第13話根本的な話


律side


半年を迎えてから更に3ヶ月が経つ


「ねえ、りっちゃん、本当に緊張しちゃう」


「気にする事ないよ」


来那は緊張していた

なぜなら


「もうー!!来那ちゃんほんっとかわいいー!!」


りこが来那に抱きついて離れない


「いやー、本当に来那ちゃん可愛いね

律にこんな可愛い彼女が出来るなんてびっくり」


舞衣も冷静に言う


「俺もこんな可愛い彼女いたら毎日幸せだなー!」


悠がテンション高く笑う

実は今、来那をお披露目するために

大学の友達と来那とでカラオケに来ている

ああ、確かに可愛い彼女だけど

来那のアウェイ感が半端ねー!


「来那ちゃんは律のどこが好きなの?」


りこが御構い無しに来那に聞く


「どこって、居心地のよさかなー」


「えぇー!!あたしも来那ちゃん好きぃぃーー!!」


「いや、意味わかんねーわ!」


思わずりこの頭を叩く俺

来那、あんまうるさいの好きじゃないだろうな


「まあまあ、とりあえず来那ちゃんのお披露目会だし

乾杯しようか」


舞衣がまとめて


「おおーーーう!!

じゃあー!かんぱーーい!」


悠がいつものように乾杯をする


「来那、ごめんな

いつもこんな感じなんだ」


「ううん、楽しそう」


苦笑いを浮かべる来那

本当に思ってるのか?


今は昼の2時だが

もうお酒を飲んでいる

俺もビールをぐいっと飲んで

りこ舞衣はチューハイ悠はカクテルを飲む

来那はまだ未成年だからカルピスを飲んでる


「来那ちゃんはどんな歌歌うの?」


舞衣が優しく問いかける

すると


「あんまり知ってる曲がないんだよね」


と、相変わらずタメ口で来那は話す

そういや、なんでタメ口なんだ?

まあそこはどうでもいいとして

知ってる曲がないのも当たり前だよな

覚えても1ヶ月したら忘れちゃうし


「へぇーあんま聞かないの?」


舞衣も驚いてる様子だった


「ほとんど聞かないよ」


「そうなんだ」


「じゃあ来那ちゃんもお酒飲もうか!」


悠が来那の前に立って言う

俺は慌てて止めに入る


「ダメダメ!来那はお酒飲んだら色々支障が出るから!」


「なんで?」


「え、だって来那は」


俺は来那の事を話そうとした

その時だった


「あー!!りつ!だめだよ!」


来那は俺の口を押さえる

ん?なんで??


ダメと言われたから黙る俺だが


「へえーーなんか秘密があるんだー」


と言いながら悠はにやける


「内緒だよ」


来那がそう言うと


「おぉー!内緒かー!

そっかそっかー!はっはっはー!

とりあえず飲もー!」


悠はアホみたいな反応して流してくれた


「りつのばか」


来那は少し怒ってるような気がした

自分の記憶のことを話すのは嫌なんだろうな

でも生きてく中では一人じゃ生きていけないのも確かで

内緒にしたところでそれはその人を信用してないからなんじゃないか?

友達にも記憶のことは内緒にしてるらしいし

本当にそれでいいのかはわからない

でももしそれで来那をよく思ってる人からすると

俺もそうだったけど、内緒にされて嫌な気持ちになるんだよな


カラオケが進むと

次第にみんな飽きてしまって


「質問ターーイム!」


と、悠が立ち上がってまたでかい声で言った

質問タイム?なんだそれ


「来那ちゃんに質問する時間です!」


「まんまだな」


多分、悠は盛り上げようとしてくれてるんだろうな


「はーい!」


少し酔ってるりこがピシッと手を挙げる

戸惑う来那だけど少しの我慢だぞ


「なんでそんなにかわいいのー??」


「えー?かわいくないよ」


来那は手を素早く振る

いや、かわいいだろ!

そこは俺も心の中で否定する


「コンプレックスとかないでしょ?」


りこは来那の顔をくしゃくしゃにするように触りまくる

ダルそうな絡みだが

意外にも来那は抵抗はしていなかった

嫌な顔をしないでされるがまま


「あるよーまつげ短いし目はまん丸だし手が大きいし

でも胸はあんまり大きくないし」


特に俺が気にしたことないことないような事を並べる来那


「それも個性だよ」


りこは来那の肩をポンと置いて言った

それを言えば全てのコンプレックスが丸く収まるな


人付き合いが苦手だと思っていた来那だったけど

無理していたのかわからないがよく喋っている

カラオケが終わって帰宅ムードになる中

俺と来那はバイトだ

あー俺お酒飲んで大丈夫だったのかな?

でも酔いは回ってないし大丈夫だろう


「じゃあね来那ちゃん!」


3人が来那に別れを言うと


「うん、ありがとー!」


と来那は大きく手を振った


「よし、じゃあ俺らはバイトだな」


「…………」


来那は返事もせずに歩く

え?なんで?


「来那?聞いてた」


「……聞こえてるよ」


……はい???

なんだこいつの態度

明らかに機嫌が悪そうだった


「なんだよ、何怒ってんだよ」


「別に?」


はい??????

俺は頭にきた


「じゃあ絶対後から文句言うなよ??

んでその態度嫌だからやめてもらえる?」


「なんでよ

りつが悪いんじゃん!」


「いや、何が?」


急に俺のせいにされても困る

来那は俺を睨むように目で訴える

そんな目しても無駄だぞ


「俺が何したの?」


とりあえず落ち着いて聞いてみる


「……私の秘密バラそうとした」


ん??

え??それだけ??


「え、待って、それだけ?」


秘密って記憶のことだよな?


「はあ?それだけじゃないでしょ?

なんで私の気持ち考えないで軽々しくバラそうとするの?」


ガチギレなんすけど…


「バレちゃまずいのか?」


「まずいとかじゃなくて

私が嫌なの」


「だからなんで??」


「だって、障害持ってる人と仲良くなりたいと思う?」


ばか、


「それは違うぞ来那」


「…なに?」


「来那は障害持ってるかも知れないけど

それ以前に一人の人間なんだから関係ないよ」


俺は来那に優しく言う


「関係なくないよ

思い出を残さない友達なんて……」


「本当に来那と仲良くなりたい人は

来那に秘密にされる方が辛いんだぞ?」


俺が実際そうだった

来那に内緒にされて嫌な気分になったし


「……そうなの?」


来那は覚えてないかな?

俺が来那に怒ったこと

だから来那はわかんないのかな?


「来那を大事にしてくれる人は

どんなことがあっても記憶を残さなくても来那のそばにいるよ?

少なくとも俺がそうじゃん?」


俺は来那の頭を撫でる


「……本当にそう思う?」


「来那の記憶のこと知ってる人は?」


すると来那は財布から一枚のメモを取り出した


「……病院の先生と学校の先生と

あと、店長、お兄ちゃん、りつ」


店長も知ってたのか

まあバイトの面接とかで言わなきゃいけないだろうしな

でも、その人たちはみんな共通してるよな


「うん、

来那の記憶は、本当に来那を大事にしてくれた人しかいないはずだよ

来那の秘密知って、友達やめるようなやつがいたらそんなやつ忘れちゃえばいいんだ」


「……そうだね」


来那は少し微笑む

ちょっとは納得してくれたかな?


「わかった?」


「うん、あとでメモするね」


よかった

納得してくれたんだ

結局この後はいい雰囲気でバイトに行くことが出来た

来那は色々と消極的に考えすぎてるけど

来那が思ってるよりみんな来那のことを受け入れてくれるはずだ

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