!来那をどこにやった!?」
女の人の声だったが来那の声ではない
……誘拐?
『律でしょ?覚えてる?』
……へ?
「……誰?」
『詩穂だよ』
詩穂!?
「詩穂だって!?
詩穂が来那を誘拐したのか!?」
『はあ?何言ってんの?
律の彼女が倒れてたからあたしが助けたんだよ?
4丁目の公園わかる?そこにいるから早く来てもらえる?
ケータイのパスワードも覚えてないって言って大変なんだから!』
怒鳴るように詩穂は俺に訴える
え?え?どういうことだ?
詩穂は電話を切る
とりあえず俺は言われるがまま公園に向かう
4丁目の公園って俺が来那に告白したとこだよな?
公園まで行く
すると来那と詩穂がベンチに座っていた
俺は来那の姿を見た瞬間
ジワーッと力が抜けてうまく歩けなかった
来那だ、来那に会えた
来那は俺の方を見ると
こちらまで走ってくる
そして勢いよく飛び付いて俺を抱きしめた
「りぃつぅー!」
来那は顔をくしゃくしゃにして泣いていた
なぜか俺も泣きそうになるがそうはいかない
「来那?大学は?
友達心配してたぞ?」
俺がそう言うと
来那はとんでもないことを言ってくる
「大学の場所がわかんなくなっちゃった」
「……………え?」
まただ……
また震えが止まらなくなる
「………なんで?」
「わかんないよ…
ケータイのパスワードも忘れちゃうし」
来那の異変が俺と来那の未来を消していくかのようだった
未来が見えない
来那の事実を受け入れられない
来那の言葉が俺の不安を積み重ねているようだ
俺は来那から体を離す
「朝起きてから?」
「わかんない……助けてりつ!」
泣きじゃくっている来那だったが
どうすることも出来なかった
詩穂は状況が掴めずにただ俺らを眺めるだけ
「なんかよくわかんないけど
どういうこと?」
詩穂がきょとんとして言うが
「詳しい話は後からだ
とりあえず一旦来那を病院に連れていく」
「待ってあたし車だから場所言ってくれれば送るよ?」
おいおい、神かよ
詩穂が天使に見える
「ありがとう!マジで助かる!」
「困った時はお互い様だよ
さあ乗って!」
俺と来那は詩穂の車に乗る
都内にある病院まで行く
「来那ちゃんだっけ?
あたしのこと本当に覚えてない?
今までで2回会ってるんだけど」
詩穂は運転しながら来那に聞く
「覚えてない」
一点を見つめながら来那は言った
俺は気になる点があったので詩穂に聞く
「2回会ってるの?
だいぶ前に飲んでた時にたまたま会ったんだよな?」
「うん、その時と半年くらい前かな?
見覚えがあってふらふらしてたから声かけたのね?
それで律の家に行きたいって言ってたから車で送ってあげたの」
なるほど前に俺の家の前に来那が来た時だ
俺の友達って詩穂の事だったんだ
やっと辻褄が合った
「来那はね、記憶障害なんだ
前はこんなにひどくなかった」
「んーだろうねそんな感じした」
詩穂もなんとなく察してくれてたみたいだ
来那はひたすら泣いていた
病院に着く
受付を済ませ待合でしばらく待つ
その間にやらないといかないことがある
「来那、ケータイ出して?」
「うん」
俺は一応来那のケータイのパスワードは知ってる
海に行った時にちゃっかり教えてもらったから
俺と来那が付き合った日がパスワードだ
0604
俺は来那のケータイでパスワードを解く
「来那、海さんに一回連絡するぞ?」
「うん、」
海さんに電話をする
多分仕事中だと思うし忙しいからなあの人
案の定出なかった
「ダメだ」
繋がらないか
このままはちょっとまずいぞ
大学の場所も忘れ、ケータイのパスワードも忘れる
多分毎日大学に行くし
毎日ケータイを開くからどこにもメモしてなかったんだろうな
幸いなことに俺のことは覚えてくれている
それだけが俺の唯一の救いだった
しばらくすると
「川本来那さーん」
看護婦さんに呼ばれ
恐る恐る審査室の中に入る
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