第6話何もない話


次の日

大学もバイトも休みだったので今日は友達と飲みに行っている

舞衣と悠が友達を連れてきて

俺、舞衣、りこ、悠、舞衣の女友達、悠の男友達で夜から飲んでいた

一応来那にも伝えてある


俺は昨日のこともあって少し元気ないように見えてるかも知れない

飲みが進むと次第にみんなのテンションも上がってくる


「よーーーーうりーーつーー

来那ちゃんとはどうなんだーー??」


と舞衣が俺の肩に腕を乗せ言う


「普通だ普通

面白い話なんてなーーんもないぞ」


と適当な事を言う


「そうなのーー??

まあいいやーー」


とどっか行く舞衣

俺は気を紛らすために喫煙所に行きタバコを吸う


すると

舞衣の友達も喫煙所にいた


居酒屋だけど喫煙席がないというかなり珍しい居酒屋だ

だから喫煙所の席に座り舞衣の友達もタバコに火をつける

話したことはあるけどそんなに仲良くない

けど俺はあえて気まずい雰囲気にならないように話しかけてみた


「どーもー」


俺はニコッと笑いながら隣に座る


「はーーい」


舞衣の友達は明るめのアッシュのロングヘアーで巻き髪が特徴的だ

隣に座ると香水のいい匂いがする

綺麗系の彼女だけどタバコを吸ってるのは意外だった

なんとも思わないように意識を傾けて話しかける


「あれ?名前なんだっけ?」


「えーー覚えてないの?

詩穂『しほ』だよー」


あーー思い出した

去年の年末に俺が酔っ払いすぎて車で送ってってくれたのが詩穂だった


「去年の年末ありがとね!

まじ助かったよー」


「全然?あの後大丈夫だった?」


「一応ね、次の日二日酔いだったけど」


「だよねーー!

今日は飲みすぎないように気をつけなよ?」


と言って詩穂はタバコの火を消す


飲みかー

飲んで吹っ切れるってのも有りだな


「じゃあ先に戻るねー」


と言って詩穂は先に席に戻る

まだまだ飲みはこれからだ

ちょっとペースを上げて飲むとするか

俺も席に戻り残ってた半分のビールを

一気飲みする


「おぉーー!!ぐいっといくねー!!」


りこがでかい声を出しながら俺の背中を叩く


「よーーし!じゃあ飲んじゃおっかなー!」


俺は色々な酒を飲みまくる

飲み放題なのでお金の心配はしなくて大丈夫だ

ハイボールを7杯飲んだあたりから意識が朦朧としていた

でもなぜかこれが気持ちいい


「りつぅぅぅーー!!はーーいお口開けてーー」


舞衣は俺の口に唐揚げを押し込む


「どんどんたべてー!!」


悠も俺の口に焼き鳥を入れる


「ま、待て!そんなに入れたら

………うっ!!うっ!ぷ!」


は、吐きそう…!


俺はトイレに駆け込んだ


画面が乱れていますしばらくお待ちください

というくらい汚らしいほどにリバースをする

あいつら……やってくれたな

トイレで吐いていると

トントンと誰かが俺の背中を叩く

振り返ると


「大丈夫?笑」


と詩穂が水を持ってきてくれた


「大丈夫、大丈夫」


俺はフラフラになって立ち上がる


「ほら、捕まって」


詩穂は手を差し伸べ俺はその手に捕まって歩く

申し訳ない……

去年と同じまた詩穂に迷惑を掛けてしまった

席に着くと俺は何も考えずに詩穂の肩に寄りかかる


「おいおいおーい!律!

来那ちゃんいるのに女の子に寄りかかって大丈夫なんですかーー!?」


悠がからかうように言うと


「だーいじょーぶ

内緒にしてればいいんだよ

実際来那も内緒の話めっちゃ多いしなー!」


俺は陽気に答えると


「じゃあーおあいこかー!」


りこも話に乗っかる


そうだ、おあいこだ

何を思ったのかわからない

けどなぜか頭の中でバレなきゃ大丈夫だろうと詩穂に寄りかかっていた

ただそれ以上はダメだと酔っていても線は張っていた

俺は少し楽になり自分で歩けるくらいにまでなった

そしてお店を出る


すると


「……待ってぇ」


と1人だけ動かないやつが居た


「りつぅー」


俺を呼んでいるのは詩穂だった


「おいおい大丈夫か?」


店の外をすぐ出たところで膝をついている詩穂の腕を持つ

酔ってる人を介護すると酔いが覚めるというありがちなパターン

他の奴らは気にもしないで先に行く

待つってことを知らねーのかよ


「とりあえず捕まって」


俺の腕を両手で持ってフラフラと歩く詩穂

これは舞衣に送ってもらうしかないな

肝心の舞衣がいないけど

しばらくは俺が介護するしかないなー

と思い詩穂と一緒に歩いてる時だった



「りつ?」


「………!?」


背中の方から聞き覚えのある華奢な声がした

振り向くと


「……来那?」


最悪な状況で来那に会ってしまった

俺に寄りかかる詩穂は来那の知らない女の人

今は夜の11時だ

こんな時間に来那が外にいるのも偶然すぎる

そういえば来那の大学がこの辺だっけ…

やましいことはしてないけど罪悪感が押し寄せてくる


「何してんの?」


来那の言葉の重さがずっしりと胸にのしかかる

でも俺は何もしてないぞ


「ほら、来那にも言ったじゃん?

飲みに行くってさ!

そしたら友達がダウンしちゃって今介護中だよ」


「他の友達は?」


「俺らを置いて先に行っちゃった」


俺がそう言うと

来那は口を歪ませて涙を浮かべた

そして詩穂も状況を把握する


「…ん?彼女ー??」


「あーそう彼女彼女」


よしいいぞ

やましいことがあればこんな簡単に彼女って言えるわけないもんな

来那の表情を見る

来那はまだ涙目だった


そして来那はこう言う


「私だけのりつじゃないとやだよ」


どっちの反応だ?

泣きながら言われてもわからない

詩穂も少し気まずそうにしている


「どういうこと?」


俺は来那に聞く


「いいよ、どうせ忘れるし」


来那はスタスタと俺の先を歩く

……へ?怒ってる?


「また明日ね」


と言って来那は先に行ってしまう

よくわからない

忘れるってなんだよ

内緒にされた話くらいにもやもやしている


とりあえず詩穂を駅まで送り

駅からは舞衣が送ってくれた

俺は来那に言われた言葉をまだ理解出来ずにいる

来那は何を考えてるんだろう?

何に悩んでるんだろう?

それは今の俺にはわからない




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