第9話かわいい話
来那の内緒の話の真実を知れてから2ヶ月が経った
付き合って半年の記念日
今日はバイトもあるからあまりゆっくりは出来ないけど
とりあえず俺は来那の大学まで行くことにした
住所とか大学の名前を聞いたけど
来那は美術大学に通っているらしい
しかもかなりでかいところ
俺は電車に乗りながら少し考える
記憶が1ヶ月だけで大学に行くのって大丈夫なのかな?
めっちゃ必死に勉強すれば記憶出来るとか!?
それはないか
大学の最寄りに着く、歩くこと15分
かなりでかい美術大学に着く
嘘だろ…まるで都内の総合病院みたいじゃん
校門の方へ行くと
来那はその大学の校門に居た
よく見ると来那は女の子2人と一緒に居た
ん?友達も一緒なのかな?
でも随分地味な子と一緒なんだな
言っちゃ悪いけど来那は可愛すぎるから余計目立つぞ
来那の方へ行く
「らーな!」
俺は陽気に話しかけた
「あ、りつ」
来那も少し微笑む
すると来那の友達も反応する
「えー!来那の彼氏?」
「うっそー!見たい見たいー!」
見たいって…目の保養にはならんよ
デニムシャツを着たメガネの女の子と
花柄のワンピースを着た二つ結びの女の子が来那の友達だ
確か、来那の家のメモにも書いてあったような気がする
友達を作るにも精一杯の来那ってすごい努力してるよな
「来那の彼氏さん優しそーだね!」
と二つ結びがニヤニヤしながら言う
俺は「いやいや」と謙虚に否定するが
「りつは、すごいいい人だよ
みんな仲良くしてね?」
と来那が言うと
「まもりです。よろしくお願いします」
とメガネの女の子が言う
「柑菜『かんな』です!」
と二つ結びの子が続けた
なるほど。俺も挨拶しなきゃだな
「うん、よろしく!」
と、俺は会釈して挨拶
「じゃあ、行くね」
と、来那は二人を見て手のひらをあげる
「うん、いってらっしゃい」
と、まもりが言って
「羽目外しすぎないようにね」
柑菜も続ける
外さねーわ……今日はバイトだ
2人と別れ俺と来那は駅へと向かった
駅へ向かってる途中
一つ疑問に思ったことを来那に投げかける
「あの女の子たちは来那が記憶障ってこと知ってるの?」
と聞くと来那は大きく首を横に振る
「言えないよそんなこと
思い出話されても覚えてないって言えば通ってきたし」
「あ、そうなんだ」
意外とあの子達は鈍感なのかな?
俺は次の疑問を投げかける
「大学の勉強とかって覚えてられるの?」
何度も変なこと聞いて申し訳ないけど知っておきたい
来那はまた首を横に振る
「美術大学って言っても
1ヶ月絵を書いてそれを提出するだけだよ
就職先も決まってるし」
「え!?そうなの!?」
「うん、美術館のお掃除だけどねー」
意外とよくやってるんだな……
就職先まで決まってるなんて……
来那の知らないことをたくさん聞けたということで
バイト先に向かうことにした
「店長お疲れ様です!」
バックルームに行って俺と来那は一緒に挨拶をする
「来那ちゃん最近明るくなってきたねー!
是非、うちの看板娘になってほしいな」
と来那の背中をポンっと叩く店長
「ううん、全然そんなことないです」
来那が否定すると
「なあに言ってんだー!
恋してるから明るくなったんだよ!
ぜーんぶ吉見君のおかげでしょ?」
と店長も明るく言う
「まあそうかも」
とニコッと笑う来那
おいおい、いい事言ってくれるなー2人して
「来那ちゃんも吉見君に酷い事されたら俺にすぐ言うんだよ?」
と店長が言うと
「じゃあ泣きつきますね」
「それはやめろ!」
と俺は来那の肩を叩く
「はっはっは!まあ傷つけなきゃいいんだよ!」
と店長は高笑いをして俺の肩をポンポン叩く
はい、うざいポイント1
仕事前にタバコを一本吸う
来那は先に仕事に向かってる
バイト終わったら飯にでも連れてこう
でも高級なところは連れてけない俺を許しておくれ
俺はタバコの火を消す
すると
ガチャっとドアが開く
本間が入って来た
「あ、お疲れ様です」
と、適当に言う俺
「おつかれー」
本間もダルそうに返してくる
本間には来那と付き合ってる事言ってないからな
たまに来那をご飯に誘ったりするらしいけど
悪いな、もう俺の女なんだ(ドヤ
そんなドヤ顔を浮かべてると
また誰かが入ってきた
「りつ?新しい小説の検品ってどうやるんだっけ?」
と来那が顔だけを覗かせ言ってきた
「あー待って、今教えるから」
俺はタバコを消す
うちの本屋のバイトはかなり楽だ
棚の整理、レジの確認、本の検品、カバーを付ける
これだけで良い
しかし店長が特に厳しく見てるのは整理整頓という部分で
少しでも本にほこりが付いてると
「拭いて!!」と慌ててタオルを持ってくる
やはり綺麗なところじゃないと本は売れないらしい
でも来那はたったそれだけの仕事でも
1ヶ月まるまる仕事をしなかったらその仕事内容まで忘れてしまう
かなり大変だよなそれ
でもなんとかやっていけてる来那はすごいと思う
やっぱり日頃からメモは欠かさずとっていて
そのメモも毎日読み返してるから出来ることなのかもしれない
来那は本当に努力してるよなーと感心してしまう
そして、バイトが終わる
店長はパソコンで調べ物をしていて
俺は気になっていたマンガを少し読んで
来那と本間はバックルームに居る
いやー最新の漫画が読み放題っていいわーー
来那とこの後出掛けるからそんなに長居は出来ないけど
5分くらい読んでから
バックルームに行った
ドアを開けると
来那と本間が仲良く話していた
俺はまた本間が来那と話してるのことに一瞬イラっとしたが
「あ、来た来たー」
来那が俺の方に駆け寄る
すると俺の後ろに立ち両手で俺の肩を掴み
俺をゆらゆらと揺らしながら来那は言う
「ねえーねえーりっちゃん
今日どこ連れてってくれるのー?」
と、甘えてきた
か、かわいい!!
俺を揺らす度に来那の髪も揺れて俺の顔にかかりいい匂いがする
可愛すぎんだろこの生き物!!
本間が居ても御構い無しに俺にべったりする来那
「どうしたんだ?急に」
あまり公共の場でイチャイチャするのが好きじゃないのは俺も来那も一緒だと思っていたけど
「だってー
日記見たよー?今日で半年なんだね」
来那は満面の笑顔で言う
あぁ、本間にイライラしてたけどなんだかほっこりしてきたな
「そうだよ、早く帰ろう」
俺と来那は荷物を持って
「じゃあ本間さんお疲れさまです」
来那が本間に挨拶をすると
「……おう」
と小さく返した
多分付き合ってることバレただろうな
でも隠してるわけじゃないしな
むしろ見せつけれてよかったわ
店長にも挨拶をして外に出る
来那は相変わらず自転車通勤だ
「外さみーなー」
「そうだね」
と言って来那は自転車に乗る
今日は1月4日で、真冬の気温
夜は1℃しかないのでさすがに寒すぎる!
「来那、さすがに俺もチャリがいいから後ろ乗ってよ」
と俺は凍えた声で言う
すると来那は
「いや、私が漕ぎたいからりつ後ろ乗って」
「え!?大丈夫か?」
そんな細い足で俺を乗せて漕げるのか??
恐る恐る後ろに乗る
そして来那は力いっぱいに漕ぐ
ゆっくりゆっくり漕いでいる来那
「来那?まじで大丈夫?」
「うん、平気」
と来那は言う
急な上り坂とかもないしいけるだろう
「寒いからいい運動になるね」
「確かにな」
俺は普通に飯を食ってそのまま帰るつもりだったけど
来那は違っていた
「ねえりっちゃん」
「ん?」
「実はね、私のお兄ちゃんがりっちゃんに会いたいんだって」
……まじか
来那のお兄さんとはまだ会ったことがない
この間も来那の部屋に初めて入った時はお兄さんはいなかった
いつかは挨拶しないといけないと思っていたけどこのタイミングか
「おう、いいよ」
俺は返事すると
「じゃあ今日、私の家で泊まりでいい?」
………
俺はしばらく黙る
「え!?」
と後から返事をすると
「……やだ?」
来那は心配そうにこちらを振り返った
「いや!?全然嫌じゃないよ?
でも来那の家に泊まりってなんか緊張するからさ」
「そうなの?」
それに一緒に寝るとなると完全に頭の中がエロエロになりそうで怖いしな
でも一度お兄さんに挨拶はしたい
「じゃあ来那の家にお邪魔するね」
「うん!!」
来那は自分の家に向かって自転車を漕いでくれた
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