第14話友達の話



そして数週間後に来那とあることをする


「来那、大丈夫だよ

いい子そうだったじゃん」


俺と来那は待ち合わせをしている

あの二人を


「ちわーっす」


お、きたきた

遠くから見てもやっぱ地味だな

メガネを掛けたまもりと

二つ結びの柑奈が俺と来那に向けて手を挙げる


「律さんお久しぶりっす」


まもりは俺に馴れ馴れしく挨拶する


「うん、久しぶり」


俺も挨拶を返す、そして来那は

笑ってない…顔が怖い


「ら、来那??

顔が怖いぞ?」


「え?うそ??」


来那はすぐに作り笑いを作って


「みんなおはよーー」


昼の1時だが来那はおはよーという


「来那?元気無さそうだね」


柑奈が心配する

ま、まあ柑奈、無理もないよ

来那は一大決心をしているのだから


とりあえず寒くなったのでファミレスに入る

ふうーここからが本番か?

そう、来那の一大決心とは

記憶のことを二人に話す

今まで来那は内緒にしてきた

というよりこの2人が鈍感なのかもしれないからそこも心配なんだけどな

来那も1人だと怖いからって俺を呼んだわけだ


「とりあえずドリンクバー頼む?」


俺は3人に言う


「うん」


「はーーい」


「はい」


3人ともしっかり返事をする


「でー?来那の話ってなに?」


まもりが唐突に言う

俺は何も知らないけど多分話があるって2人を呼んだんだろうな

俺もなんだか緊張してきた

来那と俺は水を含む


「え、律さんも一緒ってことは…?

え?結婚?妊娠?」


ブフー!


まもりの言葉で思わず水を吹き出す

な、何言ってんだよ!

妊娠させてたまるか!


「ち、違うよ?

りつはあんまり関係ないよ?」


慌てて来那も否定する

そりゃそうだろ

当たり前だが避妊はちゃんとしている

勘弁してくれよ鈍感娘たち……


少し間を開ける来那

そして


「2人に内緒にしてた話があるの」


来那が言うと2人は頷く


「私、記憶障害なんだよね」


「え??」


2人は俺が初めて来那の記憶障害の話を聞いて反応と同じ反応をしていた


「え??なんで?いつから?」


柑奈が体を前に出して聞く


「いや、それが覚えてないの」


「嘘でしょ?」


まもりは笑いながら言うけど嘘ではない

ましてや冗談を言えるほど来那の口は達者ではない


「1ヶ月前の事を記憶出来ないの

みんなと行った旅行の思い出も写真だけが残ってて記憶には残ってないんだ」


「…………」


2人は固まる

来那も何も言えずに黙る

まあ無理もないよな

ずっと一緒に居た友達の1人が記憶ないなんて言われたら何も言えない

しかしこの重たい沈黙を破ったのは来那だった


「内緒にしててごめんなさい

でも、私もこの話をするの本当はすごく怖くて不安なんだよね

大事な友達が私の記憶の中から消えていくのが怖い」


来那が2人に真剣な眼差しを送りながら言うと

2人は深く頷いて

まずはまもりが言った


「私達、大学からの付き合いだけど

来那の雰囲気めっちゃ好きだし

思い出がなくなっても一緒に居れるなら居ようよ」


そして柑奈も


「うん、来那になんかあったらむしろ手助けしたいな」


2人はやはりいい奴らだった


「ありがと……泣きそう…」


来那は口を押さえて眉間にしわを寄せた

前にも言った通り

来那の記憶には、来那を大事にしてくれる人しかいないよ

だから来那も今いる人たちを大事にしないといけないな

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