第12話過去の話



来那side


私は近くのコンビニに行く

確か家を出て左にずっと行けば着くはず

道もろくに覚えられない

昔は本当に嫌だったけど

今は幸せな気分になれる

全部りつのおかげ

りつに全部話してよかった

1ヶ月前のことを記憶出来ない

不便だったなー

覚えてないけどりつにも色々迷惑してると思う

けど一緒に居てくれて本当に嬉しい

りつがそばにいてくれたらもうそれだけでいいな


でも今でもたまに夢を見る

小さい頃の記憶だけが残ってるから

思えばあの日から私の人生は大きく変わってしまった


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



今から15年前の事

物心がついて間もない頃に

気付いたらお父さんが、違うお父さんになってた

よくわからなかったし

そういうこともあるのかもしれないって思ってた

最初はお母さんも優しくしてくれてた


「来那、もうすぐで幼稚園に行けるね」


と、笑顔でお母さんが言う


「うん!楽しみ!」


私も早く友達とか作りたかった


でも、ここからが私の地獄の始まりだった


4歳の頃に私に弟が出来た

もともと6個離れてるお兄ちゃんがいたけど

弟が出来るなんて思わなかった

嬉しい気持ちでいっぱいだったのに

弟が出来てから

お母さんは全く私とお兄ちゃんを相手にしていなかった

なんで、弟ばっかりずるい

私もお母さんとくっついていたいのに

寂しがり屋の私はお母さんに甘えていた


「ねぇ!お母さん!

来那とも遊んでよ!」


しつこく肩を揺すると


パチン!!


「うるさいんだよ!」


私はお母さんに頬を思い切りぶたれた


何が起きたかわからない

けど、確かに頬に強い衝撃があって思わず泣き出してしまう


「いたーーい!!!

わーーー!!!いたいー!!」


泣き叫んで訴える

それがいけなかったのかな


「黙れ!」


パチン!!


また頬をぶたれる

なんで…?

寂しさと痛みが混ざって余計に涙が出る

この上ないくらい泣き叫ぶと


「あー!もう!!」


私は髪の毛を引っ張られ連れてかれる

やだ、どこに連れてかれるの??

あんなに優しかったお母さんが今では鬼に見える

私は押入れに入れられて


「もう出てくんな!」


襖を閉められて暗闇になる

…….なんで?

小さい頃の私にはよくわからない

泣き叫んでも誰にも届かない

泣き疲れると次第に眠くなって

そのまま押入れの中で眠ってしまった


しばらくすると襖が開く


「……来那?」


声がする、誰だろう?

目を開けると

お兄ちゃんがいた


お母さんは私をビンタして

お父さんはそれを見て見ぬふり

そんな家族の中でお兄ちゃんだけは私に優しく声を掛けてくれた


「来那?なんでこんなところにいるの?」


「……お母さんにぶたれて

うるさいからこの中に入れられた」


「なんだよそれ

俺にはそんなことしないのになんで来那だけ?」


「わかんないよそんなの」


思い出すだけで涙が出てくる

そんな私の頭をくしゃくしゃと撫でるお兄ちゃんはこんなことを言ってくれた


「来那は俺が守るから

俺が大人になるまで我慢してな」


「……うん」


この言葉だけが嬉しかった

それからずっとお母さんの暴力は続く


「ほら!!お前はここに居ちゃダメだろ!」


もう完全に家の中で対立してるようなもんだった

家は広くてみんなでご飯を食べるテーブルも全員座れるはずなのに

一緒のテーブルでご飯を食べようとしたらまた髪の毛を引っ張られて

床でご飯を食べさせられた


そんな中


「じゃあ、来那俺と一緒に食うか」


お兄ちゃんが隣に来てくれた


「泣くなって、ご飯だけでも美味いぞ」


お兄ちゃんはご飯だけでおいしそうに食べてる

もちろん広いテーブルではおかずはいっぱいあったけど

私とお兄ちゃんはご飯だけ

でも、お兄ちゃんと食べるご飯は美味しく感じられた


そして、虐待が続いて

私はそれに必死に耐えて

妹も生まれて

完全に私とお兄ちゃん

両親と弟、妹で別れて生活していた

弟も妹も私たちには極力話しかけてこない

私も中学2年生になって

友達もいるし家にいる時は大人しくしてれば何もないし

少しは余裕が出来た

ただ、私の体も限界だった

家に帰る前になると胃が痛くなる

お母さんの香水の匂いで吐き気がする

そして、弟と妹の大好物

ハンバーグ、コロッケ、オムライス

ピザ、エビフライ

この5つの食べ物を口に含むと

喉が締め付けられて吐いてしまう

家でのご飯生活は変わらない

でもお兄ちゃんはそんな私のために


「来那、これ、学校で作って来たんだ

食べて感想聞かせて」


そう言ってお兄ちゃんの作ったハンバーグが置かれる

また吐いちゃうかな?

なんて思って食べてみたけど


「美味しい!」


お兄ちゃんの作るご飯は美味しかった


「おぉー!!マジか!

じゃあまた作るからな!」


お兄ちゃんは洋食店で働くため調理の専門学校に通ってる

今は実際に洋食店で働きながら勉強してるみたい


いつもお兄ちゃんは私を支えてくれる

お兄ちゃんが居てくれたから私はここまで耐えてこれたんだと思う


でも、私の記憶はこの日で途切れる事になる


私は中学2年になって初めて化粧道具を買った

お兄ちゃんのお金で買ったから私の物

それの何が悪いのかわからない

でも悪魔の声が私の耳を痛くさせる


「ちょっと来那??

来てもらえる?」


いつも地べたに座ってる私をお母さんは呼んだ

今は弟も妹も、お兄ちゃんもお父さんもいない


「これ、なに?」


お母さんは私の化粧道具を見せてきた


「何って、化粧道具だよ?」


「これ私のでしょ??」


「え?違うよ

お兄ちゃんがお金くれて買ってきたんだよ?」


「嘘つくな!私のが最近無くなったんだけど!

あんたが犯人だったんだ」


「違うって言ってんじゃん!」


パチン!!


久々にビンタをくらう


「あんたが化粧なんて調子乗ってんじゃないよ!」


痛い、でも

昔みたいな悲しい感情は無くて

怒りが込み上げてきた


「痛いってば!!」


パチン!!


私もやり返してビンタをする

もう泣かないもう負けたくない

こんな生活は嫌だ

涙を堪えて必死に抵抗したビンタだった

初めて人をビンタしたけど

自分もこんなに痛いならもう2度とやりたくない


「ふざけんじゃねーよ!!!」


お母さんは私を突き飛ばした

ガンッ!と壁に頭を思い切り打つ

その衝撃で私の意識は朦朧とする


そんな時

お母さんは包丁を持ってきて


「殺されたいの?」


無表情のまま私に包丁を突きつけた

何考えてるのこの人…

私は恐怖と頭を打った衝撃で動けない


「今まで生かしてあげたのに

死にたいんだね」


「……やだ」


私は近くにあった雑誌を包丁目掛けて投げると

お母さんは包丁を落として

お母さんの足に刺さった


「いった!!!」


お母さんの叫び声が響く


私は包丁は遠くに投げる

すると起き上がったお母さんは馬乗りになって

私の頭を拳で殴り続けた

ずっと続く痛み

私はもう死ぬのかもしれない

意識が遠くなる

意識が遠くなってからもう何も覚えてない

あの日からずっと何も覚えてない

私の記憶は1ヶ月しか記憶出来なくなってしまった

記憶障害になって5年が経つみたいけど

未だに現状は変わらない


でも今は違う

毎日私を支えてくれてるお兄ちゃんと

私に幸せをくれるりつのおかげで

今も笑って生きていける

この幸せな日々を

1日を無駄にしないようにしなきゃ

りつはどんな時でも私のそばに居てくれるって言ってくれたし

もうこれから先は安心出来るね


コンビニで卵とネギを買って

家に帰ると


「おぉー!ありがとー

これでチャーハン作れるな」


お兄ちゃんのご飯が食べれる


「来那寒いのにありがとー」


大好きなりつが迎えてくれる


「うん」


忘れたくないけど忘れちゃう

でも確かに私は笑いながら生きていける

今の記憶の中でも幸せを感じながら生きてる

これが私の生きるための強みになってくれてる!

だから私もりつのことをもっと好きになって

一緒に幸せになりたい

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